Transformative Web Design という言葉に隠された意味

6月9日に開催されたSwap Skills doubbble05で、基調講演を行いました。昨年に引き続き二度目の基調講演。昨年は、迫り来るモバイル機器中心の世界に備えてコンテンツファーストを実践しようというのがテーマでした。今年は「Transformative Web Design ~変化にしなやかに対応するデザイン力~」と題して、コンテンツを Webという特有の場でより活かし、デザインしていくのはどうしたら良いのかというテーマで話をしました。

既に日本のスマートフォンユーザーは 30%を超え、タブレットをはじめとしたパソコン以外で Webへ接続できるデバイスが増え続ける今日。「Webはもうパソコンだけのものではない。むしろ、マイノリティである」という考えも、昨年では予測でしかなかったかもしれませんが、既に現実になっています。デバイスという垣根を超えて、利用者が欲しいタイミングで欲しいコンテンツを得れるような環境が整いつつあるわけですが、Webデザインの考え方や設計の手法が、それに着いて行っていないのが現状です。

ギャップを埋めるのがデザイナーの仕事

長年、私のサイトをご覧になっている方はご存知だと思いますが、このサイトは Webデザインに関する記事だけではなく、マーケティングやビジネスなど Webに関わることであれば幅広く取り扱っています。その理由のひとつとして、他の視点を理解するためというのがあります。デザイナーが技術を知ること、マーケティングを知ること、社会を知ることによって表現の幅や、伝えるための手法を増やせると考えているからです。また、人がどういうニュアンスで言葉を用いているのかということも理解しやすくなるので、コミュニケーションをとるときにも大変役立ちます。

長年、コンテンツをテーマに様々な視点で記事を執筆しているのも、コンテンツが Webに関わる様々な分野の方々を繋げるキーワードだからと考えているからです。SEOの仕事をしている人でも、UXを重要視している人でも、コンテンツを軸に話を展開することで、結果的に同じゴールに向かえるのではないかと考えていますし、より Webの特性を活かした設計と配信を意識できると考えています。

今後、Webは無形というか、水のような存在になるはずです。
様々な形に変幻自在に変わりながら、適確に利用者に情報を届けるための Web。テキストや画像といった目に見える形で読んだり操作するものから、音声のように形がないものとして Webに触れることになります。何処にどのような形で Webが届けられるかまったく分からない中、我々は何を『デザイン』しなければいけないのでしょうか。そのヒントがコンテンツに振り返ることで見えてきます。

  • 何をどのように届けなければならないのか
  • Webページから離れてどう繋がるのか
  • どのように共有されて、どう見られるのか
  • コンテンツとコンテンツの繋がりはどうあるべきなのか
  • 見られるべき順序と連なりはどうか

これらはビジュアルだけでなく、様々な分野に関わる重要な質問です。分野や職種の枠を超えて、話し合える、デザイン出来るのがコンテンツというキーワードの強みだと思います。

この仕事に携わっているのであれば誰でも「より良い Webの価値を提供する」ということは考えています。しかし、人によって「良い Web」は違いますし、同じ方向を向いているようでも使う言葉が違うことですれ違っていることもあります。コミュニケーションの溝を埋めるひとつの材料としてコンテンツは有効ですし、繋げることが出来る人としてデザイナーの役割は重要だと考えています。

Transformative Web Design とは?

今回「Transformative Web Design」という造語を、ひとつのテーマにして講義をしました。講義でも言いましたが、私はこの造語(新語)を定義付けすることに興味はありません。むしろ、自分なりの定義・ニュアンスを築いてほしいというのが今回の目的です。

IT/Web業界には様々な用語があります。それぞれアカデミック的な『正しい定義』はありますし、それを厳格に覚えている方もいらっしゃいます。しかし、実世界の対話は学者達の対話とは異なります。それぞれ異なる背景をもった方が、独自のニュアンスや見解をもって言葉を用いています。正しい定義とは違うから、「違う。分からない。話せない。」となるのではなく、言葉の裏に隠れている微妙なニュアンスを捉えることで繋がり合えることがあると思います。

私自身から Transformative Web Design の明確な定義はしませんでしたが、講義中に取り上げられた様々事例や情報にニュアンスを掴むヒントが隠されていたと思います。

  • 何が「Transformative (変化力がある)」のか
  • Webの何をデザインしなければならないのか
  • Webはどう変化し続けているのか

こうした疑問について考えて、解決案を導き出すことが、自分なりの Transformative Web Design を見つけることができるキッカケになるはずです。そして、その解決案やアイデアをぜひ聞きたいと思っています。

今回のスライドは規約上、すぐに公開出来ませんが、8月までには公開できると思います。お楽しみに。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。