リニューアルやCMS導入前に解決したいコンテンツの課題

コンテンツに関わる課題はとても時間がかかりますし、組織体制や運用にも関わるので複雑です。しかし、今のままでは、たとえ見た目を変えたり、CMS の機能を充実しても解決には繋がりません。

2016年6月25日、仙台市で MTDDC Meetup TOHOKU 2016 が開催されました。本イベントは、Web 解析、パフォーマンス、セキュリティなど「Movable Type」という言葉を一度も聞かないセッションが半分以上占めていました。イベント運用チームに伺ってみたところ、Movable Type を開発している Six Apart も製品に止めず幅広いトピックを扱ってほしいと助言しているそうで、それが講演者のラインナップにも影響しているのかなと思いました。

ツールやプログラミング言語のイベントだと、同じ言葉、同じ趣向をもった人達が集まる傾向があります。コミュニティを育てるという意味で深く学ぶキッカケを作るのは大切なことですが、内向化してしまう恐れもあります。どちらが良いとは言えないですが、新しい人にも興味を持ってもらうためにトピックの幅を特定のツールや言語を超えるのは有効な手段でしょう。

私は「2020年以降を見据えたコンテンツ設計」という題名で、コンテンツデザインを扱った話をしました。MTDDC Meetup TOHOKU 2016 のテーマが「自治体 Web サイト」だったので、地元の自治体 Web サイトを取り上げながら、訪問者にとって意味のあるコンテンツを作ることの意味と具体的な取り組みを提案しました。

ウィンチェスター・ミステリー・ハウスの写真

継ぎ接ぎだらけのコンテンツ制作

カリフォルニア州サンノゼにウィンチェスター・ミステリー・ハウスという屋敷があります。幽霊屋敷として有名ですが、設計の基本計画がなく38年間建設工事が続けられたことでも知られています。窓が 10,000、ドアも 2,000 ある巨大な屋敷ですが、中にはどこにも通じていない行き止まりもあり、配色や素材もまばら。本来、家として機能を果たさなければならないものが、まったく使い物にならないところが随所あります。

ウィンチェスター・ミステリー・ハウスと私たちが作る Web サイトには共通点があります。CMS の導入によって簡単に情報を追加できるようになったことで、重複、記入漏れ、表記ブレなど、コンテンツそのものの質を落とすことがあります。いつの間にか、ひとりやふたりの担当者では抱えきれないほどのコンテンツを運用している … まるでウィンチェスター・ミステリー・ハウスのような状態になっているところもあります。

こうした状態のまま、模様替えをしたり、検索などの機能を実装しても改善とは言い切れないわけです。重複や紛らわしい言葉が点在する状態のままでは、検索エンジンの力を借りても、正しい情報がトップに表示されるとは限りません。古い情報を放置しておくことで、最悪の場合、人の命に関わる問題も発生するかもしれません。

重複、記入漏れ、表記ブレといった問題は、多くの方がなんとなく気付いていることですが、どれくらい深刻なのか分らない場合があります。そんなときは、まずコンテンツ・インベントリーを作成し、巨大な表を使って深刻さを視覚化するのがオススメです。私もセッションのために 13,000 ページの自治体サイトのコンテンツを表にしましたが、重複や記入漏れを簡単に発見することができました。

伝える・示す情報、人にとって意味のあるコンテンツ

人を理解するためのデータ

自分たちが出したいものがコンテンツのすべてではありません。訪問者が抱えている課題を解決したり、欲求を満たすものも必要です。しかし、自己主張ファーストなコンテンツになっていたり、課題解決のための『情報の欠片』が Web サイトに点在していることがあります。

本セッションでは自治体サイトを例にして、ひとつの目的を達成するために複数の画面を行き来したり、整合性を確かめたり、最新情報か自分で確かめなければいけない状況を紹介しました。公共施設へ訪問するとある『たらい廻し』の体験を Web の世界でもしているようなものです。

しかし、これと似たような状況は自治体サイト以外でもあります。スマートフォンの普及により、いち早く、コンパクトに情報を伝えなければならないにも関わらず、「どこかに情報はあるので自分で探してください」と言っているかのような Web サイトは少なくありません。

では、具体的にどのようなコンテンツが望ましいのかを考える上で、データの踊らされないデザイン調査が役に立ちます。Google Analytics をはじめとしたツールを活用した Web 解析。Keyword Tool や、Keyword Planner を活用して、人がどのような言葉を使っているのかを知ることも重要です。もちろん、インタビューも有効な手段です。

データは非常に漠然としたもので、そこから具体的に何をしなければいけないのか分かる人は多くありません。そこで、人々が思い浮かべるであろう具体的なニーズを文章(もしくは絵)に置き換えることで、どのようなコンテンツが必要とされているのか想像しやすくなります。

まとめ

今回、講演のタイトルに 2020 年と入れたのは、コンテンツを抜本的に見直して整理をするには、少なくとも 3, 4 年はかかる作業だと考えたからです。本セッションでは自治体サイトを例にしたものの、どの Web サイトにも言えること。コンテンツに関わる課題はとても時間がかかりますし、組織体制や運用にも関わるので複雑です。しかし、今のままでは、たとえ見た目を変えたり、CMS の機能を充実しても解決には繋がりません。

未来の Web はより複雑化していきます。コンテンツへアクセスするデバイスはこれからさらに増えますし、情報を見つける手段も多様化していきます。検索やソーシャルメディアだけでなく、オフラインも巻き込んで手段がもっと増えるはずです。そうした未来が来る前に「情報はすべて揃っているから大丈夫」と考えず、人のニーズに合わせたコンテンツ制作が急務になります。抜本的な見直しという放置していた問題に取り組む時期です。

見た目のデザインは重要ですが、それ以上にコンテンツの再設計はとてつもなく大きな課題ですし、これから先へ進むには解決していかなければいけません。

筆者について

長谷川恭久

写真:長谷川恭久Webやアプリに関わる様々な話題を取り上げた講演やワークショップをおこなっています。日本各地で講演や社内勉強会を 100 回以上の経験しています。
社内勉強会、イベントでの登壇の依頼は、メールか Twitter メッセージからお願いします。

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