次世代Webはブラウザの外にある

人と Web との関わりはより密接かつ複雑に入り組んだものになります。この課題を解決するのは特定の企業によって作られたプラットフォームではなく、オープンな Web が重要な役割を果たすはずです。

10月18日、法政大学にて次世代 Web カンファレンスが開催されました。Web に関わる技術について徹底的に話し合うイベント。セッションすべてディスカッションで勉強会というより話を聞きに行くというニュアンスが近いかもしれません。8 月に UX をテーマに議論する会を開きましたが、今年はこうした『会話』を軸にしたイベントに興味を惹かれます。

今回は、「デザイニングWebアクセシビリティ」の著者である太田良典さん(@bakera)、RDFの専門家でありコントラバス演奏者である神崎正英さん(@_masaka)と Webアクセシビリティをテーマに 1 時間ほど話をしました。私は Web アクセシビティの専門家ではありませんが、株式会社インフォアクシアの 植木真さんとのポッドキャストがキッカケで呼んでいただきました。3 者異なる視点から、Web アクセシビリティの現在と未来について話し合いました。

セッションの様子は Togetter のほうにまとまっています

見えてないから発生する理解の溝

様々な話題が飛び交った Web アクセシビリティセッションでしたが、まとめると下図のようになると思います。

Webアクセシビリティの概念図と、それを取り巻く課題

Web アクセシビリティにおいてヒューマンリーダブル(人が理解できること)とマシンリーダブル(機械が理解できること)は密接な関係にあります。片方だけでは Web アクセシビリティの実現は難しいと思います。しかし、これが目に見えて分かることではないことから、周りに理解されてないということがあります。理解され難いので、実現のための取り組みが難しく、「とりあえず(目に見える)ページを作ってください」ということになるのかもしれません。

一方、目に見える形で表示されると、理解が広まる場合があります。Schema.org のような構造化したデータの重要性を伝えてもなかなか理解されないことがあるでしょう。しかし、Google の検索結果として表示されると説明すれば、理解されることがあります。目に見えるほど具体的でなければ分からない、直接的な利益がなければ動いてもらえないというのは、昔からある Web アクセシビリティの課題です。

個人的にこれは落胆することではなく、伝え方の工夫ではないかと考えています。正攻法であれば、上図のようなヒューマンリーダブルとマシンリーダブルの概念の理解や、Web アクセシビリティの考え方を知った上で、具体的な実装を考えるべきでしょう。しかし、見なければ伝わらないのであれば、見て分かるものをプロトタイプにしてみてたり、実装前後で利用者の動きが変わったことが分かるデータを見せるというやり方があると思います。結果的に Web アクセシビリティの理解が深まれば、どういった道筋で学ぶかはさほど重要ではないという考え方もあると思います。

マルチデバイス化が進むにつれて、情報へのアクセスできるかどうかという問題は深刻になります。Web アクセシビリティをより多くの方に理解してもらうための施策は、昨年から本当に増えましたが、目に見えて分かるようなものも必要だと改めて感じました。

Webブラウザだけだと狭まる未来

「Webの未来」のことを考えた時、Web ブラウザで見える Web だけを Web と捉えると話が狭くなります。スマートフォンを主軸にした Web 戦略を立てたとしても、スマートフォンで Web ブラウザを利用している時間はほんのわずかです。情報へアクセスする手段が Web ブラウザからアプリへ移行している現在、Web ブラウザから見えている世界で未来を語ろうとすると、少しだけ暗い話になると思います。

日本国内 スマートフォン1日あたり利用時間。Webブラウザはおよそ28%ニールセン株式会社の発表資料より

もちろん 1 年先の未来という話であれば、仕様が固まりつつある技術について語るのも良いでしょうし、実装の話もできるかもしれません。しかし、5 年先となるとどうでしょう? そのとき、Web ブラウザがなくなっているとは考え難いですが、人々が Web サーバにある情報を取得するための手段は Web ブラウザだけではないはず。

Web アクセシビリティをはじめ幾つかのセッションで感じたのが、描いている「Webの未来」のなかで、Web ブラウザがどのような位置付けにあるかで、話す内容が変わるという点。Web サイトをアクセシブルにすること。異なるプラットフォームを行き来する情報の仕組みを作り出すこと。それぞれ未来の話ですが、Web ブラウザの立ち位置は微妙に異なります。

オープン性が未来へと繋がる

HTML, JavaScript, CSS のような Web 技術は、Web ブラウザで描画・動作させるためにあります。そのなか、JavaScript は IoTデスクトップアプリ と、次第に Web ブラウザの外へ広がり始めています。その反面、CSS は未だに Web ブラウザ上のスタイリングに止まっているように見えますし、HTMLも構造化された文書という枠組みから抜け出せていないように見えます。

インプット、アウトプット、それを表示させるインターフェイス

Web サーバ がどのようにユーザーからのインプットを取得し、それをアウトプットするか。今までは Web ブラウザに描画させたり、音声などでそこにある情報を読み上げることが主な手段でしたが、今は無数の組み合わせがあります。センサーを通して無意識にインプットしている場合もあるでしょうし、振動といった触感でアウトプットを受け取ることもあります。

人と Web との関わりはより密接かつ複雑に入り組んだものになります。そのとき、デバイスやサービスを選ばず必要な情報へアクセスできるかどうかは大きな課題になります。それを解決するのは特定の企業によって作られたプラットフォームではなく、オープンな Web が重要な役割を果たすはずです。

筆者について

Experience Points

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