数日前に Google Wave の招待状をいただき、いろいろ使ってみました。従来からあるメール、IM、Wiki そして WebExのような Web 会議システムが混ざり合った独特の形といえます。具体的に何が出来るのか知りたい方は、動画や記事を確認してください。ブレインストーム、レビュー、共同で文書作成などコラボレーションをする際に使えそうな印象があります。 多くのサイトで既に語られている Google Wave ですが、技術的やことや、機能紹介に集中しています。従来のメールを今の技術で作り直したらどういう形になるかと考えて開発された Wave。メールのような要素が UI に残っているものの、使い心地は全く違います。つまり使い勝手が変わるだけでなく、使う人の心理にも変化が起こりうるサービスだと思います。 Wave でまず変わるのが人と人との会話の仕方でしょう。メールはその名のとおり手紙のやりとりに似ています。挨拶から始まり、挨拶で終わる部分が正にそれです。会話らしくなるだけでなく、形式ばらない会話をしやすい環境を作っているのが Wave です。例えば、文字入力をしている際もリアルタイムで相手に言葉が伝わる機能があります。会話をするという意味では IM とさほど変わりませんが、文字入力がよりリアルタイムに近づくことで相手と会話をしているという意識がより強まるはずです。もちろん、Wave でも礼儀正しい会話のやりとりはあるでしょう。同じ Wave に他の方が参加しているかしていないかで、会話のトーンは随分変わる可能性がありますし、Wave に残る文章も様々なトーンになる可能性があります。 ※ Draft を On にすることで、相手にリアルタイムで文字入力を見せなくすることが出来ます。 Wave はリアルタイムのコラボレーションで力を発揮しますが、誰でもそのタイミングで参加することは出来ません。後で Wave に残された情報を読むことは出来ますが、その瞬間に行ったシナジー(感情)を読み取ることは難しいです。それを解決する可能性をもつ機能として Playback があります。会話がどのように組み立てられたのかを順に追うことが出来るので、Wave で作られた感情の履歴に触れることが出来ます。テキストという文字情報だけでなく、流れを掴むことで相手の立場を理解するのに役立ちます。 オンライン上の人間同士のやりとりをどう補助するかを考えて作られた Wave ですが、課題も幾つか残されています。 Wikipedia やブログがそうですが、誰かが Wave のモデレーターの役目をする必要があります。Wave は会話がどう組み立てられたのかが Playback を使って再現することが出来ますが、その結果何が生まれたのかを読み取るには時間がかかります。また、話のスコープがズレないように調整する必要もあるでしょう コラボレーションに適していますが、カスタマーサービスや取引などビジネスで使うには、予め社内や取引先と何を Wave 上でするのか合意の元に行うべきでしょう。社内の Wave (プライベート) と、社外の方とやりとりするときの Wave (パブリック) の情報をどのように連携させることが出来るのかも今後の課題です ビジネス、教育で形式に捕われないコラボレーションが重要といわれていますが、それを技術でサポートするなら Wave のような形なのでしょう。これからもメールのような形式的な情報のやりとりは必要かもしれません。しかし、感情や意図を伝えることもコミュニケーションでは必須です。情報を公開するという透明性だけでなく、すぐそこに私と同じ人がいるという別の透明性も Web で重要視されています。Twitter のような場が今受け入れられているのも、今まで伝わり難かった感情が手軽に通じ合えるからかもしれません。Wave が今後どのように人と人とのコミュニケーションに変化をもたらすのでしょうか。機能だけでなく、それを使う人にも注目しながら検証していきたいですね。
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Google Waveがもたらす心理の変化
2009年10月22日 12:10 pmGoogleが考える新聞の生き残る道
