コンテンツを意識してWebデザインするとは

複雑に入り組んだ Web の世界。そして、今まで以上に多様化する Web の利用方法。だからこそ、何処にでも配信できるコンテンツを設計しなければいけませんし、CMSの機能にだけ注目するのではなく、配信したいコンテンツとの相性を考慮することが優先されます。

11月27日に WordCamp Tokyo 2011 が開催されました。そこで「コンテンツ戦略を意識した今後の CMS の姿」という講演をしました。WordPress を中心にしたイベントでしたが、私の講演では WordPress に留まらず、今後必要とされる Web コンテンツに必要とされる CMS のあり方について解説しました。講演の意図について知りたい方は前回の記事「コンテンツを軸にしてCMSを使おう」をご覧ください。

機能至上主義からの離脱

CMSの話になると、どうしても機能の話になるのは以前から疑問を感じていました。日本だと Movable Type の支持は高いですが、MT と WordPress を機能比較でしか議論できないのはどうも寂しい気がします。機能は重要ですが、機能を前提にしてサイト構築すると、結局クライアントやサイト観覧者のメリットにならない場合があります。ニーズを機能に当て込んで考えることで、ニーズに応えた設計が出来なくなる可能性すらありますし、すべてを機能に頼り過ぎることで、人の力が必要になる重要な事柄を自動化しようという方向に進んでしまうこともあります。

これと似たようなジレンマが Web デザインにもあります。「デザイン、コード、マルチスキルの世界と私たち」という記事で、テクノロジーを無視して Web サイトを作ることは出来ないと解説しました。同様に CMS を使うということは、機能を無視するわけにはいきません。しかし、テクノロジーや機能を重要視するが故に、デザインやゴールがブレてしまうことがあります。ツールは、フォーカスを失うほど大きな影響力をもっていると思います。

CMSで出来る/出来ないを語る前に、配信しなければならないコンテンツを Web で使えるデータとして最適化しなければいけませんし、他にある膨大な情報に埋もれないようなプランを立てる必要があります。そもそも Web へアクセスする利用者が必要としているコンテンツとは何かという根本的なところを議論していないこともあります。いきなりサイトマップを作って、空の箱だらけのワイヤーフレームに色付けするだけなら、数千数万ある無料のテンプレートを少し改良して公開したほうが安上がりで効果的です。CMSという高機能なシステムを使って、プロを使ってしっかり Web サイトを構築するのであれば、技術や見た目に飛びつく前にコンテンツへ大きな時間を割く必要があるでしょう。

CMSによって癖が違いますが、今はどの CMS も高機能です。どれを選んでも水準の高いサイトの運営が出来るわけですから、機能に注目するのではなく、コンテンツをどう設計するかを議論するべきです。それから CMS を選んでも遅くないですし、より一層ニーズにマッチした CMS を選んだりカスタマイズが出来るようになるでしょう。

もっとコンテンツは最適化できる

我々のように Web に携わっている人たちですら『ページ』という概念に囚われていることがあります。

企業概要という企業サイトによくある項目も、まず最初にページを思い浮かべていると思います。そこには企業のプロフィールとなるひとつのコンテンツがあるように見えますが、その中には、住所、電話番号、決算、事業内容など、様々なデータ(コンテンツ)によって構成されています。1つのコンテンツとして捉えていたものも、実は様々なデータがあり、個々のデータは他の場所で流用できるものがたくさんあるわけです。

NPRのCMSのスクリーンショットNPRのCMSの一部。表示項目が非常に多く、制作に時間がかかりますが、そのおかげで様々なサービスやデバイスに最適した形でコンテンツ配信を可能にしています。

住所を Web サイト上にある数多くのページにコピー&ペーストして管理するのではなく、住所というデータを Web サイト内外で同期することが出来たほうが効率的です。CMS も現状ページを管理するという概念が強いわけですが、今よりもっと細分化されたデータを管理するシステムになることで、今まで以上に様々な状況に対応できるようになるはずです。

Webサイトはアクセスしてもらう場所ではなくなりつつあります。
人はそれぞれ気に入っている場所に居座るようになった今だからこそ、Webサイトのコンテンツを彼等がいる様々な場所へ届ける仕組みを設計しなければいけません。CMS はそれを技術的に応えてくれる便利なツールですが、どのようにコンテンツを配信するのか、どう見せたら良いのか、どのようなタイミングが最適なのかといった部分は Web を熟知しているエキスパートの知識と経験が必要になります。Webデザイナーが Web を使い倒さなければならないのもこれが理由です。

コンテンツの流れをデザインする

私は Web サイト制作者にコピーライティングのスキルを養えと言っているわけではありません。文章はある程度書けた方が良いですが、クライアントと一緒になってコンテンツをゼロから作れなくても良いと思っています。

しかし、Web を活用して最適な形に作り直すことは Web サイト制作者としてなくてはならないスキルですし、今後ますます重要視されるはずです。

複雑に入り組んだ Web の世界。そして、今まで以上に多様化する Web の利用方法。こうした中、ページという概念を引きずり続けている Web サイトをデザインしているだけでは、誰にも見られなくなる可能性すらあります。

  • 今の Web 利用者に入り込むためのコンテンツの形は?
  • キッカケを作って、次の関係を築く方法は?
  • 利用者が求めているコンテンツは?
  • それは文脈によって変わるものなのか?

こうした疑問に応えるコンテンツの設計が必要になりますし、それを補助するツールとして CMS は大事なポジションに立つでしょう。ビジュアルデザインも箱の装飾から、コンテンツを引き立てる役目に変わります。そこに Web サイト制作者としての価値が見出せるかもしれませんし、CMS の可能性をより引き出すことになるはずです。

いつものように SlideShare にてスライドが公開されているので、参考にしてください。あと、今回はスライドの評判よかったので、YouTube で全編を動画で書き出してみました。動きも一緒に見たいという方はそちらが良いと思います。

以前から記事やセミナーを通して Web ならではのコンテンツのあり方について解説してきましたが、今回が一番手応えを感じるセミナーになりました。もっとコンテンツについて勉強したい!という方は以下の記事が参考になると思います。

筆者について

長谷川恭久

写真:長谷川恭久Webやアプリに関わる様々な話題を取り上げた講演やワークショップをおこなっています。日本各地で講演や社内勉強会を 100 回以上の経験しています。
社内勉強会、イベントでの登壇の依頼は、メールか Twitter メッセージからお願いします。

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