Kinectから始まる新しいインタラクション

既に 1000 万台が販売されていると言われている Microsoft Kinect。コントローラーを持たなくても身体を動かすだけで様々な操作を実現するこのデバイス。USB接続を使用していることもあり、発売開始直後から、PC や Mac に接続をしてハッキングをする方が続出。プログラミングのためのプラグイン・アドオン・ライブラリが続々と登場しました。久々にモノ作り魂に火が付いた方も少なくないと思います。

Kinect と AR を組み合わせたデモ

こうした開発者達の草の根活動を禁止することは出来たはずですが、あえてそれをしなかった Microsoft はさすが。先日、公式の SDKがリリースされたことにより、今後さらに Kinect を活用した試みが増えるでしょうし、実際に使えるサービスとしてビジネスを始める方も出るかもしれません。もう Kinect ハックではなく、正式な Kinect 開発になったわけです。

医療、教育、マーケティング、ビジネスなど様々なフィールドで Kinect が活躍する可能性があります。今みることが出来る未来の Kinect 像を覗いてみましょう。

教育

Bing マップと組み合わせて地上から宇宙へ自由に飛び回る

授業に Kinect を使うことで、教え方もよりインタラクティブになる可能性があります。平面では分かり難かった位置関係を 3D 空間に表示させ、Kinect で操作をすることでより理解が深まりそう。また、先生が教壇から自由になり部屋の何処からでも操作が出来るになれば、生徒との距離は縮まりコミュニケーションをする時間を増やせるかもしれません。

また、Web を活用した遠距離からの学習にも Kinect を活用することにより、インタラクティブな生徒間のコミュニケーションが可能になるかもしれません。単なるビデオカンファレンスから一緒になって何かをするエクササイズに変化しそう。

アクセシビリティ

Kinectで手話を音声とテキストに転換

Kinect が人々の生活はさらに楽にしてくれる可能性を秘めています。SDKには身体のトラッキングするためのツールが揃っています。AI が身体を認識するためにのポジションの初期化も必要なく、精度の高いトラッキングを実現しています。これにより、車椅子や目が不自由な方を道案内するためのデバイスが出て来てもおかしくありません。今でも既に目が不自由な方が Kinect で 道案内する ソフトウェアが開発されています。Kinect 自体が小型化しなければ実現は難しいかもしれませんが、Kinect を使った人の補助は今後様々なかたちで実現しそうです。

医療

Kinect で患者のデータを操作

何も触れることなく操作ができる Kinect は、常に清潔な場で仕事をしなければならない医療において最適なツール。声とジェスチャーを使って医療の複雑なデータを自由に操作ができます。手術をしているときに、あるデータが必要になった・・・そんなときジェスチャーと声でデータを呼び出し、目の前に表示させる。そんなことが将来可能になるかもしれません。

他にも Magic Mirrorのように AR と組み合わせた事例も既に登場しています。レントゲン 2.0 といったところでしょうか。Magic Mirror は医療の世界より、人体学を学ぶ教材として使えそうですね。

マーケティング

試着だけでなくメイクやヘアスタイルなど可能性は広がります

Kinect を活用したデバイスが店頭に並んだり、街で見かけるようになると、いろいろ体験が変わりそうです。ロシアの ARDoor という企業が TOPSHOP という AR を使った試着サービスを実現しています。また、Builder.com の連載で紹介した KinectShopは、オンラインショッピングを Kinect でよりインタラクティブにしようと開発を進めています。試着、記念撮影、カートまですべてをジェスチャーで行えるインターフェイスは今までのEコマースサイトとはまたひと味違います。

インタラクティブなビルボードやディスプレイは今までもありましたが、Kinect を使うことで 3D の物体に触れたり、旅先の様子を疑似体験したり、購入するマンションを見学するなど、今までにない側面で顧客に製品を知ってもらう(体験してもらう)ことが可能になるでしょう。

マイクロソフトは元々ソフトウェア会社だけあって、開発者達が発展の鍵になること、草の根の活動が企業の成長の鍵になることを十分理解しています。今まで上手くいなかったこともありましたし、開発者の意向を受け入れない姿勢を示したこともありますが、今回の Kinect の発展は、ライバルゲームコンソールである PS3 や Wii では出来ない、マイクロソフトだから出来たことだと思います。XBOX には インディーゲーム を配布するプラットフォームもありますし、PCゲームのノウハウや経験がうまく XBOX へ還元されているイメージがありますね。

恐らく Kinect で Web サイトを操作する日はやって来ないでしょう。しかし、モニター上に映し出されてる世界と実世界との境目がますますあやふやになるのは確かです。タッチインターフェイスはその前兆であり、Kinect のようなジェスチャーインターフェイスがそれをさらに加速させるでしょう。こうした中、私たちはどのようなインターフェイスを提供しなければならないのか、考えていきたいですね。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。