デザイナーが使っておきたいiPadアプリ5選

近い将来、パソコンを完全に入れ替えることはないにせよ、タブレットが幾つかの役割を果たすことになりそうです。少し未来を体験するという意味でも iPad Pro + Apple Pencil は試す価値はあります。

仕事の仕方が変わった2016年

今年の春に iPad Pro を購入して以来、ペーパーレスの生活を続けています。今までは RHODIA のドット方眼ノートでアイデアの書き込みやスケッチをしていましたが、その役割を iPad に置き換えてみました。今でも iPad Pro を続けていますが、それが続けられている最大の理由は Apple Pencil の存在。今までスタイラスは何度も試したことがありますが、鉛筆・ペンを使う感覚とはほど遠いものでした。Apple Pencil はその名の通り鉛筆と同じような書き心地と、デジタルならではの使い勝手を実現していて、「これなら移行できる」と思えました。発売当初に出たビデオは大袈裟に表現しているものではなく、本当にできるわけですから驚きです。

iPad Pro を購入以来、Apple Pencil で使うと良さそうなアプリを幾つか試していますが、今回はその中でもオススメ 5 アプリを紹介。動画視聴機だったタブレットを、デザインの仕事に役立つ道具に変貌すること間違いなしです。

自分の感覚に合うものを優先

ただひとつ注意点があります。
例えば、文房具屋へ行くと、たくさんのペンや鉛筆があります。その中から自分の手に馴染むものや、線の乗りが(自分にとって)良いものを選んで買うと思いますが、今回紹介するのも同じような感覚で選んでいます。機能面で優れていても書き心地が良くなければ長く使うことはできません。

今回のセレクトは Apple Pencil の魅力を最大限に活かしているのはもちろん、自分の描く感覚に合ったものになります。感覚は人それぞれだと思うので、ぜひ幾つか試して自分に合うものを選んでみてください。

Paper

最も使っているアプリがこちら。Instagram で掲載しているスケッチのほとんどは Paper で描いています。レイヤーがないですし、線の太さを変えられないので物足りないという方もいると思いますが、その制約がかえって描くことに集中させてくれます(線の太さはキャンバスを拡大・縮小することでカバーできるので無問題)。ツールの切り替えもワンタップですし、描くときは UI が非表示になるのもプラス。

Paper の魅力は他のアプリにはない現実世界に近い『色混ぜ』ができるところ。Paper が登場した当時、そのテクノロジーが話題になりましたが、水彩画の絵の具と同じような感覚で色を混ぜることができます。他のアプリはお馴染みの RGB カラーホイールですが、2 つの色を混ぜ合わせて考えるのが一苦労です。色を重ねても思っていた色と違うという場合もありますが、Paper ではそういったことがなく、現実世界に近いという直感性はあると思います。

Paper 操作画面

Apple Pencil での反応も上々ですし、Pencil を使った時と指を使った時を別々で探知してくれます。例えば Pencil で描いた線を、指でボカすといった使い方もできますし、他の色とも自然に混ざり合います。シングルレイヤーなので、本格的なデザインはできませんが、メモやスケッチには最適です。

Procreate

名前に「Pro」と表記されているだけあって、プロ向けの機能がたくさん盛り込まれたイラストを描くアプリ。レイヤーはもちろん、ブラシのカスタマイズもできるようになっています。プリセットで鉛筆風、油絵風といったブラシは幾つか用意されていますが、自分の感覚に合う線が出せるペンを作って保存できるのは、さすがプロ向けといったところでしょうか。描いた絵は、PNG をはじめとした画像ファイルだけでなく、PSD にも書き出せるので、細かな描写や調整を後でパソコンでするといったこともできます。

多機能なアプリで心配になるのがパフォーマンス。描いていても 0.1 秒くらいの遅れを感じると、描く意欲が次第に落ちていきます。幸い Procreate は Apple Pencil にフルサポートしていて、遅さを感じることはありません。Apple Pencil からのプレッシャーや傾きにも反応するので、しばらく練習すれば自分が思い描く線を書けるようになるはずです。

