デザイナーも知っておきたい数字との付き合い方

デザイナーであったとしても、数字と向き合う必要があります。デザインやユーザー体験をすべて数字にして評価することはできませんが、ビジネスサイドと価値共有するために必要にして十分な数値化が求められています。

数字と向き合う

ビジネスに貢献するデザイナーとして、ある程度のデータ分析能力は必要です。「デザインが重要」と言われるようになったのは良いことですが、それを証明しなければ装飾するだけの仕事に逆戻りしてしまいます。「データ分析」と書いてしまうと、深い数学の知識が必要そうに聞こえますが、そんなことはありません。

まず、数値が存在しないところにデザインを評価するところが幾つかあります。Web サイトやアプリを使う体験は主観的かつ感情的なものですから、ユーザーからの生の声が聞ける窓口を築いたり、ユーザーインタビューやヒューリスティック評価をするといった定性分析が必要になります。

ただ、こうした定性分析にしても「これはどうですか?」といった質問から始めても、次に繋がる改善点が見つからないどころか、開発に混乱を招くことがあります。そこで、定量調査が大きな役割を果たします。ユーザーの動機や感情を数字から読み取ることはできませんが、ユーザーの「なぜ」を導き出すヒントを与えてくれます。

Google Analytics にある行動フロー

例えば Google Analytics には、行動フローというユーザーが画面をどのように遷移したのか視覚的に見る機能がありますが、ユーザーが辿る道筋の傾向を知るには最適です。制作サイドで想定していなかった遷移が見つかるかもしれないですし、どこで離脱しているのかも判別しやすくなります。行動フローのデータを基に「なぜ、ユーザーはこの操作をしたのか」を調査するためにインタビューやユーザーテストを行えば、定性分析の目的がより明確になります。

強そうな指標からの脱却

データ分析全般に言えることですが、目標・計画がないまま数値を集めているだけだと、誰でも分かる『強そうな指標』が牛耳ることになります。書籍「Lean Analytics」で、ページビューは Vanity Metrics (無価値な指標)と紹介していますが、強そうな指標の典型例です。数字が上がると、なんとなく嬉しくなりますが、改善のために動ける指標とは言い難いです。

とりあえずデータを集めるだけだと、見る習慣もつきませんし、いつの間にか強そうな指標だけ見て一喜一憂する状態になります。そこで、デザイン側で注視しておきたい指標を探すことになるわけですが、分析のための計画を立てるにも何かしら基準が必要です。Web サイト、アプリの開発に関わる人たちの中で以下の項目が共有されていることで、何を見ていくべきか決めやすくなります。

  • プロダクトに対するユーザーの期待
  • プロダクトに接するときのコンテキスト
  • 目的達成のための道筋
  • 目的を達成したあとのユーザーの姿

あるユーザー体験の比較と視覚化視覚化は、チーム内での価値観を共有するためのツールとして役立ちます。

想定であったとしても自分たちのなかで基準値をもっておくことで、数字の変動に対して敏感になれます。見るべき数字、改善に繋がる数字を常に見ることで直感を養うことができるのもメリットです。分析には客観性と論理的に数値を見る能力が求められがちです。しかし、生身の人間が使うプロダクト作りには、人間性も必要だと考えています。

直感を磨くためには数字を見る習慣は必要ですし、Data Studio のようなツールを利用して数字の『見える化』をするといった取り組みもしていきます。数字の見える化の良い点は、ミスの発見や、施策の方向転換を早い段階でできるようになる点。変化に気付くようになるためにも数字はいつでも見れるようにしておいたほうが良いです。

答えがすべて数字にあるという雰囲気を作らないよう、定量分析の範囲を決めて、デザイン側で責任がもてる指標を共有することも重要です。KPI(Key Performance Indicator)は、ビジネスに直結していることから、デザインの品質、ユーザー体験の向上とは少し遠い存在になる場合があります。デイリーアクティブユーザーを増やすという KPI があったとしても、その数値が上昇したからユーザー体験も向上しているとは言い切れません。

Web サイトやアプリのパフォーマンス向上はデザイン側で責任をもっておきたい部分です。0.1 秒の違いが売上に大きな影響を及ぼすといった事例をたくさん見つけることはできますが、KPI 達成に直結していないように見える場合があります。画面改修や UI の A/B テストのような施策に比べて優先順位が低くなることがあり、パフォーマンスが後回しになることがあります。

KPI の中にプロダクトの品質向上に繋がる指標も加えて、ビジネスサイドと同じくらい重要であることを理解してもらう必要があります(もちろん、品質とは何か?といった定義も含めてですが)。

まとめ

デザイナーであったとしても、数字と向き合う必要があります。しかし、ただデータをたくさん集めるだけでは、改善のヒントも見つからないどころか、デザインがどうユーザーのゴールとビジネスに貢献しているのか分かりません。また、ビジネス寄りの KPI だけだと、デザイナーが考える品質向上を実践するのが難しくなります。

デザインやユーザー体験をすべて数字にして評価することはできませんが、ビジネスサイドと価値共有するために必要にして十分な数値化が求められています。そのためにもユーザーはどのような人で、どのように web サイトやアプリを利用しているべきなのかというビジョンを明確にし、そこに辿り着くために何が必要なのかを少しずつ数字にして分解していくと良いでしょう。

筆者について

Experience Points

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