Keywordユーザビリティ

見た目と使いやすさの素敵な関係

2009年10月19日 11:17 am

Web は、受動的に「観覧する」というより、能動的に「利用する」という特色が強いです。それゆえ、高いユーザビリティが求められますし、試行錯誤を続けている方もいると思います。ユーザビリティを洗練させることで、より人に使ってもらえる (売り上げに貢献する) Web サイトになると考えがちです。極端な例だと Google がそうで、見た目はともかく使いやすいさ、使い心地を徹底的に追及しています。では、使いやすければ好感度も高く満足されるサイトなのかといえば、実はどうでもないようです。 Wichita State University にある Software Usability Research Laboratory で、サイトの見た目とユーザービリティの関連性について調査を行っており、その結果が Web サイトに公開されています。 Visual Appeal vs. Usability: Which One Influences User Perceptions of a Website More? (印刷に最適化されたものと PDF をダウンロード出来ます) 画像をたくさん使った見た目の良いサイトとそうでないサイト。ページのパターンやラベリングが明確になっている使いやすいサイトとそうでないサイトを用意。使う前と使った後の印象を数値化してまとめています。これによると、使いやすさに関係なく見た目が良いサイトに対して好印象を抱く傾向にあります。見た目が良くて使い難いサイトは、利用後のスコアが落ちているものの、使いやすくて見た目の良くないサイトより高いスコアになっています。 また、特定の情報を探す検索型とサイトの中を目的なく見て回る探索型と2種類のタスクに分けて調査も行っています。検索型のほうが使いやすさに敏感になるものの、それでも見た目が良いサイトに対して好印象をもつ傾向になります。特に第一印象が重要で、たとえユーザビリティが低くても好印象を保つことが出来ますし、探索型であればユーザビリティはそれほど気にならないようです。 では、ユーザビリティは見た目ほど重要でないといえば、そうではありません。結局、最もスコアが高かったサイトは見た目が良くて使いやすいサイトだったので、両方とも高い水準が必要とされます。また、テストケースに使っているサイトはかなり極端な例なので、バリエーションがあるとまた違う結果が出ると思います。ただ見た目が良いとは単に画像がたくさん使われているサイトとは言い切れません。使いやすいと思うサイトはたとえ画像が少なくて派手さはなくても、文字やレイアウトに秩序があったり、色の使い方に決まりがあって好印象です。このあたりのバランスは、パフォーマンスやデザインを考えるときに悩みますね。 予想通りな調査結果ですが、ひとつの参考資料になりそうです。 関連記事: 感性によるデザイン データによるデザイン

好ましいという感情と使いやすさの関係

2009年8月25日 7:36 pm

もう2年以上前の話になりますが京都で講演をしたとき、利用者に響くWebサイトにおける構成要素を幾つか紹介しました(スライドはこちら)。機能性や有用性のようなユーザビリティに関わる要素だけでなく、有意義や満足度といった感情に関わる要素も紹介しました。利用者へよい体験を提供したいと考えているのであれば、こうした感情的な要素は外せません。利用者にとって有益なコンテンツを提供しているかどうか判断する上でも感情的な部分はひとつの測定要素といえるでしょう。人間のもつ特性や要因を把握し、利用者に良いと思ってもらうようにデザインすることを「Desirability」と呼ぶことがあります。 あまり聞かない言葉ですが、Useful, Usable and Desirable: Usability as a Core Development Competenceという Desirability に関する記事をマイクロソフト社が公開しています。ユーザビリティへの影響力は非常に高く、気に入ってもらうことで多少使い難いサイトでも使い続けるといったケースも出てきます。ここでいう「気に入ってもらう」部分はビジュアルに大きく関わっており、美的センスが利用者にどう響くかによって、入り込み方も違ってくるでしょう。場合によってはユーザビリティに追求するあまり使うモチベーションが落ちることもありますし、見た目が使うモチベーションそのものということもあるでしょう。 では、ユーザビリティはユーザー体験を考えるにおいて Desirability ほど重要ではないといえば、そうではありません。ユーザビリティが Desirability に大きな影響を及ぼす場合があります。利用者は Webサイトが使い難くかったり、欲しい情報に行き届かなかったとき、サイトではなく操作が出来ない自分が悪いと考える場合があります。こうした感情を与えないためにもユーザビリティは軽視出来ません。使いやすいかではなく、楽しく楽に使えるかというのがユーザビリティと Desirability をバランスよく考慮する上で必要な視点といえるでしょう。この辺の考察はヤコブ博士が 2002年に公開した User Empowerment and the Fun Factor という記事が参考になります。 Desirability も測定する方法が既にあり、マイクロソフト社が Desirability Toolkit (.doc) という資料を公開しています(HTMLバージョン)。こちらは以前 UX を構成する要素と測定方法という記事でも紹介しましたが、リアクションカードはユーザーテストの際に盛り込めそうな方法のひとつです。Desirabilityという言葉を使うかどうかはどちらでも良いと思いますが、利用者のシンプルなリアクションから真意を読み取り、デザインに活かせるようにしたいですね。それが結果的に利用者にとって好ましい/望ましいサイトになるためのきっかけになると思います。