2009年10月5日 9:30 pm随分前になりますが、今年の 4 月に Google の Eric Schmidt が Newspaper Association of America の集会で演説を行いました。また、別のサイトで質疑応答の筆記録も公開されています。新聞の発行部数も広告収入も急激に落ちて来ているアメリカでは、Web サイトに様々なコンテンツを掲載し、開けた印象を作り始めています。質疑応答のほうでは良くも悪くも Google 視点な見解と提案がなされていますね。以下に要約をリストアップしておきます。 いずれかひとつではなく、広告、購読、マイクロペイメントの3つが収入源になるだろう。しかし、数円から支払えるようなマイクロペイメントを可能にする優れたシステムがない。現状は無料にするか、月額購読という選択肢しかないが今後は変わるだろう Google News は信頼ある発行者の情報のみ検索するシステムだが、Web 検索ではすべての情報が同じアルゴリズムの中でランキング付けされている。信頼出来る情報でも、有名ブランドではないということで下のランキングになる場合もあるが、こうした課題は慎重に取り扱って行きたい 新聞は早くから Web への取り組みをしているが、導入後の考慮が足りない。 Web の読者は何を求めているのか、どのようなスタイルで読んでいるのかを理解しなければならないし、多くのデマンドはテクノロジーを利用することで解決出来る フェアユースは繊細なトピックだが、多くの場合は消費者のデマンドや問題に対してどう応えるかにかかってくる。消費者に対してビジネスをしている以上、それは昔もこれからも変わらない 著作権はデジタルメディアによって浸食されているではない。ユビキタスなインターネットのことまで考え抜かれていない法律システムを再考する時期にきている。もちろん、コンテンツを盗む人や、国外で同じ法律が通用しないことは問題だが、それはデジタルメディアそのものとは別である Google News は様々なニュースをひとつにまとめるサービスだが、ラジオで流れるニュース番組とさほど変わらない伝達方法であり、まったく新しい形といえない。今後私たちの技術や発行者が書く記事が、読者の次のクリックへ繋がるように工夫していかなければならない クリック数や滞在時間は測定項目として有力だが、産業全体として私たちはまだ「これ」といえる測定値をもっていない。雑誌や新聞もそうであったようにインターネットも確立するまでにはまだ何年もかかるだろう 利用者 (消費者) に応えるサービスを提供するという Google の見解は同意出来ます。ただ、結局のところ私たちが仲介してたくさんトラフィックを提供します、というふうにしか読めないのが残念ですね。もちろん Google 側からいえる解といえばそれくらいしかないでしょうけど、新聞 (発行者) 側からすればそれ以上の解が求められます。 いくら、Google からのトラフィックは重要とはいえ、大きな収入は求められません。現状たくさんの広告を表示させるために様々な『工夫』をして収入に繋げていますが、応急処置に過ぎないので「トラフィック=収入」に今後も繋がるとは限りません。利用者のニーズに応えたコンテンツをつくることで Google の検索結果の精度に貢献したという意味でも、検索結果に出て来た広告の何パーセントは発行者側が得れる権利があるかもしれません。 Newspaper Association of America の講演はしばらく前ですが、つい先週 Search Engine Land というサイトで Eric Schmidt のインタビューが掲載されました。基本的に講演のときと変わらないことが書いてありますが、 最近リリースされた Fast Flip が話題に上がっていますね。新聞や雑誌でよくする流し読みをオンラインで実現出来ないかということで登場したサービスですが、個人的にはあまり解とはいえないですね。ただ、Fast Flip で表示された広告が、発行者側の利益になれば良いかもしれません。また、インタビューでも指摘しているとおり、紙のときとは違う新しいオンラインニュースの読み方を提案しなければならないのでしょう。 今のような紙としての新聞が残るかどうかは分かりませんが、新聞という存在はこれからもずっと残るでしょう。Schmidt 氏も言っていますが、個人ジャーナリズムの可能性は否定出来ないものの、New York Times や Washington Post のように信頼出来るブランド機関はこれからも必要とされます。だからこそ、Google は幾つかの提案をしつつ新聞側と良い関係を保ちたいと考えているのかもしれません。ジャーナリズムは今だからこそ重要なのでしょうけど、生き残るための解は Google さえもまだ模索しているといったところでしょうか。
Chrome Frame はひとつのソリューション
