今すぐ知りたいと考える私たちにとって書籍という長い形式のコンテンツが少し遠い存在になってきたと思います。読むという行為の意味も変わりつつあります。
本
読まなくなった私たちと「読む」の今後
2009年12月16日 3:48 pm未来の本はどんなのかな
2008年8月21日 1:06 pm本には独特の魅力があります。年々買う数は減ってきているものの、所有したいと思わせる魅力のある本はたくさんあります。本を買う機会は減ってきていますが、本の数は常に増えて続けているような気がします。技術書は同じトピックでも幾つか新刊で出ていますし、新書のほうにはブログネタのような題名を幾つか見かけるときがあります。雑誌も同様のことが言えますが。 どれが本にふさわしいかどうかは分かりませんが、このまま作る本を増やし続けるのが本の未来のようには思えません。若い世代になればなるほどスクリーン上で情報を収集したり、長い文章を読む傾向にあります。オンラインで読んだほうが効果的かつ分かりやすい場合も少なくないからでしょう。スクリーン上での文字も良くなってきていますし、Kindle をはじめ電子ブックのためのビジネスモデルも出てきています。 もちろん本がなくなるとは思いません。書籍は何世紀も存在していて愛用されているわけですから、これからも変わらず本は愛される存在でしょう。むしろ、その情報が本である必要があるものがを改めて考えて作ることが重要なのかなと思います。ウェブの特性を理解してウェブサイトを作るように、本の長所と短所を理解して質の高い本を作ることがひとつの未来なのかなと感じています。以下に本の長所と短所をリストアップしてみました。 長所 触感 所有感 持ち運びやすい 長時間じっくり読める 買いやすい 長文は読みやすい 編集されている 短所 検索出来ない ハイパーリンクなし 固定バージョン 流通の限界 直線構造 トピックの固定 長く本と付き合ってきた人間だからこそ、触感や所有感は魅力的な部分ですし、これが本を買う理由になっている場合もあります。そして、この2つを徹底的に突き詰めた書籍もたくさんあります。長所の部分を徹底的に突き詰めたり、長所からみて本である必然性があるものが、未来の本を支えて行くのかなと感じています。本を作っている方は既に分かっていて模索されていると思いますが、数より質にシフトするためのビジネスモデルがないのかもしれませんね。 ひとつはデジタル書籍の数を増やすことだと思います。特定のリーダーを使わないと観覧出来ないのではなく、複数フォーマットでデバイスを選ばない形式で配信することが必須ですね。リーダーを開発出来る余地があれば、利用シーンも増えると思います。あともうひとつは発売した書籍のデジタル版もパッケージして売る方法です。例えば O'Reilly では、書籍に認証コードを記載しておいて、サイトからデジタル版をダウンロード出来るようにしています。「とりあえず持っておきたい」という所有欲を満たしつつ、検索性や機能性をデジタル版で補うわけです。このパッケージング化で本が買いたくなる種類のものも幾つかあると思います。あとはオンデマンドになるのかなぁ。それだと印刷物としての質をどれだけ追求出来るのか気になりますが。
Subject to Change
2008年7月30日 2:48 amSubject to Change: Creating Great Products and Services for an Uncertain World ユーザー・エクスペリエンスをウェブサイト制作で実践している Adaptive Path で働いている方4名が共著した本。The Long Wow をはじめ、サイトで掲載されていたコラムと新たに加わった情報が一冊としてまとまった本という印象ですね。タイトルの「Subject to Change (変更する可能性)」からも分かる通り、変化を予測出来ないほど未来はダイナミックでスピードがあるので、それらに柔軟に対応出来るようにしようというのがテーマでした。 人が求めているより良い体験は、ひとつのプロダクトやサービス単体によって実現出来るものではなく、企業・機関そのものも変化する (デザインされる) ことによって初めて実現出来ることが指摘されています。その中で、顧客調査、デザイン、そしてアジャイル的な技術導入というプロセスが必要であるとされています。機械的に解析して決められたプロセスの中で『作業』するのではなく、人を理解し、人が考え、そして人らしく組み立てて行くことが重要なのでしょう。なんとなく IDEO が提唱しているデザイン論とかぶっている感じもしました。 すべてにおいてアジャイルにやっていくのは難しいですし、作りたいプロダクトのために一気に組織構造を変えることは不可能です。作るプロセスがアジャイルになっていくのであれば、組織構造もアジャイルに変えて行けば良いと思います。書籍でも指摘されていますが、こうしなければならないということは何もなく、企業の文化に合ったものを模索して導入するしかないです。ただ、今までのウェブサイトの構築方法やプロダクトの作り方ではダイナミックな未来とそれらを使う人々のニーズに柔軟に対応しきれないのではないかという疑問を提示している書籍でしょう。 答えを明確に出せない話題ではありますが、成功事例にアップルを挙げているのがちょっと多かったのが残念です。もう少しバリエーションが欲しかったですし、Adaptive Path が行っているやり方も、もっと紹介してほしかったです。今の作り方が何が問題でどうすれば良いのかヒントを与えてくれるだけでなく、自分で何が出来るのだろうかと自発的に考えさせてくれる書籍です。
Laws of Simplicity
2008年2月11日 1:24 pmLaws of Simplicity MIT Media Lab に所属し、現在 Rhode Island School of Design の学長である John Maeda。 今も日本をはじめ世界各地を飛び回りながらアイデアや作品をブログを通して発表したりしています。そんな彼が 2006年に出版した「The Laws of Simplicity」は、彼の作品のテーマにもなっている『シンプル』をテーマに、デザインやアートだけでなく、人生そのものについても書かれている興味深い本です。シンプルには 10つの『法則』があり、彼の経験に基づいてひとつひとつ説明がされています。 本そのものもわずか 100ページほどとシンプルに構成されており、ひとつの法則の説明に数ページしかなく、興味のある法則だけ読むといったことも出来そうです。彼のスピーチや話し言葉を聞いたことがある方なら分かるかもしれませんが、文章も彼が話しかけているような軽くてジョークもところどころにあるので読み疲れることもありません。 個人的にあまり『法則』というものが好きではないのですが、彼のいう法則は押し付けがましいものでもなく、すんなり入って来るものでした。省くことや整理したりすることでシンプルを生み出すだけでなく、時間や信頼といった感覚的なところにもシンプルが隠れていると彼は説いています。逆に加えることがシンプルに繋がることもあったり、まるで禅問答みたいにも聞こえてきますが、10の法則を通してみていくと「なるほどねぇ」と納得してしまいます。 Simplicity is about having life with more enjoyment and less pain. (シンプルとは楽しみが多く苦痛が少ない生活を送ることである) デザインを考えるときにシンプルという言葉をもう一度見直す良いきっかけを与えてくれた書籍ではありましたが、僕の中ではそれ以上のインスピレーションがありました。毎日の生活は複雑にみえるようなことばかりですし、それがストレスになってしまうこともあるでしょう。では、そういった情況をいかに改善していくのか、どのようにしたら自分でもっと楽しめるようになるのか、そのヒントが『シンプル』という言葉に隠されているような気がします。
