デザインを決めて進めるために必要なこと

「センスやテイストだけで決めないデザインの会話のためにすること」という題名で講演をしました。当たり前すら共有されていないと疑い、そこから組み立てるようなコミュニケーションをとると、後になってジワリと良い効果をもたらすことがあります。

How do we go next?

先月は東京、そして今月は大阪 で、クリーク・アンド・リバー社が主催する Web ディレクター向けのセミナーで登壇しました。私自身、Web ディレクターと名乗っていないので、依頼を受けたときは半信半疑でした。しかし、Web ディレクターをはじめとした「作り出す人」にある共通の話題があると考え、登壇を決めました。

点をどのように線にするか

ツールの使い方。マークアップの仕方。コードの管理方法。ペルソナの作り方。コンセプトを固めるためのワークショップの仕方 … などなど。こうした行程の中にある『点(作業)』は、書籍や Web でたくさん見つけることができます。どれも重要ですが、行程全体からみたとき、その手法がどのような意味を持っていて、それを基にどうゴールに向かって走れば良いのか見えないことがあります。

点は理解できたけど、それをどう線にしたら良いか分からないわけです。

例えば社内ワークショップをしたとします。
手を動かしたり、同僚とデザインについて語れるので楽しい時間です。そこで、ひとつの「ゴール」を導きだすこともできるでしょう。しかし、本当の課題は、その導きだされたゴールをチーム全体で共有し、その価値観を基にひとつひとつ前へ進めることだと思います。

ひとつひとつの手法は見よう見真似で実行できるはずです。ツールもひとりで使うのであれば、好きなものを自由に使えば良いわけです。しかし、様々なステークホルダーとの関わりがある仕事環境だと、他の人たちがどう考えているのか、何を重要としているのかというところも見て実行に移さなければいけません。点だけ知っていれば良いのではなく、それを線に変えなければ「やってみたけど、うまくいかなかったね」ということになります。

デザインを決めるという行為

点を線にするとは「決めて進めること」だと考えています。皆で意見を出し合うことができたり、ひとつひとつの工程(点)を丁寧に行うことはできます。ただ、皆の意見を平等に扱うことはできません。また、個人的な見解を言うだけでは、相手に伝わり難いことがあります。

今回は「センスやテイストだけで決めないデザインの会話のためにすること」という題名で講演をしました。Web サイト、アプリの設計の工程のなかにある『デザインを評価する』という部分にスポットを当てて、決めて進めるために必要なことを解説しました。

デザイナーにデザインを提案してもらい、それを批評する時間があると思います。そこで自分の好みや、指示だけを出しているだけだと、結局『偉い人順』という優先順位が生まれてしまうことがあります。そこで、会話のための前提を設け、その前提を基に会話ができるような環境を作る必要があることを解説しました。自分の好みとは違っても、共感できる前提を設けることで、客観的な意見が出やすくなります。これにより「好き・嫌い」という批判ではなく、誰のためのデザインかを語り合う批評へ導くキッカケになるでしょう。

デザインを進めるための『前提』とは主に以下の 3 つがあります。

人間像
誰のための作っているのか。年齢や性別だけでは分かり難い背景を共有します。
文脈
どのような利用シーンなのか。何を期待して、製品・サービスと接するのか。ときには物語風にしてストーリーを共有しやすくします。
言葉
ちょっとした言葉でも様々なニュアンスが含まれているので意味合いが揃わないことがあります。プロジェクトに合った言葉使いを見つけると、イメージが付きやすくなります。

どれくらい詳細に『前提』を共有するかはプロジェクトによって異なりますが、作る前にある時間のかかる工程です。しかし、これがあるとないとで後戻りの割合が大きく変わることがあります。

クライアントの中には「とりあえず見たい」という要望を出す場合があります。作ることは出来るかもしれませんが、上記の前提が揃っていないと、それぞれが思うイメージから意見を出すことになるので、なかなかまとまらない(後戻りする)ことになります。講義中に幾つかの画像を見せましたが、それぞれ抱いた印象が異なったと思います。私の「かわいい」と、誰かの「かわいい」が一致するとは限らないわけです。

もちろん、人間像を共有するためのワークショップをしたから大丈夫ということはありません。それを基に話し合えるように、批評の時間を進行する必要があります。また、何度も戻って確かめるということも必要になるでしょう。誰でも忘れることはありますし、変化もします。重要なのは「このプロジェクトで達成すること」が何であり、なぜなのかが分かるような共有情報がされているかだと思います。決めるための基準、進めるための方針があるかどうかです。

たまに Web を眺めていると、様々な『定義論』が飛び交うのを見かけると思います。同じ分野で仕事をしている同業者ですら、言葉のニュアンスが一致しないわけですから、別の分野で働くプロフェッショナルとの会話が合わないのは当然です。当たり前すら共有されていないと疑い、そこから組み立てるようなコミュニケーションをとると、後になってジワリと良い効果をもたらすことがあります。明日すぐに変わることはありませんが、変わるためのキッカケを明日からすぐに始めることはできるでしょう。

参加者のレポート記事

筆者について

長谷川恭久

写真:長谷川恭久Webやアプリに関わる様々な話題を取り上げた講演やワークショップをおこなっています。日本各地で講演や社内勉強会を 100 回以上の経験しています。
社内勉強会、イベントでの登壇の依頼は、メールか Twitter メッセージからお願いします。

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