UCDではないもの

誰にとっての『中心』なのか

UCD (User Centered Design) / 人間中心設計プロセスは、ここ数年注目を浴びている言葉のひとつ。特に私が携わっている Webサイト制作業界でよく聞く言葉のひとつですし、エンジニアやプログラマーも UCD を意識している方も少なくありません。UCD について詳しく知りたい方は、棚橋さんが書いた「 User Centered Designが必要な理由」が参考になると思います。

今このサイトで行っているオープン Web デザインも UCD を考えてやっていることではありますが、他のバズワードと同様 UCD も扱いに気をつけなければならない言葉だと思います。利用者のことを考えてデザインしていますという意思のようなものが UCD という言葉から伝わってきますが、「利用者を中心とした」という言葉の真意は何処にあるでしょうか。ペルソナを作ったとしてもごく少数のためにデザインするわけでもありません。どの利用者の中心なのでしょうか。

他の言葉と同様、UCDは様々なメーリングリストやブログで話し合われていますが、明確な定義というのはありません。僕としても明確な定義は必要としていないわけですが、これは UCD とは言えないのではないだろうかという部分を挙げてみることで、なんとなく自分の中で UCD とはこういうものなのかもしれないねと分かって来るかもしれません。

  • 一概に利用者が求めているものを与えることが UCD ではない。そもそも利用者は求めているものがはっきり分かっていないことが多い
  • UCD はビジネスやテクノロジーから独立して存在しているわけではない。むしろ密接に関わっていて切り離すことは出来ない
  • 簡単に使えるものを作ることが UCD ではない。どんなに配慮が行き届いたプロダクトでもエラーは発生するので、エラーやミスから立ち直れるように作られているかが重要
  • UCD は数多くあるデザインプロセスのひとつであって、保証にもならなければ最高のプロセスといえるわけではない

デザインは芸術、技術、経済そして環境といった様々な要素が組み合わさり、その中でどうバランスをとるかがひとつの課題になっています。UCDにしても同様のことが言えるわけで、バランスを考える中で利用者の価値を忘れてはいけないということなのかもしれません。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。