たくさんの時間を費やせば、それだけ良いプロダクトになる可能性はありますが、一概にすべてがそうとはいえません。単純に時間が必要なタスクもありますが、クリエイティブに関していえば、時間とは全く関係のないプロセスといえるでしょう。時には一瞬で思いつくこともありますし、一晩中考えた末に編み出すアイデアもあるでしょう。では、時間を費やしたほうが価値が高いのかといえば、そうではありません。 何かを作り出すという仕事は時間では測り難いですが、他にも時間では測れない仕事はたくさんあります。ひとつの場所に長時間居座ることが仕事をしているかしていないかの評価に繋げるのも難しくなっていますし、大勢が一カ所に長時間いるということが生産性が高いことであるとも言えないと思います。「仕事時間」といっても常にフルスピードで働いているわけでもないですし、無駄に時間を過ごしている場合もあるわけです。疲れてくれば当然脳の働きも鈍くなってきます。疲れがたまり脳への負担も増えれば、ストレスもたまり仕事そのものも好きでなくなってくるでしょう。 年収制度やフレキシブルアワーというのは以前からありますが、他にも様々な試みがされています。例えば Best Buy では、Results Only Work Environment (ROWE) という制度があります。これは成果さえ挙げていれば、何処で何時働いても大丈夫というものだそうです。子持ちの方も16時くらいに会社を出て家で残りの仕事をしても誰も変な目で見ないというわけですね。あと、37signals では実験的に週休3日制を導入しています。 時間ではなく成果を重要視した仕事環境を作るには、上司や管理職の方がそういったシステムを導入したり方針に従えばそれで良いわけではありません。どのポジションにいる方もお互い信頼し合わなくては成り立たないでしょう。皆がプロダクトやサービスを良くすることに強い関心を持ち、それぞれが自分たちの役割で成功することを強く思っていてこそ成り立つ信頼関係があると思います。それをなくしては ROWE のような制度の導入は難しいです。 チーム内の通気性や透明性をもつことは、クリエイティブプロセスで重要なことですが、仕事の成果や評価の仕方にも似たようなことは言えるのではないでしょうか。
意見
時間でお金を請求出来ない仕事
2008年7月9日 12:59 amD2-03: ありがとうございました
2008年5月11日 4:32 amこの記事は「Designer meets Designers 03 で話します」の続きにあたります。 Designer meets Designers にて「さよなら Web標準」というタイトルで講演をしました。今回は久しぶりに東京での講演ということもあり、かなり気合いを入れて準備をしました。主催の MdN の担当の方が早くからタイムラインを引いてくださっていたので準備もしやすかったところもあります。最新版の Keynote を使い始めてしばらく経ちますが、以前は PowerBook G4 を使っていたのでスペックが足らず、凝ったエフェクトも使い切れませんでしたが、今回は MacBook Air だったので機能を存分に使うことが出来ました。まぁこの辺については次回のエントリーに書くとします。 「標準 (Standard)」という言葉を国語辞典で調べると「物事を行う場合のよりどころとなるもの」といった意味が出てきますが、Standard だと日本語の標準と似たような意味だけでなく「道徳的規範, 倫理, おきて, しきたり」という少々厳しい意味合いも登場します。時にこうした英語の意味と同じようなニュアンスで標準という言葉を受け取ってしまうこともあるので、結果的に「Web標準」が、なんとなく宗教じみた雰囲気になってしまうのかもしれません。もちろん Web標準はひとつの『よりどころ』として捉えるべきでしょうし、木達さんが話していたバランス感覚は制作していく上で、そしてビジネスを考えていく上で重要になってくるでしょう。 表層的なノウハウは Webや書籍で共有されていますが、根本的なところに関しての議論はまだまだ少ないと思います。堅苦しい話になってしまいそうだし、考える前に目の前の案件を片付ける必要があるのでとにかく即戦力のあるものを必要としてしまいがちではあります。もちろんノウハウの習得は大変重要なことではありますが、Webをデザインするという部分を考えることも同じくらい重要なことだと思いますし、これからも出てくるであろう新しい技術の習得にも役立つのではないかと思います。根本的なことを考えるのは気が遠くなることではありますが、結論を見出すことを目的とせず、まずは考えてみて、周りの出来事や経験と組み合わせてさらに考えるというプロセスを繰り返すことが重要なのだと思います。 今回の講演がそのきっかけになっていれば幸いです。 益子さんと小林さんと対談した前回のポッドキャストは、Web標準については語られなかったものの、講演で話されたことと繋がるものがあるので聞いたことない方はぜひチェックしてみてください。平日でお忙しい中、参加してくださった皆さんに感謝。名刺交換を少数の方としましたが、お話する時間がほとんどといって良いほどなかったのが心残りです。また、次回どこかでお会いしましょう。
