チーム内コミュニケーション設計に使える視覚化あれこれ

コミュニケーションの設計は、製品を使う人たちに向けてだけでなく、社内の人たち、クライアントに対してもあります。視覚化という『手間』をかけることで、進行が後戻りを防いだり、デザインを進めていくための決め手になることがあります。

通じ合うための設計

デザイナーの仕事はコミュニケーションを設計することだと思います。Web サイトやアプリの画面設計をするのはもちろんですが、その画面が使う人たちにどのような影響を及ぼすのか、彼らがインプットをした場合、どのようなフィードバックを提供するのが適切なのか考える必要があります。ここで言うコミュニケーションの設計とは、製品と人、もしくは人と人との関係をどのように取り持つのかを考えることです。その関係を視覚的に伝えることができるのがデザイナーの強みと言えるでしょう。

ただ、デザイナーが考えなければいけないことは、製品とそれを扱う人たちの関係だけではありません。クライアント、開発者、マーケターといった、制作に携わる人たちの関係を設計することも含まれています。プロジェクトの全体像を見渡せるようにしたり、携わる人たちが共通認識をもてるようにするためのツールが必要になります。チームメンバー同士の関係性を円滑にするためのツール作りもコミュニケーションの設計の一部だと考えています。

抽象的な表現に留めない言語化は必要ですが、「かわいい」「モダン」といった緩い表現を許さない現場も良くありません。ひとつひとつの言葉を一度分解し、また積み上げていくことで、「これ、良いよね」という表現がプロジェクトに携わる人たちが理解できるニュアンスになります。そこまで辿り着くには、ただ単に時間が必要という場合が多いですが、デザイナーのスキルを利用してコミュニケーションを助長することもできます。

目的で変わる成果物の精度

チーム内で共通認識をもつための代表的な手法が以下の 4 つです。

ペルソナ

潜在ニーズや行動からどのような人間像が考えられるかを視覚化します。単にニーズがリスト化されているのではなく、ひとりの人間として表現されていたほうが共感がしやすくなります。

カスタマージャーニーマップ

利用者の行動・感情を時系列に並べて、製品・サービスとの接点で何が起こっているのかを視覚化するためのツール。画面ひとつひとつを見ているだけでは気づきにくい課題が発見しやすくなります。

ストーリーボード

コミック風に利用者の体験を絵で表現することがあります。カスタマージャーニーマップは全体像の把握がしやすいですが、部分的なニーズや共感を得るにはコミックのほうが良い場合があります。4年前に開催した金沢のワークショップでは、ストーリーボードを作って共通認識を得た上で簡単なプロトタイプを作るというワークをしました。

ストーリーボードの例手描きのラフなものでも、課題共有には十分なことも。

ムードボード

感覚的なところを少しでも共有できるのがムードボードの魅力。関係するであろう写真やイラストを並べるだけの行為に見えますが、それがデザインの方向性や言語化に役立つことがあります。感覚的なところまでの落とし込みに便利です。Pinterest はボードに集めて、特定の人たちに共有できるので便利に使っています。

ただ、こうした共有ツールを作るにしても、プロジェクト A と B では精度と表現方法が大きく異なります。プロジェクト A で作ったペルソナは独自テンプレートで作った資料として使えるものですが、プロジェクト B ではポスターとして貼っても良いくらいのグラフィカルな成果物にすることがあります。ワークショップをして付箋紙がたくさん貼ってあるラフなものが成果物になることもあれば、Illustrator を開いて整理することもあります。

以下の 4 つのポイントも見ながら、精度や表現を判断しています。

  • 誰が見るのか、そして誰に見せたいか?
  • 自分と仕事現場の距離感は?
  • 理解を深めるためか、それとも啓蒙か?
  • どのように共有物を更新するのか?

ただ印刷して貼ってあるだけでも、周りからは「おや?」と思われますし、それがカラフルであるだけでも注目してもらえます(印刷屋まで行って大きめに印刷することもあります)。まず興味をもってもらうということが目的であれば、作り方も変わってきます。啓蒙は終わっていて、プロセスを早く進めたいのであれば、すべてが手描きの資料でも十分です。

こうしたデザインプロセスで必要になる成果物だけではなく、『ちょっとした共有物』を作ることでモチベーションが上がったり、理解の共有がしやすくなります。以下のような視覚化ができるのもデザイナーの強みです。

あるプロジェクトで作ったロゴあるプロジェクトで作った社内向けプロジェクトロゴ
  • チームロゴ : プロジェクトにコードネームが入ることがありますが、そのコードネームに合わせて社内向けのロゴを作ることがあります。自分たちのシンボルマークを作ることで連帯感が増すことがありますし、どのプロジェクトを指しているのか視覚的に理解することができます。
  • ビデオ : チームロゴを使ってプロジェクトの概要を紹介するなど、音声とアニメーションで説明することもあります。高度なアプリケーションを使わなくても Keynote だけで簡単な動画を作ることができます。資料と同じことを言っているだけなのにビデオだと響くことも。
  • 夢を語る : 目の前の仕事をこなすだけになると、半年・一年後が見え難くなることがあります。すべてが計画通りにいかないとしても、自分たちは何を目指して製品を作っているのか知りたいことがあります。技術的に実装が難しいかもしれませんが、「こういう世界って面白くない?」ということを伝えるためにプロトタイプを作ることがあります。

まとめ

コミュニケーションの設計は、製品を使う人たちに向けてだけでなく、社内の人たち、クライアントに対してもあります。Web サイトやアプリを作ることのほうが優先順位は高いですが、円滑にプロジェクトを進めていくためにも、チームメンバーに向けた視覚化も怠ってはいけません。視覚化という『手間』をかけることで、進行が後戻りを防いだり、デザインを進めていくための決め手になることがあります。

ただ、作れば良いというものでもありませんし、凝り始めたらいくら時間があっても足りません。視覚化の目的と活用方法を明確にした上で、成果物の『さじ加減』を調整すると良いでしょう。

筆者について

Experience Points

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