紙を使う理由 デジタルである理由

デジタルメディアと紙媒体の違いは「消費」と「インタラクション」ですが、私たちはときにこの違いを意識せず別媒体の良さを模擬するあまりに使い難いデザインになってしまうことがあります。

手元からいつでも情報へアクセスしたり、コンテンツを消費出来る世の中になっているとはいえ、私たちは紙を使い続けています。紙を使う理由は何でしょうか? 紙を使う理由のなかに、感情的な部分も少なからずあると思いますが、他にもあると思います。理由を考えるにおいて、ガジェットによる情報のやりとりと、紙を使った情報のやりとりの違いを把握することが重要になります。

デジタルメディアと紙媒体の違いは「消費」と「インタラクション」の2点。

紙はそれぞれスペースが制限されているとはいえ、簡単に持ち運びも出来ますし、使い捨てや再利用もしやすいです。しかも、紙を持った瞬間からそこに書き込まれている情報にアクセス出来ますし、何か情報を書き込みたいと思えばすぐに出来ます。それに対し、ガジェットの場合はガジェットそのものは、だんだん持ち運びがしやすくなってきているものの、いつでも何処でも使える(代用出来る)ものでもありませんし、柔軟性に長けているわけではありません。しかし、そこに表示されるコンテンツの量は膨大で、使い回しや上書き・編集も出来ます。ガジェットへのインプットも簡単になってきているとはいえ、アプリケーションを使うことが前提になりますし、自由度は紙の足下にも及びません。

Kindleのように本の代わりになるようなデバイスも 10年くらい前から幾つか出てきているものの定着はしていません。Kindleが目指すところは共感出来るのですが、まだ紙媒体の本の代わりになるとはいえないですね。eペーパー周辺の技術は発展し続けていますし、解像度もよくなっています。曲げることが出来る超薄型ディスプレイもあるわけですから、より紙に近いデバイスを利用してデジタルメディアを消費する日は近いでしょう。

とはいうものの、紙の進化版がeペーパーであるという位置付けではないと思います。重要なのは紙とデジタルとの違いを踏まえて適切かつ最適化されたコンテンツを配信することです。デジタルの消費のされ方、そして人との関わりを考えると、情報の動きが早く使い捨ての要素が高い雑誌や新聞のほうが適しているかもしれません。レイアウトの仕方にも工夫が必要です。紙によるコンテンツはぼほ直線上に読まれますが、デジタルは多方向です。いくらタップやスワイプといったインタラクションを使ってページをめくる感覚を再現しても、それは単なるギミックであり、デジタルにおけるコンテンツの消費のされかたにマッチしていません。

以上のことをまとめると:

紙のメリット
インプット・アウトプットが高速
手に馴染んだインプット
代用しやすい
直線的なストーリーテリング
デジタルメディアのメリット
膨大な情報量
多方向による情報アクセス
保管された情報の編集・再利用
差が縮まってきている部分
解像度
手に馴染んだインタラクション
コスト

そもそもなぜ、ウェブデザインをしている私がこのようなことを考えているのかというと、已然として紙とデジタルそれぞれのメリットを活かしきっていないコンテンツがあったり、紙の良さをデジタルで無理に模擬している(その逆もある)のを見かけるからかもしれません。紙媒体のコンテンツではコンテンツを閉じ込めたパッケージングを行うことで世界観を保持することがありますが、デジタルでは一概にそれが良い方法とはいえません。紙と同じようなパッケージング手法ではなく、インターネット全体との関わりを保ったり、デジタル特有のメリットを利用したパッケージングがあると思います。

同じデジタルでも CD-ROM/DVD のようなコンテンツ配信とウェブは違いますよね。まぁ前者はインプットすらほとんど出来ないですが・・・。ウェブサイトを作っている自分だからこそ、こうした違いを把握してコンサルや解説をこれからもしていきたいですね。いただいくコンテンツ (材料) を最大限に活かしたいのは依頼するクライアントだけでではなく、作る自分もそうですから。

紙とデジタルの違いはまた続けて書く予定。

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筆者について

Photo of Yasuhisa Hasegawa

組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためのお手伝いをしています。各地でデザインに関わる様々なトピックで講師をしています。

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