コンテンツを繋ぎ合わせる理由とメリット

コンテンツに意味をもたせる

SEO、アクセシビリティ、ユーザビリティを考慮するのであれば「セマンティック」は忘れてはならない言葉です。しかしながら「セマンティック」という言葉は HTML のようなマークアップのみを指しているのではなく、別の側面もあります。例えばあるページに「デザイン」という言葉があるとします。そこに「CSS」「HTML」「レイアウト」など幾つかのキーワードが付随することで、「デザイン」だけでは捉え難いコンテンツの文脈と範囲を理解することが出来ます。キーワードだけでなく誰が書いているのかといった情報も付随すれば、情報を別の角度から繋ぎ合わせることも考えられます。コンテンツにメタデータがあることで各コンテンツとの関わりが明確になるだけでなく、各コンテンツの意味が深まるのでコンピュータの理解力が増します (つまり SEO 的な効果も考えられます) 。

制作側はコンテンツを載せるためのコンテナ (レイアウト、ナビゲーション、ウィジェットのようなサブエリア) のマークアップを可能な限りセマンティックになるよう整備をしていますが、コンテンツはどうでしょうか。ライティングガイドラインにマークアップのガイドを記載しておけば、コンテンツの大枠は整理することは出来るでしょう。しかし、コンテンツに意味をもたせるということは単に <ul><h2> を記述するだけに留まりません。先述したようなコンテンツに関わるメタデータをどのように付けていくかが鍵になります。

メタデータ化の先にあるメリット

メタデータを付けるということは、コンテンツをひとつのオブジェクトとして捉えているといえます。コンテンツはナビゲーションやビジュアルによってパッケージされているものの、単体としてサイトの外で有機的に存在することが出来ます。情報の流れは今まで以上に早くなっただけでなく、人と人とがやりとりをする情報の単位も小さくなってきています。Web上でものすごいスピードで行き来している小さな情報を繋ぎ合わせて、意味を見出すためには小さくなった情報を繋ぎ合わせるメタデータの存在が欠かせません。

有料会員のみがコンテンツを読むことが出来るというモデルは日経電子版をはじめ国内外でみられますが、Webとは非常に相性が悪いモデルです。新聞のような小さくパッケージングされた情報の配信であれば有料という敷居を築くのは可能だったのかもしれませんが、Webのようにパッケージングという考えから開放され自由に繋がり合える環境下では敷居をもつことは逆効果です。有料の壁があることで、Web全体との関わりがもてないわけですから、コミュニケーションも発生しにくいですし、情報を深く知る機会も壁の中だけでしか成り立ちません。「情報の流れの変化を意識したウェブ戦略」という記事で、情報を読みに来てもらうという流れから、情報を読者のもとに届ける流れに変えて行かなければならないと指摘しましたが、有料の壁を築くことでそれが実現出来ないわけです。

では、どのように有料の壁を作らずにお金を徴収することが可能になるでしょうか。そのひとつの可能性としてメタデータがあると考えています。

読み手だけでなく、コンテンツ配信側の視点からみてもメタデータを記述するメリットはあります。メタデータが付随していることで、読者がどのキーワードで誰が書いたものに反応しているのかがより明確になります。コンテンツと読者の関係がより透明になれば、ページ単位やサイト全体からみた場所で格付けしている値段表にも変化が現れると思います。

例えば、日経電子版で現在「特ダネ」が40本無料で読めると書かれていますが、人によって特ダネと捉える分野は異なりますし、次々読みたいと感じることもありません。フラットに40ページビューと換算するのではなく、読者の傾向に合わせて組合わさった情報のネットワークを10作れるとか、追いかけたいコラムニストやジャーナリストの記事を10読めるなど、情報の重さや深さで有料にすることは可能ではないでしょうか。それを可能にするにはまずはメタデータが欠かせないでしょう。

ニュースのための Microformats

では、情報に重さや深さをどうもたせたら良いのでしょうか。その事例も既に出て来ています。

hNewsの公式ページ

コンテンツのメタデータ化は随分前からあって、例えば hAtom があります (このサイトも hAtom を基に形成されています)。この hAtom の派生としてニュースに特化した Microformats が hNews になります。これは昨年の夏に発表された Microformats で、開発に携わっている Associated Press は既に実装しています。他にも AOL NewsQuad-City Times などサポートしているニュースサイトの数は増え続けています。メタデータがニュースに付くことで、誰が書いたのかが明確になるだけでなく、ライセンス (rel-lisence) へリンクすることで利用ポリシーもわかりやすくなります。

ニュースが繋がりやすくなれば、サイトに滞在する時間も長くなるでしょうし、的確な情報が掲載されていれば信頼性も増します。今回はニュースを例に出していますが、ニュースサイトだけでなくコンテンツを提供しているのであれば、壁を作らずコンテンツとコンテンツをどうすれば繋がりやすくなるかを考えて行かなければいけませんし、その第一歩としてメタデータという側面からみたサイトのセマンティック化は欠かせないでしょう。

Infographic is created by Jer Thorp

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。