ロングテール化するTVと4つの展望

Future of TV

Apple TVで見たい海外TVドラマや映画を好きなタイミングですぐに見れたり、自分がお気に入りの購読チャンネルを iPad や iPhoneで気軽に見れたりするようになった現在。HDDレコーダーが出たあたりから、CM をスキップして番組が見れる環境が整い始めてきましたが、今はクラウドからのストリーミング、オンラインサービスとの連携でいつでも何処でも見れたり、予約も何処からでも簡単にできます。TV が TV 局の番組を受信・映写する機械から、クラウドに通じるモニターに変化しているんだなとシミジミ思います。

Huluを筆頭に、キーTV局は積極的に Web 経由で番組を放送中。各TV局の公式Webサイトを見ても、情報サイトというより番組を見るためのプレーヤーになっているイメージがあります。HBO のように独自に iPad アプリを配布し、そこから番組を購入出来るようなモデルを作っている局もあります。

Hulu は従来のような CM を差し込んで放送する広告モデルと、有料のプレミアムサービスを両立し、利益を上げているサービス。Hulu はマルチデバイスに対応しているものの、現状は Web サイトを軸にしているサービスです。一方 Netflix は、ゲーム機、家電、セットボックスなどプラットフォームを選ばず様々な場に窓口を開いているサービスです。こちらは新作映画が見れないという短所があるものの、いつでも何処にでもあるという環境を作り出していることからアメリカでは人気があります。

TV番組や動画コンテンツは、時間・場所・デバイスの枠を超えていつでも何処でも見れるようになってきました。アメリカでは 今まで以上に人々は TV を見ている(ニールセン)という調査結果が出ています。また、33%のアメリカの大人は TV 番組のようなフルコンテンツをインターネット経由で視聴している(eMarketer)そうです。その理由も動画コンテンツへのアクセスのしやすさからなのでしょう。

今後、タブレットを含めたモバイル機器での動画コンテンツの観覧がますます増えていきます。それと同時に今年も新しいサービスやビジネスモデルが登場する可能性があります。利益が出始めている Hulu にしても、まだ立ち上がってそれほど経つわけではありませんし、コンテンツプロバイダーとの契約の仕方も含め、実験的な試みをするでしょう。TV と視聴する私たちはどのように変わるのでしょうか。幾つかの変化から4つのことが考えられます。

1. WebはTVの敵ではなく連動させる技術

ゆったりとした姿勢でみる TV 観覧の体験と、少し姿勢が前屈みになる Web の体験は異なります。それぞれ役割をもっており、ニーズは消えることはありません。どちらかが生き残るかという争いではありませんし、どちらかが欠けていても動画コンテンツが生き残ることはないでしょう。Web はコンテンツをパーソナライズ・配信するための技術であり、TV が配信のひとつの窓口として重要な役割を果たします

2. プレミアムコンテンツの成長

現在、US の iTunes Store では、上映中のものだけでなく、プロモーションの一環として公開前の映画を購入・レンタルすることが出来ます。俳優の Edwards Burns は、自身の監督作品「Purple Violets」を iTunes だけで先行公開するなど、プレミアムコンテンツが幾つか配信されています。海外ドラマの名チャンネルである HBO、AMCのようなケーブル局も最初は映画や他局のTV番組を配信/再放送していただけでしたが、徐々にオリジナルコンテンツに参入し今の地位を築き上げています。

人気ケーブルTV局が辿っている道を Netflix が進もうとしています。デビッド・フィッシャーがプロデュースする「House of Cards」というシリーズが来年から Netflix で開始します。視聴者は価値があるコンテンツにはお金を払うことは TV や映画で証明されていますが、Web から始まったサービスがこうした事業を始めるのは興味深い動きです。どのサービスも自分たちだけの良質コンテンツを探し求めているのが分かります。

3. ハードやプラットフォームからの開放

先ほどの Netflix のようにサービスが独自で番組を作るということはしていますが、プラットフォームを限定しているわけではありません。特定のメーカーのセットボックスを所有する必要もありませんし、スマートフォンしか持っていなかったとしてもコンテンツを楽しむことが出来ます。今のメディアコンテンツは配信されるその日までに Web 上でたくさんの情報交換や会話がされています。会話がコンテンツ消費の原動力をいっても過言ではありません。そのコンテンツをプラットフォームやハードウェアによって制限しないような仕組みが必要になりますし、視聴者へ自由にコンテンツを楽しめるという環境(雰囲気)を設計・提供しなければいけません。

4. インタラクティブなCMの増加

YouTube に注目が集まりだした頃から、昔の CM から最新の CM まで自由に見れるようになりました。こうした中、バズりやすいクリエイティブ系の CM が幾つも登場するようになりましたが、Web 技術が TV と連動されることにより、今までにないインタラクティブな CM が増える可能性があります。

上のビデオは オールド・ネイビー (Old Navy) と音楽を検索し曲名を教えてくれるShazam のコラボ CM。CM の音楽を Shazam に聴かせると、音楽をダウンロード出来るだけでなく、CM に登場した服を購入したり、クーポンがもらえるようになっています。ターゲットにしたい人間像と、彼等のデジタルライフの想定が出来れば、こうした Web サービスとの組み合わせで、より引きつける体験を提供出来る可能性が生まれます。Twitter や Facebook へ繋げる以外でも、やれることはたくさんありますし、進化し続ける技術を活用すれば今まで以上にインタラクティブな CM も作ることができるでしょう。

TVもロングテールへ

1人の視聴者でも TV だけでなく、第二・第三のモニターを所有している時代ですから、彼等のライフスタイルに合わせて TVのコンテンツもついて行かなければいけません。86% のアメリカ人はTVを見ながらモバイル機器も見ていると言われています。恐らく日本でも似たような現象が起こっていると思いますが、これは TV で見るコンテンツを楽しみながら別のスクリーンで情報収集したり、他の人と会話を楽しんでいる可能性を示しています。つまり、TV で見れるコンテンツは会話の原動力であり、消費に繋がる原動力になりうるわけです。

ケーブルTVが登場したことで、番組が数千数万あるという状態が当たり前になりましたが、Web によりそれが無限大にまで広がりました。今はキー局ですら、自分たちのサイトで宣伝しているだけでは注目されませんし、見てもらえるかどうかも分かりません。TVで見れるコンテンツはよりアクセシブルになることを要求されるでしょうし、今まで以上に質の高いコンテンツへのドマンドが高まるでしょう。この難しい状態でいかに次のビジネスモデルを見つけるかが、今後の課題であると同時にエキサイティングな部分といえます。

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Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。