2009年9月25日 11:37 am今週リリースされた Chrome のように JavaScript や HTML5 レンダリングを実現することが出来る IE 向けプラグイン、Chrome Frame。プラグインをインストールしているブラウザのみ認識するたった一行の meta を記入するだけなので、制作者にもやさしい仕組みになっています。Techcrunch あたりでは、「笑える」「スマート爆弾」だとおもしろおかしく Chrome Frame を表現していますし、「IE を乗っ取った」と書いている方も見かけますが、個人的にこれは素晴らしいデザインソリューションとして見ています。 まず、構造からして「乗っ取り」ではなく、利用者を意識した配慮がなされています。Chrome Frame は Browser Helper Object (つまり IE 公式の仕組み) として提供されており、IE の Cookie、履歴、パスワードもそのまま継承されます。つまり、Chrome Frame をインストールした後、Webサービスへ再ログインや情報の再記入をする必要がなく、今まで通りに使えます。また、User Agent も「chromeframe」という文字列が追加されている以外は IE として認識されるので IE 向けのサイトも今までどおり利用することが出来ます。技術的な詳しい解説を読みたい方は More technical details about Google Chrome Frame という記事が参考になります。 以前 IE6から先へ行くための提案が必要という記事で書いたように、IE6 を利用している方は他に選択が与えられていない場合が多いと思います。IE6 が使いたいというよりかは IE6 以外使えない環境にいるといっていいでしょう。企業で一斉に IE6 からアップグレードするには時間とコストがかかります。しかし、Chrome Frame のようなプラグインのインストールならどうでしょうか。もちろん、企業によっては一切ソフトウェアを社員にインストールさせない所もありますが、IE という OS との親和性が高いブラウザをアップグレードするよりかはプラグインのインストールのほうがはるかにコストは低く早い実装も出来るのではないでしょうか。また、使い心地はページの表示スピードが若干上がる以外は IE と全く変わりないので利用者側も自然に使うことが出来ると思います。 Wave を IE で動作させたいなど、Google としての思惑はいろいろあるのでしょう。しかし Chrome Frame は、いちはやく多くの方に Web のもつ可能性を「今」提供するという意味ではひとつのソリューションといえると思います。アップグレードが出来ない人に何が出来るか、どのような技術で提供出来るのか、利用者に違和感を与えない手段は何かといった配慮がなされているわけですから「爆弾」というよりかは「はしご」に近いと思います。
簡単にコンテンツが最適化されているかを見る方法
2009年4月21日 5:03 pmサイト運営側が「こうみられたい」と考えて作ったコンテンツでも、実際は異なる捉え方をされている場合があります。外からどのように捉えられるかを調べる方法のひとつとして Google のウェブマスターツールがあります。サイトがインデックスされているか、そして検索結果にどのように表示されているのか、調べることが出来ます。取得出来る幾つの情報の中に「上位の検索クエリ」という統計があります。 統計データは2つの順位表に分かれています。左側がサイトのページの表示に最も多く使用された検索クエリ。そして右側が実際のクリックに繋がったクエリになります。地域や検索の種類、そして期間で絞り込んだ結果を出すことも出来ます。サイトに記載されているキーワードがランキングで表示されているので、利用者からみたサイトのイメージを漠然と捉えることが出来ます。このデータから2つの可能性と対策が考えられます。 これらがあなたのサイト (もしくは企業サイト) を象徴するキーワードになっているかどうか。ズレが生じているのであればコンテンツのテーマを絞り込んだり再検討が必要とされます。 特定のキーワードが検索結果の上位には来ているものの、あまりクリックがされていないのはあるかどうか。この場合、タイトルや概要の表現がよくない場合があります。 このサイトは、そのときの旬ネタで多少動きを見せるときがありますが、ウェブデザイン関連のキーワードが多数を占めているので、悪くないかと思います。ひとつの参考資料としてウェブマスターツールは使えるのでぜひ試してみてください。 PS: 個人的にビックリしたのが、2年前の CSS Nite Okinawa でデモをした水産庁のページが異様に高い点。デモとはいっても、本物に近づけるためにまじめにコンテンツを書いたとはいえ驚きです。
