次へ繋げるためのコンテンツファーストなプロセス

今回は「UX」という表題があるにも関わらずユーザー(利用者)ニーズから始めませんでしたが、そこから始めなくても課題共有はできますし、改めて利用者のことが考えやすくなることが体感できるワークショップにしました。

7月2日 Web Creators Kochi 主催で「コンテンツ設計から考えるUXデザイン基礎講座」が開催されました。これは、金沢や高松など数カ所で開催したワークショップのアップデート版。以前はカスタマージャーニーマップを活用して必要なコンテンツを見つけ出すというワークがありましたが、今回はコンテンツインベントリを使うなど、現状を監査しながらニーズを見つけ出すという内容に調整しました。

抽象的なデザイン手法の課題

鶏と卵

私は「利用者」と「コンテンツ」は鶏と卵のような関係だと考えています。利用者のことを考えなければ良いコンテンツは作れないですし、良いコンテンツが作れる体制がないまま理想の利用者体験を考えていても仕方ないわけです。

デザインプロセスにおいて、利用者ニーズを調査することは必須。しかし、以下の課題をプロジェクトに関わる人たちと共有できないのであれば、「利用者体験の理想は分かったが、さてどうしよう」ということになります。

  • ニーズに合うコンテンツはどこにあるのか?
  • それが適切な構造になっているか?
  • ニーズの先にあるものは?具体的な行動になるものか?
  • 正確、かつ十分なコンテンツが用意されているか?

人を理解すること。特に最初は「自分は何も分かっていない」という姿勢で取り組む必要があります。しかし、デザイナーの役割は何かを作ることであり、調査が主な仕事ではありません。つまり、具体的なアクションで繋げるための調査でなければ、理想を語るだけの場になる可能性があります。ここが「利用者」と「コンテンツ」が鶏と卵のように思える所以です。

UX デザイン、サービスデザインには数多くの手法(ツール)があります。しかし、それらのツールを活用すればチーム内での共有が劇的に改善するわけでもないですし、具体的に次のアクションを示してくれるとは限りません。時には抽象的過ぎて、直接関わった人しか意味が分からないこともあります。ツールは適材適所で使うことで威力を発揮しますし、それだけに頼らず周りの人に伝わるような工夫が必要になります。

やはり壊れているコンテンツ

コンテンツは壊れている」というフレーズを使ったのが 4 年前。作り手の想いは伝わってくるけど、Web サイトに訪問する人々のメリットにならない情報が充満しています。 CMS の導入によりたくさんのコンテンツを配信しやすくなったものの、重複や未更新のままの画面が放置されています。もう 1 人では見切れないほどの膨大なコンテンツがあるにも関わらず、そこに潜む問題を見ないふりしているところは少なくありません。

しかし、「コンテンツを見直しましょう」と言っても、その深刻さに気付いていない人がいます。常にコンテンツを出し続けている、コンテンツはあって当たり前と考えている人にとっては、改めて見直すと言われてもピンと来ないわけです。コンテンツインベントリのような表が役立つのは、これを印刷して見せるだけで、コンテンツの状態を一目で示すことができるところです。数十枚におよぶ表を見せられたら「これは何かしなければならない」と思うはずです。

今回のワークショップは、人のニーズを共有した上でコンテンツや画面設計を考えていくのではなく、コンテンツの現状を共有したあと、改めて人のニーズや文脈について考えてみようという内容にしました。利用者のことを考えてコンテンツ配信していると思っている場で「調査しましょう」と訴えかけても通じないことがあります。そこで、今のコンテンツがどれだけ人々のニーズとミスマッチなのかを示すことで、「どうにかしないとダメだ」という課題意識が共有できると考えました。

もちろん、どれだけミスマッチしているのかを証明するには少なからずとも調査が必要になります。しかしそれらはキーワード調査や軽度な Web 解析をするだけでも幾つかの仮説を導き出すことができます。中長期かけてじっくり行うものだけが調査ではなく、1, 2 時間でできることも数多くあります。小さな予算で、たとえ一人でやらなくてはならない場合でも、今まで思っていたこととは違う観点を示してくれるデータを見つけることができます。

まとめ

手法がたくさん出回っているので、何か決まったデザインプロセスを実践すれば上手くいくように見えてしまいます。しかし、実際のところ道具を逆さまにして使ったり、何か別のものを組み合わせるような行為が必要になります。プロジェクトの目的だけでなく、仕事環境、体制、成熟度などによって手法の扱い方や進め方が微妙に異なります。今回は「UX」という表題があるにも関わらずユーザー(利用者)から始めなかったのは、そこから始めなくても課題共有はできますし、改めて利用者のことが考えやすくなることを体感して欲しかったからです。

イベントの前日に「UX座談会」という全員参加で話し合う場を設けました。小さな場だと、遠慮なく自分の意見が発言しやすくなるのが魅力です。「実際はどうなの?」「今頃こんなこと言えない」ということも聞くことができます。Web で最新事情を知ることが容易にできるので、情報収集という意味では東京にいようがいまいが変わりないと思います。ただ、正解・間違いという分類が難しいデザインの話をする機会が少ないと思っていて、それは東京でも言えることかもしれません。そうした緩い時間を高知で開催できたのは良かったですし、他の場でも実施できればと思っています。

ワークショップのスライド

筆者について

長谷川恭久

写真:長谷川恭久Webやアプリに関わる様々な話題を取り上げた講演やワークショップをおこなっています。日本各地で講演や社内勉強会を 100 回以上の経験しています。
社内勉強会、イベントでの登壇の依頼は、メールか Twitter メッセージからお願いします。

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