コンテンツを見直すための魔法のシートが必要な理由

コンテンツの評価はデザインから遠い存在というより、密接な関係をもっています。コンテンツの現状を知ることができれば、何を改善したのか具体的な説明ができるようになります。

魔法のシート

マーケティングとデザインの共通点

2015年6月27日大阪 Re:Creator’s Kansai 主催のイベント「基礎からきちんとマーケティング」に登壇しました。デザイナーとして働いているのでマーケティングは畑違いのように見えますが、以前からマーケティングを扱った記事をたくさん書いています。カスタマージャーニーマップのようなマーケティングの手法がデザインプロセスの一部として採用されていたり、デザイン思考がマーケティングに取り込まれているなど、共通するところが幾つかあります。

例えば UX を学んでいるうちに行動経済学に興味を持つ方もいるでしょう。行動経済学はデザインにも取り込める興味深い学問ですが、マーケッティングを深く知る上でも役立ちます。デザインとマーケティング両方に興味をもつことは、デザイナーとしてごく自然のことではないでしょうか。人のこと、市場のこと、社会のことを知らないとデザインできないことろが増えてきています。

デザイナー向けのセミナーでマーケティング寄りの話をすることは以前からありましたが、関係性をうまく伝えきれていませんでした。今回のイベントは、Webプロデュース / マーケッターとして活躍しているインターネットストラテジー角掛健志さんと一緒にできたので、マーケティングとデザインの関係性がより明確になったと思います。

作る前に知るべきこと

今回「課題を導き出す魔法のシートの作り方」と題して講演しました。魔法のシートという目新しいキーワードを入れてありますが、このサイトで以前から紹介している「Content Inventory (コンテンツ・インベントリー)」のことです。スプレッドシートにひたすらデータを入力する作業なので敬遠されていた方もいると思いますし、デザインと関係ないと感じていた方も少なくないと思います。

魔法のシートは、自社のマーケティング戦略を見直すときにも役立つツールですし、デザインのインスピレーションにもなります。誰がどのようにアクセスしているのか視覚化されているだけでも、何を改善しなければならないのか理解できるからです。

表をわざわざ作る最大のメリットは、今まで「なんとなく」察していた課題を目に見える形にして共有することができる点。今は CMS によって簡単にコンテンツが追加できるようになりましたが、それによって抱えきれないほどの膨大なコンテンツをひとりの Web 担当者によって管理されているといった状況を生み出しています。また、書き手が多いことから用語だけでなく口調や雰囲気まで一貫性が保てていないこともあります。こうしたコンテンツに関わる様々な課題をひとつのシートを作ることで浮き彫りになります。

コンテンツ市場は肥大化を続けているだけでなく、配信経路も複雑化しています。もう、良いコンテンツを作ればお客様のもとへ届くという時代ではありません。これはデザインにしても同様のことが言えて、デザイナーが認める素晴らしい見た目とインタクションを実装すれば良いわけではなくなりました。今まで以上に賢く作って配信することが求められているだけでなく、持続可能な仕組み作りも必要とされています。

クライアントも制作者も「今すぐ作って公開したい」という思いが強くなりがち。しかし、戦略なしで作ったり、現状のままパッケージ(見た目)だけ変えても効果は見込めません。『魔法のシート』は、一度立ち止まって今ある課題を改めて見直す際に有効なツールになります。

デザイナーとしての課題

コンテンツの調査をしていく上で、デザイナーとしての専門性を発揮できるのは質を評価する「定性調査」です。何もかも数字で判断しようという動きが強くなってきている今だからこそ、数字だけでは判断できない質に注目することは重要になります。今回紹介した魔法のシートにしても、量と質両方を調査して初めて成り立つものだと考えています。

質といっても感覚的なものばかりではありません。質を調査する上で以下のことをチームで共有する必要があります。

  • 発信者側の価値や振る舞い
  • 利用者・消費者の実態や意図
  • 接点になる場所とタイミング

various_issues_sheetシートを作ることによって見えてくる様々な課題

「自分たちは何なのか?」「お客様は誰なのか?」「お客様はどこにて何を求めているのか?」といった質問に答えることができなければ、質を評価するのは難しいということです。デザインプロセスで用いられている「ペルソナ」や「カスタマージャーニーマップ」のような手法は、こうしたコンテンツの質の評価にも役立ちます。魔法のシートと呼んだのも、芋づる式に課題を洗い出し、次に何をするべきなのかを示してくれるからです。

コンテンツの評価はデザインから遠い存在というより、密接な関係をもっています。コンテンツの現状を知ることができれば、何を改善したのか具体的な説明ができるようになります。デザインの意図を伝えるための強力なツールになるので、ぜひ実践してみてください。

筆者について

長谷川恭久

写真:長谷川恭久Webやアプリに関わる様々な話題を取り上げた講演やワークショップをおこなっています。日本各地で講演や社内勉強会を 100 回以上の経験しています。
社内勉強会、イベントでの登壇の依頼は、メールか Twitter メッセージからお願いします。

閉じる 共有する

記事はお楽しみいただけましたか?役に立つ情報でしたか?ぜひ他の場所で共有してみてください。