感性によるデザイン データによるデザイン
2009年3月22日 11:01 am3年前に Doug Bowman が Google に参加したニュースを聞いたときは、意外な組み合わせだと感じると同時に今後どう Google が変化するのか楽しみになりました。彼がどのように Google に関わったかどうかは知りませんが、表に出る出ない関係なく様々なレイヤーにおいて影響を及ぼしたと思います。そして、先日 Goodbye Google というエントリーで Google を去ることになったと告げています。次どのような活動をされるのか楽しみではありますが、エントリー内には気になる部分も幾つかあります。 彼は文中で「エンジニアばかりの企業になると、問題をいかに処理 (engineering) するかが話の中心になる」と書いています。主観をすべて省いてデータから答えを探るアプローチ。Google はどの青が良いのかインハウスで決めず41種類の青を使って、利用者がどの青を好むのかデータを収集したそうです。デザイン案を提案する際もなぜそうしたのかをデータで示す必要があったとか。 彼が遭遇した『壁』はエンジニアが中心にいる Google のような巨大企業だけでなく、Webサービスやコマースを構築している方であれば一度は似たような経験したことがあるのではないでしょうか。アクセスの分析やユーザテストを行ってレイアウトを調整することはよくあることです。レイアウトを少し調整するくらいのことで「デザイナーの意思を尊重していない」というのも違うと思いますが、サイトのコアになる部分を崩してまでデータに頼り切るのも疑問を感じます。 私は Google のデザイン決定はひとつの極論へいっているような気がします。データは尊重すべきですが、データが答えではありません。例えば数字だけでは、利用者のそのときの気分や、使っている状況、環境など見出せません。そしてそうした見えない『変数』がサイトの使い方に大きな影響を及ぼします。また ABテストをはじめとしたデータ収集も有益ではあるものの、ひとつの囲いの中での調整にすぎず、利用者に気付きを与えることが出来るようなソリューションにならないこともあります。ソリューションによっては今までとは全く違うアプローチが必要なときもあります。 Google の中だけでみても Gmail や Google Maps のような違うアプローチを提示したサービスがあります。エンジニアの視点ではありますが、データでは見出せない新しい視点を紹介したという意味で素晴らしいデザインです。こうしたプロセスをビジュアルデザインでも取り入れて欲しいなと感じています。 データ分析してデザインを調整するのもひとつのデザインプロセスとして成り立っていますし、実際 Google はそれで成功しています。ただ、サーバーの向こう、スクリーンの向こうには生身の人間がいて、彼等には感情という数値化不可能な変数をもっています。コンピュータでも人の感情に響くサービスやプロダクトになれます。それを意識したエンジニアとデザイナーが一緒に作ればもっとおもしろいものが作れるような気がしますけどね。 結局のところ片方だけというわけにはいかないです。インターフェイスにもエンジニアマインドは必要ですし、どのように動作させるのかを考えるにおいてビジュアルデザイナーマインドは必要です。 こうした行き違いが去る理由であるとは Bowman は語っていますが、毎日がチャレンジであったと想像します。人は同じものを見ていたとしても捉え方や解釈は人それぞれです(個人的には完全なユニバーサルはないと考えていますが)。シンプルという言葉の捉え方でさえ様々です。新しい会社に入るときやクライアントを話すときも、捉え方の違いに驚くときはあります。まず彼等の言語もしくはコード(規準・作法)を学ぶことが先決になります。僕も以前全く違う業界でWebサイト作りなんてしてましたが、毎日がチャレンジでしたし、コードを学ぶことで必死でした。学んだとしても上手くいかないときはありますが。 テクノロジーに寄り添うウェブデザイン。今までの媒体に比べデータが収集・解析しやすいので、活用する機会は多いです。同時に、そのデータに翻弄されてしまう機会も少なくないと思います。バランスを理解してソリューションを決定出来るリーダーが今まで以上に必要とされているのでしょう。 関連記事 Google のデザインガイドライン10項目 デザイナーといってもいろいろです