Webサイトはまったく同じ見た目である必要はない
2008年5月5日 2:42 pmDo websites need to look exactly the same in every browser? (Webサイトはすべてのブラウザでまったく同じように見えていなくてはいけないのか?) リンクをクリックすると答えが分かるのでぜひどうぞ。去年の暮れから今年にかけてこんな長い URL を使った一問一答系ページが増えており火曜日かどうか、クリスマスかどうか、Twitterが落ちているかどうか、パリス・ヒルトンは刑務所にいるかどうか、自分はスゴいかどうかなどたくさんあるみたいです。 最初に紹介した「Webサイトはすべてのブラウザでまったく同じように見えていなくてはいけないのか?」は、Web標準デザインテクニック即戦ワークブックの著者としても知られている Dan Cederholm さんが作ったページ。実際 複数のブラウザで確認すると、見た目が若干違ったりします。 レイアウトが崩れていても良いという意味ではないですが、若干の見た目の違いは『仕方ない』ではなく『当然のこと』だと思います。異なる環境が構築されているパソコン上で異なるブラウザを使っているわけですし、OSもしくはブラウザにカスタマイズがされていればさらにバリエーションも増えるでしょう。ディフォルトだといってもパソコンメーカーごとに何かしらのカスタマイズがされている可能性があるので、純粋にディフォルト環境というものはないかもしれません。利用者側もコントロールが出来るわけですから、Webらしいといえば Webらしいわけですね。 スタイルシートスタイルブック 2 でも紹介したことですが、最大公約数みたいな考え方で古いブラウザとまったく同じ見た目を新しいブラウザに対しても提供することもないのかなと思います。新しいブラウザを利用している方には、それだけ良い体験を提供出来るわけですし、新しいから良いんだと感じてもらうためにも進歩的な見た目の違いは必要だと思います。最近では JS ライブラリで解決出来るものも幾つかありますが、セレクタの使い方をさらに工夫したり text-shadow や opacity といった属性も使える場所に使って行くべきでしょう。 誰でも情報がアクセス出来るようにするのも Webサイトデザインにおけるひとつのミッションですが、それだけでなく見た目だって大事です。ただその見た目のアプローチを紙と同じではせっかくの Webを使っている意味もないかもしれません。過度に見た目が違ったら利用者もクライアントも戸惑うかもしれませんが、ちょっとしたスパイスを新しいブラウザに対して加えることが体験の向上につながることもありますし、新しいブラウザのポテンシャルをフルに引き出すきっかけになるでしょう。
Find Job! にインタビューが掲載されました
2008年3月18日 12:01 amFind Jobs! ではクリエーターを目指している方に向けたインタビューコンテンツ『生業』を毎月掲載しています。有名な方や知っている方も出ているこのシリーズですが、今回僕のインタビューが掲載されました。インタビュー自体は約1時間あり、いろいろ話した記憶がありますが、いい感じに短くまとめられています。なぜこの仕事を始めたのかといういきさつも少々書いてあります。こうしてインタビューといて掲載されていると、よく考えていたようにみえなくもないですが、結構行き当たりばったりの部分が多かったりします、はい。 インタビューでは今までブログで書いてきたところを断片的にして話しているところがあるので、このサイトを読んでいただいている方にとっては総集編のように見えるかもしれませんね。たぶん以下のエントリーと合わせて読むと分かりやすいと思います。 Webデザインへの理解を深める Webという媒体を理解した上でのデザイン Inflame Casting: IC #111 January 29 2008 良いものを作りたいという思いの共有 そもそも僕がこの仕事を始めたのは「インターネット」のもつ可能性に魅了されたからです。