ちょっとしたギミックですが、Procreate には動画書き出し機能も付いています。これは、自分が描いたプロセスを早送りで見せることができるもの。ソーシャルメディアの共有とかに向いていそうです。

Notes

iOS, macOS にプレインストールされているディフォルトアプリ。「こんなのオススメ!?」と感じるかもしれませんが、純正だけあって Apple Pencil の反応が最も良いアプリです。Apple Pencil で可能なことを体験するには Notes が一番ですし、他のアプリを選ぶ際も Apple Pencil で再現できる感覚の基準になります。Apple Pencil で本当の鉛筆のように傾けて影を描くといったことができるのを体験すると、ちょっと感動しますよ。

Apple Pencil でメモが描けるのは iPad Pro だけですが、その続きを iPhone で手書きするといったことはできます。また、絵を描く部分とテキストを入れる部分をひとつのノートとしてまとめておくことができるのも便利です。Apple Pencil のあるべき姿を体験したい人。そして、iCloud など Apple のエコシステムを使っている人であれば、素直に Notes を使うのも手段です。

Note Always

ワイヤーフレームや、大まかな画面遷移を描きたいけど、綺麗に描けないという人は Note Always は便利です。このアプリは『清書』する機能があって、手描きの緩い線を、まっすぐの綺麗な線に変換することができます。また、線の色や描いたボックスの大きさを後で変えることができますし、複数のオブジェクトを選んで移動するといった、ありそうでなかった機能も実装されています。

操作画面 Note Always

選べる『紙』も無地なものから方眼紙まで様々。線や背景の色も決めることができるので、自分の仕事の用途に合わせて紙を変えて使うことができます。レイヤーもないですし、書き出しも JPG/PDF のみと少なめですが、描いたオブジェクトの編集や移動が簡単にできるので、レイヤーがないことは気にならないと思います。描くときは Apple Pencil。描いたオブジェクトを選択するときは指といった使い分けで早くワイヤーフレームが描けるようになるはずです。

Adobe Comp

図形、写真、ダミー文字など、ジェスチャーを覚えるだけでどんどん形が作られていくちょっと不思議なアプリ。デザインテンプレートも豊富で、例えば iPhone アプリのデザイン案を打ち合わせをしながら作るといったことを可能にしてくれます。手描きより見た目が良いので、見ている側も想像しやすいと思います。

Adobe らしい連携は素晴らしく、例えばパソコンで Illustrator を立ち上げた状態で Comp から画面デザインを送ると、送ったファイルが自動的に開いて、そこから続きの作業ができます(残念ながら同期はないです)。図形はベクターなので、あとで大きさや色を変えたりすることができます。

Apple Pencil の反応は他に比べて良いとは言えないですし、ジェスチャーからオブジェクトへ変換するまでの時間も少し遅いです。パフォーマンス面で不満はあるものの、近い将来こういうふうにデザインするかもという期待を感じさせてくれるのでセレクトしました。他の Adobe 製 iPad アプリにも言えますが、パフォーマンスよりパソコンとの連携が大事という方であれば、選ぶ価値があると思います。

Adobe Comp 操作画面

まとめ

Apple Pencil は 1 万円する高価な品ですし、今のところ iPad Pro が唯一の対応デバイスです。私は持ち運びのしやすさを優先して 9.7 インチの小さいモデルを選びましたが、それでも最低価格で 62,800 円します。とても高い買い物になりますが、今までのタブレットでは感じなかった仕事を変える可能性を今回初めて体験することができました。デザインツールの変化は、iPad のようなタブレットからも始まってきています。

特に iPad のように、人にも画面が見せやすいポータブルデバイスの良いところは、作り方だけでなく、周りとのコミュニケーションの仕方も変わるという点です。打ち合わせ中にデザインを始めることができますし、「これってどう思う?」と画面を見せて反応を見るということがしやすくなります。

近い将来、パソコンを完全に入れ替えることはないにせよ、タブレットが幾つかの役割を果たすことになりそうです。少し未来を体験するという意味でも iPad Pro + Apple Pencil は試す価値はあります。今回紹介したアプリを参考にして、自分の仕事現場で何ができるか考えてみてはいかがでしょうか。

筆者について

Experience Points

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