私たちはすべての人と友達になれるのか

自分が好き、自分の好きが世界の中心にあるからこそ、それ以外への拒絶反応も今まで以上に強いものになっているソーシャルの世界。私たちは本当に孤独がなくなるネットワーク社会をうまく生きていくだけ『進化』できるのでしょうか。

ソーシャル。ソーシャル。ソーシャル。

今、この言葉を聞かない日がないくらい耳にしています。そして、様々な言葉がソーシャルと組み合わせて使われることがあります。ソーシャルリーディング、ソーシャルラーニング、ソーシャルファンディング、ソーシャル医療・・・。おそらく私たちの行うすべての行動はソーシャル化され、ソーシャルという言葉を使う必要がなくなる日が来るのかもしれません。

ソーシャル化される・・・これは、私たちの情報が公の場にさらされ、すべての人が何かしらの形で繋がっているネットワーク化された状態です。人との繋がりや影響力がネットワーク化された社会では重要と考えられているからこそ、評価経済や評判経済という言葉が生まれてきたのでしょう。

人と人とが繋がり合い、新たな可能性を生み出すソーシャルな世界。常にネットワークにいるからこそ、心を支え合うこともできるかもしれない。Sean Parker 氏が、彼の新しいスタートアップ Airtime を語るときに使った言葉が「Eliminate Loneliness」でした。ネットワークで繋がったソーシャルな世界は、正に孤独がなくなることといえるでしょう。

しかし、私たちは本当に孤独がない世界を必要としているのでしょうか。また、ネットワークに繋がった世界にいることが我々にとって本当に必要とされている状態なのでしょうか。それが時々分からなくなります。

孤独は辛いです。しかし、孤独という状態があるからこそ、繋がりの喜びがあるでしょう。孤独とは言い換えれば、自分だけの時間があるということです。孤独がないということは、常にソーシャルプラットフォームという名の監視カメラによって見られている状態ということになります。常にネットワークに繋がった状態が、人間としてポジティブな効果を生み出しているのかというと、そうとは言い切れないと思います。

昨年、ソーシャルメディアがもつ光と闇という記事で、クリックひとつで出来る情報発信の危うさについて書きました。その危うさが完全なるネットワーク社会が訪れた際に、さらに浮き彫りになるのではないかと危惧しています。

自分の生活をブロードキャストし、反応を楽しむという一種のナルシシズムに近い行動と反応が常に起こり続けるソーシャルな世界。いろいろな人たちと繋がっているように見えて、実は自分の趣味・趣向が合う仲間たちによってタイムラインという世界が埋まっているだけに過ぎません。ソーシャルな世界では、今まで以上に自分好みの狭い視野の世界に閉じこもりやすくなったと言っても過言ではありません。

自分が好き、自分の好きが世界の中心にあるからこそ、それ以外への拒絶反応も今まで以上に強いものになっている傾向もあります。感情が繋がり・増幅しやすいネットワーク社会だからかもしれません。

もちろん、ソーシャルプラットフォームを使うのを止めよう!とか、ソーシャルの定義おかしくない?という話をしているわけではありません。使うのは自由だと思いますし、システムを変えるのではなく、人の使い方が変われば上記に挙げているような不安が解消されることがあります。ただし、本当に使い方を変えることができるのかというと少し悲観的ではありますが・・・。

ソーシャルによって繋がるネットワーク社会で、私たちは繋がっているすべての人々に対して友達や家族のように付き合えるのでしょうか。。

友達や家族の捉え方は人それぞれですが、家族や友達は「許せる(受け入れれる)」「忘れる(水に流す)」ことができる人たちではないかと思っています。友達や家族であれば、たとえ自分とは異なる意見や考えを発していたとしても、それはそれと受け入れてくれるでしょう。また、過去に過ちをしてしまったとしても、水に流すことが出来るかもしれません。

しかし、実際のところ、すべての人を家族や友達のように受け入れることは出来ないでしょう。受け入れられないからこそ、愚痴をブロードキャストし、忘れられないからこそ、過去ログを掘り出して多くの人にさらけ出ししているのかもしれません。孤独が排除されたネットワークの世界は、何もかもがデータ化され、やり直しがきかない、許される領域が狭い世界になっていく可能性があります。

何事にもポジティブがあり、ネガティブがあります。
ソーシャルの世界での良いことは数えきれないほどありますし、結局ところ人の使い方次第だと思います。しかし、手放しに絶賛できないですし、時代の流れだからこということで、何も考えずに従うというのはどうかと思います。特にソーシャルという言葉をキーワードとして使い、人が使うツールやプラットフォームの開発に携わっているのであれば、考えないのがナンセンスです。

私たちは本当に孤独がなくなるネットワーク社会をうまく生きていくだけ『進化』できるのでしょうか。

筆者について

Experience Points

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