力のない1個人でも多くの方に自分の意見を伝えたり、共有・共感することが出来るというのは今までの歴史にないすごい出来事です。インターネットでは企業だろうが個人であろうが皆フラットなわけです。自分が魅了されたインターネットをより多くの方に使ってもらいたいですし、自ら情報を発信したり共感する仲間を見つけて欲しいです。その力にもなりたいから仕事をしていると思います。 Webデザインに対する考え方や、その媒体を使ってどうアプローチするかはそれぞれ違っていて当然だと思います。むしろその違いを受け入れることが出来るからインターネットはすごいといえるかもしれません。重要なのは「インターネット」というチャンスを掴んで、自分なりにアウトプットしているかどうかでしょう。Find Job! のインタビューは『未来のクリエーターたちへのメッセージ』という要素が多く含まれていますが、「なぜインターネットなのか」「なぜこの仕事をしているのか」というのは、自分も含めて既に業界で働いている方も常に問い続けなければならないと思います。
良いものを作りたいという思いの共有
2008年2月23日 6:09 pm昨日は百式の田口さんが主催したエンジニアとデザイナーの集まりに参加しました。あきやんやサイドフィードの赤松さんをはじめ「ひとりで作るネットサービス」探訪に登場した面々、エスカフラーチェのお二人、つい最近一緒にポッドキャストしたまめこさんなど約20名弱の小さなグループでした。 ネットでサービスを始めるときに障害になっていることというのをお題にそれぞれの視点で意見交換。そのあと、出て来たトピックを幾つかピックアップして軽いディスカッションがありました。以下が『障害になっている』項目で気になったもの 個人課金のハードルが高い 誰に頼めば良いのか分からない ユーザーの声を聞き過ぎてもダメ 途中であきてしまう(モチベーション持続) 広告以外の収入源がないのか 仕事との両立 プライバシーや著作権といった法律 アイデアには著作権がないからとられやすい セキュリティ ユーザーが増加した場合でもオープン時の文化が守れるか 儲けたい人とおもしろい人がマッチングしにくい デスクトップアプリ開発者との繋がりがない 広め方が分からない 中・長期的なビジョンを考える時間がない ハードウェアやソフトウェアがもたらす限界 利用者へのサポートにかかる労力と時間 自我をいかに消してコンセプトワークを共有したり持続出来るか プログラマー VS. デザイナーみたいなトピックも挙りましたが、これは今回の集まりみたいなのを通じてコミュニケーションを増やすことで隔たりはなくなるのではないかと思います。特に今回集まった方達にいえることですが、やっていることは違っても「おもしろいもの、良いもの作りたい」という思いがあるという共通項があるので、隔たりもあまりないなと思いました。プログラマーさんから「デザイン勉強会したいよね」という言葉も挙ってくるわけですし、デザイナーさんがプログラムの勉強したいとも言ってましたし。必要な3つがあれば、どうにかなることも多いなと実感しました。あとは接点を作る場を増やしたり、「ちょっと手伝ってくれる?」と気軽に言えるようになるまでのちょっとした勇気とタイミングでしょうか。 知らない業界や業種の人たちに出会うと、その人と話しただけなのに「あぁこのテの業種の人はこういう感じなんだ」と全体的に捉えてしまうことがあります。雑誌やWebサイトなど断片的な情報を読んだだけで全体的に分かったと思うこともあると思います。業種特有の言語や考え方も存在しますが、その人の性格が最も大きな影響力をもっています。当たり前のことですが、デザイナーといっても千差万別ですし、デザインに対する考えもそれぞれ違ったりするわけですから、少人数の方とコミュニケーションとっただけで「この業種はこういうタイプ」というのも乱暴な考えなんですよね。「マスコミ」「地方」「外国人」といった言葉がありますが、簡単にラベル付け出来るほど単純なものではないわけですから、僕自身もそういった『ラベル付け脳』にならないように気をつけたいです。 Webを利用して良いもの作りたいという強い思いがある・・・これだけでも大きな共通点ですし、その思いを共有出来ることが何よりも大事なことなのかなと思います。これはプログラマー、デザイナーといった小さな枠だけではないです。この共通の思いをもっと広い範囲で共有出来たら良いですね。そのひとつの機会として今回の集まりは有意義でした。
