キーワード 2012: Everyscreen(スクリーンワールド)

モバイル、タブレットという領域を超えて「スクリーン」という広い視野をもってデザインしていかなければならなくなります。一見、難しいだらけのように聞こえますが、より一層、人のためのデザインが出来るという意味では非常にエキサイティングな時代がきたと思っています。

スクリーンに囲まれた世界

「デジタルとリアルの境目がなくなってきた」
「リアルな交流が Web でも出来るようになった」

そんな言葉を耳にするようになった理由のひとつは、Web へアクセスする手段がパソコン以外からでも手軽に出来るようになったから。いつでも何処でもアクセス出来るわけですから、Webを身近に感じるのは当然のことなのかもしれません。スマートフォンだけでなく、iPadKindle Fireをはじめとしたタブレット機器も利用され始めたことで、パソコンから Web を見るという行為は過去のものになりつつあります。

Ciscoの調査結果によると、2015年までにモバイル機器のインターネットのデータ送受信量は今の26倍になると言われています。人とのコミュニケーションを主軸にしている Twitter や Facebook でもモバイルからの利用が大きく占めていますし、その数は今後ますます増えるでしょう。

これだけモバイル機器に触れているわけですから、私たちは常にスクリーンと共に生活しているといっても過言ではないでしょう。外の景色より、携帯デバイスに映し出されている光景のほうが『近い』と感じる方もいるでしょうし、そちらのほうがよく見られているかもしれません。

SDKやエミュレーターが配布されています。CES 2012 で大々的に発表された模様

2011年も既にマルチスクリーンの世界にいるという感覚がありましたが、2012年のスクリーンの数は爆発的に増える可能性があります。タブレットやスマートフォンの数が増えるというのは当然ですが、それだけではありません。

テレビは人とWebの情報が繋がる窓口として AppleGoogleも注目しています。 テレビからパソコン向けの Web サイトをそのまま見ることはありませんが、テレビに最適化されたアプリであればどうでしょうか。Opera TV Store のようなマーケットプレイスから、好きなアプリをダウンロードしてテレビを見ながら友達と対話をする日もそう遠くはない未来です。

スクリーンは家の中だけではなく、店頭にもスクリーンがたくさん現れるでしょう。JCPennyは、店頭に Webからの情報が見れるキオスクを設置。店頭では在庫切れになっている商品をその場で取り寄せたり、別の店舗にあるかどうかチェックすることが出来ます。シンガポールの通信会社 SigTel が今年開設したリテールストアは、店頭の外に向けて幾つかのタッチスクリーンが設置されており、店が開いていないとき、待ち合わせをしているときも情報にアクセスしたり商品を購入出来るようにしています。

Webから情報を取得していますが、店頭に訪れた人が操作しやすいように工夫されたインターフェイス

様々なスクリーンがあるだけでなく、2つのスクリーンを同時に使うケースも出てきました。韓国のスーパー Home Plus は 地下鉄のホームに製品の写真を並べて、携帯で写真を撮れば購入できるというシステムを導入しています。Shazamは、TVやパソコンのモニターなどで流れる曲を使ってプロモーションに繋げる窓口を築いています ()。

今まで Web の情報は Web で、オフラインの情報はオフラインで、という切り分けがはっきりしていましたが、スクリーンが何処にでもある世界では、境目を取り去ることで体験を向上しているケースが多く見られます。

Webデザインからみた課題

パーソナルデバイスだけでなく、様々な場にスクリーンがある世界。そこから Web の情報(コンテンツ)にアクセス出来るようになりつつあります。パソコン向けの Web サイトだけを作っていたときに画面解像度や Web ブラウザの対応に悩まされていた方はたくさんいると思いますが、そのときの悩みなんて小さなことだと思えるくらい、対象のデバイスの数が増えていきます。Web へ繋がる窓口が星の数ほど増えてくるわけですが、どのように対応すれば良いのでしょうか。

昨年あたりから Responsive Web Design が注目を浴びていますが、これはマルチスクリーンに対応するためのひとつの手段でしかありません。モバイル、タブレットという領域を超えて「スクリーン」という広い視野をもってデザインしていかなければならなくなります。そのときに、どのようにデザインをすれば良いのか幾つかヒントがあります。

利用者のニーズを知る
基本中の基本ですが、利用者がどのスクリーンからアクセスするのかでニーズが変わる可能性があることに注目です。スマホだから情報を絞る・・・ではなく、スマホからアクセスしている意味を探ることで適したデザインが提供できるでしょう。モバイルの文脈を読み解くのもひとつの突破口です。
コンテンツに触れる感覚を養う
我々の生活の中に表れたスクリーンの多くはコンテンツに直接触れることができるタッチスクリーンである場合が多いです。利用者はどのようにコンテンツに触れるのでしょうか?どのように操作したがるのでしょうか?マウスとキーボードといった抽象的な操作からの変化にデザインも対応しなければいけません。
見た目のコダワリ方を変える
スクリーンサイズが爆発的に増えるわけですから、見た目をまったく同じにすることはナンセンスな作業です(元々それが Web デザインにおける質ではないと思っていますが)。しかしだからといって、見た目が大事ではないわけではありません。どのような見た目を様々なスクリーンで確保するか、本当にその装飾は必要なのか、見た目をコントールしつつ柔軟性をもつ方法はなにか?といった課題に取り組むことがコダワリになるでしょう。

様々なスクリーンに囲まれていた生活とは、Webがパソコンという小さな窓口から解き放たれたという意味が含まれています。そのときに昔から Web サイトを作り続けてきた人たちはどのような価値を提供することが出来るでしょうか。一見、難しいだらけのように聞こえますが、より一層、人のためのデザインが出来るという意味では非常にエキサイティングな時代がきたと思っています。

筆者について

Experience Points

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