XD vs Sketch みたいな比較は意味がない理由

同社製品の連携が強いエコシステムを選ぶか。様々なサービスやツールと組み合わせができるプラットフォームを選ぶか。仕事環境で活かせるもの、コンセプトが合うものを選ぶべきなので、機能比較をして良し悪しを判断するものではないと思います。

エコシステムかプラットフォームか

たまに「Adobe XDSketch はどちらが良いですか?」という質問をいただくことがあります。Sketch 関連のコンテンツ を発信しているので、『Sketch 派』と思っている方もいるかもしれませんが、個人的に勝ち負けをつけるような比較はできないと考えています。いずれも UI デザインが得意なアプリケーションと分類できますが、コンセプトも違えば向かっている方向も違います。機能が多い方を選んだら良いというほど単純な話ではないわけです。

私のなかで、Adobe XD はエコシステムで、Sketch はプラットフォームと捉えています。

Adobe は製品同士の連携が最大の強みなので、XD もその特徴を最大限に活かしたアプリケーションへ成長するはずです。つまり Adobe のエコシステムにどっぷり浸かれば、それだけ恩恵を受けることができます。一方 Sketch は小さな開発会社が作るアプリケーションですが、 膨大な数のプラグインと組み合わせできるサービスがあります。Sketch の上に、自分に合うデザインワークフローを自由に作ることができます。

いずれもメリット・デメリットがあります。
Adobe エコシステムの中で仕事が完結するのであれば、これ以上とないワークフローを作ることができます。しかし、そこには「Adobe エコシステムにコミットする」という前提があると思っています。 Creative Cloud のおかげでアプリ間の連携は強まったものの、それがかえって壁に囲まれた庭状態を作り出しています。

Sketch にしても、自由度が高いのは魅力でもあり難しさでもあります。プラグインに頼り過ぎたら、それらの維持・管理が大変になりますし、どういった組み合わせが最適なワークフローなのか模索するのに時間がかかります。Sketch 単体では物足りない部分も多く、プラグインや連携サービスの力を借りることが前提になっているのも敷居が高い部分です。

現場に合うコンセプトは

仕事現場が Adobe 製品によって整備されていて、そこにコミュニケーションの支障がないのであれば、XD 一択です。Creative Cloud に既に入っているので気軽に試せますし、今後他の Adobe 製品とのさらなる連携が期待されるので、現存のワークフローにもはまりやすいと思います。既にエコシステムの中で働いていて満足しているのであれば、わざわざ外へ抜け出すこともないわけです。

ただ、 Adobe 製品だけで完結できない仕事現場もあります。開発者は Adobe 製品ではなく、自分が好む環境とツールを揃えて仕事しています。制作物への参加・連携が難しいと、デザインからコードへの転換もそれだけ困難になります。また、デザインを『納品』すれば終わりというケースも少なく、デザインからコード、そこからまたデザインへ戻るというサイクルを繰り返すこともあります。壁に囲まれた庭から抜け出さないと協働が難しいという判断であれば Sketch がその課題を補ってくれるでしょう。

エコシステムとプラットフォームというコンセプトは、今後ますます強化されると予測されます。

Adobe は先日 Experience Cloud を発表しました。マーケティング、広告配信・管理、分析を行うためのビジネス向けのソリューションですが、これと Creative Cloud との連携によって、デザインの制作から配信をすべて Adobe エコシステムの中でシームレスに行えるようになります。広告のデザインパターンを効果測定し、利用者の文脈に合わせて最適なパターンを配信するといったことが可能になるはずです。そこに XD のようなツールが入ることでアプリデザイン、ユーザーテスト、解析・改善がワンストップでできることも考えられます。

一方、Sketch のほうはバージョン 43 から ファイル形式が JSON に変わります。これは、Sketch で作られたデザインが誰でも読めるようになることを意味します。 サンプルの JSON ファイルを見ると分かりますが、ページ、アートボード、レイヤーの構造が見れるだけでなく、どのようなエフェクトを加えたのかも分かります。事実上オープンフォーマットになったことで、Sketch ファイルの書き出し・読み込みツールも出てくるでしょうし、すべてがコードで表現されていることから、Git をはじめとしたバージョン管理で Sketch のデザイン進行が追えるようになる日も遠い話ではないはずです。

まとめ

Adobe エコシステムの中にある XD。それ故、外との連携が難しいという課題があります。個人的には Adobe XD は Creative Cloud に入らなくても単体で購入できるようになって欲しいです。そうすることで、エコシステムに入っていない人を繋ぐ役割を果たしてくれるのではないかと期待しています。

連携できるサービス、プラグインが毎週のように出てきている Sketch は自由過ぎて可能性を引き出すのに時間と労力がかかります。それを軽減するための情報交換をする場や、組み合わせの例がたくさん出てきてほしいです。そして開発側との連携を今後さらに強化してほしいですし、デザインしながらコードも生成されていくような環境になる可能性もあります。

エコシステムを選ぶか、プラットフォームを選ぶかは仕事環境によって変わると思います。いずれかを選択するにしても、Web もしくはアプリのデザインに最適化された機能が求められています。今のデザインツールはまだ紙のような固定サイズに引きずられているところがあります。XD、Sketch をはじめ、次のデザインツールには『デジタルネイティブ』を感じさせる機能やワークフローが求められています。

筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。

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