コンテンツのアクセシビリティが未来を保証する

情報へアクセスできるかどうかという課題は、高齢者や障がい者だけのものではありません。Web アクセスの多様化が進む現在において、全ユーザーへの課題といえるでしょう。対応をサイト・ページという枠組みから始めるのではなく、コンテンツから考えていきましょう。

accessibility is ability to access

「その情報にアクセスできるかどうか」

これが私にとっての Web アクセシビリティです。一般的に Webアクセシビリティといえば、主に高齢者や障がい者への配慮という見方が強いですが、数年前からは私は上記のように捉えて仕事をするようにしています。少し極端な考え方かもしれませんが、「その情報にアクセスできるかどうか」ということを意識して設計するときに、高齢者や障がい者といったごく一部のグループを考えることはありません。

全ユーザーが特殊な存在

近年の Web 利用者の動向をみると、高齢者や障がい者を意識しなかったとしても、情報にアクセスできるかどうかを真剣に考えなければ、見られない・読まれないコンテンツになることが分かります。

  • デスクトップだけでなく、タブレット、スマートフォンなど様々なスクリーンサイズをもったデバイスで Web にアクセスしている。また、デバイスにより初期設定やカスタマイズ方法も様々である。
  • インプットする方法も多様化しはじめている。マウスやキーボードといった従来の方法だけでなく、スタイラスやタッチを使う方も増えてきている。また、音声入力といった一部の方しか使っていなかった方法も広まり始めている。
  • 健常者であれば、必ず目で情報を受け止めているとは限らない。デスクトップだけでなく、タブレット、スマートフォン、電子書籍リーダーで音声読み上げ機能が実装されており、利用者数を伸ばしている。
  • ビデオをはじめとしたマルチメディアコンテンツの消費の仕方も様々。大音量でフルスクリーンにする人もいれば、ヘッドフォンを忘れたので消音にして見ている方もいる。

Web にアクセスする手段が今まで以上に多様化し、今後それは加速化するといわれています。後追いでひとつひとつ対応することも出来ますが、それでは長期的にみてコスト高になるだけでなく、方向転換をするための柔軟性も失われる場合があります。

サイトからではなくコンテンツから

Web アクセシビリティは「さぁやろう」と言って導入作業にとりかかるものでもないですし、プランなしで作った後で対応というものほどコスト高なことはありません。Web アクセシビリティとは、部品のように取り付ける機能・付加価値でもありません。「その情報にアクセスできるかどうか」ということを考えることは、デザインであり、マーケティングであり、編集であり、ユーザビリティだったります。つまり、初期の設計段階からの関わりを必須とするものだと考えています。

そこで、技術支援の方法や実装方法から始めるのではなく、コンテンツの話から始めるべきではないかと考えています。現存コンテンツのチェック、足りないコンテンツの制作、ワークフロー、コンテンツ保守・管理といった課題はアクセシビリティという枠を超えて取り組まなければならない項目です。まだまだ未熟ではありますが、私は以下のような観点からコンテンツとアクセシビリティに取り組んでいます。

  • 今の Web サイトという枠組みのアクセシビリティ対応ではなく、まずコンテンツのアクセシビリティ対策からはじめる(テキストをはじめ早く出来るものを優先)。
  • 今以上にシンプルな構成を考える。未来を見据えてのコンテンツの配信であれば、シンプルなものほど利用者コンテキストに柔軟に対応する。シンプルは管理もしやすくなる。
  • プライオリティの高い場所がアクセス可能な状態であれば、たとえ 20% の対応だったとしてもリリースする。100% 対応を待っている間の機会損失が大きい。それこそ「アクセスできない」不便が生じる。
  • 新規で CMS の選択肢がある場合は コンテンツのオブジェクト化をすすめる。

JIS X 8341–3:2010 の厳密な対応という話になると、上記のような方針は有効とはいえないでしょう。しかしながら、JIS X 8341–3:2010 では、高齢者や障がい者の話題が何度か上がるものの、特定のコンテキストにおいて,特定のユーザによって,あるウェブサイトが,特定の目標(ゴール)を達成することを第一の目標としているので、まったく異なる取り組みをしているとはいえないはずです。

情報へアクセスできるという未来対応

理解しやすいコンテンツ作り、コンテンツのマークアップによる意味付けといった Web アクセシビリティで重要視されている項目は、レスポンシブ Web デザインや特定のデバイスに対応した Web サイト制作を少しだけ楽にしてくれます。また、サイト・ページという枠組みのアクセシビリティから始めるのではなく、コンテンツのアクセシビリティから始めることで、これから普及するかもしれない未知のデバイスへの対応もしやすくなります。

サイト・ページという枠組みから始める作り方では、個々のデバイス対応という後追いなアプローチになりやすくなりますが、コンテンツという普遍的な存在から始めれば、柔軟性をもったサイト構築と運営がしやすくなります。利用者が使うデバイスや利用環境に応じて、最適なソリューションを提供するという丁寧なやり方ができればベストですが、それを作るために多大な時間と費用がかかって待ち続けなければならないのであれば、最適な方法ではないとしても1日でも早くコンテンツを届ける方法を優先して考えた方が良いと思います。それこそ、情報のアクセシビリティではないでしょうか。

筆者について

Experience Points

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