デザインの価値を伝えるための発想転換

「自分たちが重要」「理解されなくて困る」という自分中心の見方から、相手の課題解決へシフトすることで可能性が広がることがあります。

どれも重要という現場で

「ビジネスにデザインが不可欠」「差別化になるのがデザイン」といった表現をつかってデザインの重要性を示す場合があります。デザイナーからすれば嬉しい言葉でもあり、責任の重大さを感じます。しかし、ビジネスにおいて不可欠なものはデザイン以外にもたくさんあります。開発はもちろん、マーケティングや営業も不可欠な存在。そもそも、あってもなくても良い部分を探すほうが難しいわけです。

ここ数年でデザイナーが創設した企業が幾つか買収されていますし、資金調達に成功したスタートアップのなかにデザイナーが共同創設者のところも少なくありません。また、Airbnb のようにデザイナーが組織の責任者になって、デザインの文化を広げているところもあります。こうした状況をみると「ビジネスにデザインが不可欠」と考えるのも当然かもしれません。

ただ、だからといってデザイナーが「不可欠」という表現に酔いしれても望んでいるデザインを実践することはできません。そもそも周りからはデザインは装飾をする仕事と思われている場合もありますし、先述したように他の役職の方々も不可欠な存在です。「デザイナーの価値がうまく伝わらない」と嘆いているすぐ側で「マーケティングが理解されない」と考えている人たちもいるわけです。

こうした重要視されていないという思い込みが縦割りの組織構造によって、さらにチームワークを悪化させてしまう場合があります。お互いのやっていることが見えないことが不信感に繋がったり、うまくいかなかった時の責任転換へと繋がります。最悪の状況を避けるためにも「自分たちが重要」「理解されなくて困る」という自分中心視点を避け、協働の可能性を模索する必要があります。

ギャップを埋めることから始める

インハウスでデザイナーをしているのであれば、他の部署の方と話をすることができます。また、クライアントワークでも担当者から以下のような質問をして、相手の考える重要なこと、不可欠だと感じることを聞き出すことができます。

  • 日々何をしているか?
  • 課せられた責任は?何をゴールとしているか?
  • 仕事において重要と考えている価値は?
  • 仕事で苦労していることは?
  • 仕事のどの部分を楽しいと感じているか?
  • 仕事の効率化や質の向上をどう実現したいか?

相手のことを知ることで、デザイナー視点でデザインの価値を伝えるというやり方から、相手の興味に基づいたデザインの提案がしやすくなります。

例えば、FAQ に書かれているにも関わらず同じような質問が何度も来て困っているカスタマーサービスのメンバーに対して、FAQ の見た目を整えるだけでは意味がありません。代わりに質問に基づいたブログ記事をインフォグラフィックを添えて提案したり、問題になっている画面のヘルプテキストを工夫して見せてみるのはどうでしょう。見た目を整えただけでは、彼らが抱えている「質問の問い合わせが減らない」という問題は解決できないかもしれません。相手の価値を高めたり、課題を解決することが、結果的デザインの価値を伝えることになります。

組織間のコミュニケーションを円滑化するために様々な視覚化をすることがありますが、これも相手が抱える課題を解決したり、協働しやすくするための工夫です。相手が漠然とイメージしていることを基にプロトタイプを作るだけでも会話が弾みますし、デザインの見方が少しだけ変わります。そうしたことの積み上げが、デザインを不可欠な存在にしていくのだと思います。

まとめ

チームで働くことの魅力は、まったく違う価値観を持っている方々と肩を並べて仕事ができること。それを面倒・煩わしいと考えるのもひとつですが、自分中心の見方から、相手の課題解決へシフトすることで可能性が広がることがあります。

ユーザーのことを考えて良いプロダクトを作ることを考えるのはデザイナーの特権ではありません。関わるすべての人が考えていることですが、捉え方や目的への辿り着き方がそれぞれ異なります。私たち専門家からみたデザインのあるべき姿を唱える前に、周りが抱えている問題解決という『結果』を通して伝えてみると意外とうまくいくことがあります。

筆者について

Experience Points

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