Bad Usability Calendar 2009

2009年1月29日 6:43 pm

Netlife Researchが、毎年ユーザビリティの観点でやってはいけない項目を「Bad Usability Calendar」というカレンダー形式でまとめています。2005年から続いており、2009年版も今月初めにリリースされました。年々、翻訳される言語が増えているのですが、今回は「LOLspeak」なんてちょっと変わった系統まで用意されています。 去年カレンダーを日本語訳したのですが、今年もやってみました。既に日本語版も PDF 形式でダウンロードすることが出来ます。今回は以前よりさらにウェブアプリケーション向けという印象があります。Tips だけでなく話の話題になりそうなトピックも扱っているのも良いですね。英語ですが、細かいキャプションとかちょっと笑えるところもあります(残念ながらそこまで翻訳出来なかった・・・)。 余談ですが、去年撮ったこの写真が、Bad Usability Calendar のフォトコンテストで入賞しました。この写真をはじめ、世界中の方が使っている様子をマップで見ることが出来ます。これはこれでおもしろいプロモーション方法かも。

iPhoneから学ぶユーザビリティの極意

2008年12月5日 3:41 pm

iPhoneは、今までとは少し違った使い方や考え方を必要とするデバイスです。Appleらしい使いやすくするための工夫が随所見られますが、だからと言って万人受けするわけでもありませんし、僕のような Mac 使いとそうでない方とでは iPhone の捉え方は随分違います。Create with Contextはデザインリサーチを行っている会社で、iPhone 3G が発売された夏頃に iPhone のユーザーテストを行ったそうです。その結果は SlideShare に掲載されている「How people really use the iPhone」で読むことが出来ます。 iPhoneを聞いたことあるけどほとんど触ったことない方や、聞いたことなくて初めて使う方など、僕のようなヘビーユーザー以外を対象に行われたこの調査。タスク別に調査やインタビューも行われており、iPhoneのインターフェイスで具体的にどの部分で利用者が『躓いた』のかが分かります。シンプルで分かりやすいと思っていたアイコンも、実はそうでもないなと気付かされる部分も少なくありません。 スライドの終盤には、iPhoneアプリケーションを開発する際に気をつけておきたいこと8項目が紹介されています。以下がその意訳です。 習得した操作方法を利活用する インタラクションを一定に保つ 複数のウィジェットにも統一感のあるコンセプトをもつ アクションウィジェットは間隔を置いて配置する 不慮な操作時のときのことも考える マルチタッチに頼りすぎない タップ時に視覚的に分かる効果を加える アフォーダンスのあるインタラクションを提供する 上記の項目を見ても分かる通り、iPhoneアプリ開発だけでなく、ウェブサイト制作全般にもいえることが少なくありません。特に「不慮な操作時のときのことも考える」というのは重要ですね。たくさんユーザーテストをしたり、UIを模索しても、来訪者すべてにとって使いやすいサイトを作るのは不可能ですし、利用者も勘違いや単純なクリックミスによって求めていない場所へ移動してしまったり、エラーを出してしまうことはあります。人間なのでそういったミスが出てしまうのは当然です。そういった際に、どう軌道修正してやり直したり改善出来るのかを知らせてあげるための設計が必要でしょう。 洗練されていると言われている Apple のアイコンもすべてがクリックした時の次のアクションを伝えているものではありません。アイコンで表現したコマンドと、利用者がアイコンをみて想像したアクションとの違いが「驚き」や「躓き」に繋がってしまうこともあります。コマンドを単に視覚化するのではなく、コマンドを選択した時に何が起こるのかを視覚化することにも注目したほうが良いかもしれませんね。

年々検索されなくなっているユーザビリティ

2008年9月29日 5:19 pm

検索語を比較・解析する Google Trends というのがありますが、それとは別で Google Insights というツールがあります。地域・時間枠などで検索語の傾向を調査出来るのが特徴です。ウェブマーケティングに役立ちそうなツールですが、検索をする人たちの趣向と自分の興味がどれだけマッチしているのか確かめるのにも使えそうです。 試しに「interaction design」「web analytics」「information architecture」「usability」というウェブサイト制作において重要なキーワードを入力してみました。以下がその結果になります。世界全体で調べた比較グラフ 日本語で同じように書くと違う結果になるかもしれないと思い、今度は「インタラクション」「サイト解析」「情報構造」「ユーザビリティ」と入力して調べてみました。以下がその結果になります。日本語で調べた比較グラフ 全体的な傾向は国内外それほど変わりませんね。特に興味深いのが年々 Usability / ユーザビリティの検索数が減ってきているという点でしょうか。検索する人たちは年々ユーザビリティに興味を失っているのか、それともユーザビリティのエキスパートは Google を使って検索しなくなってきているのか、ユーザビリティという言葉を使わずユーザビリティに関連した詳細なキーワードを使うようになってきたのか・・・このグラフを見ただけでは答えより疑問のほうが増えてしまいそうですが、興味深い傾向だと思います。 ユーザビリティはウェブサイトデザインよりずっと前から存在しています。「観覧するウェブ」から「使うウェブ」に移行し始めている近年において、ユーザビリティはさらに重要なポジションにあると思いますが、それは一概に検索語の数には反映されていないようです。検索数が少ないひとつの理由は、ユーザービリティは知識やノウハウを共有しにくいからかもしれません。例えばCSSと比較すると圧倒的な違いですし、CSSに関する記事は年々増えているようです。CSSのようなマークアップやプログラム言語はコードを書くという行為で、ある一定のレベルを保ちつつ共有することが出来ます。CSSに関していえば、ビジュアルで表現出来るので分かりやすいという部分もあると思います。 分かり難いという点は、ユーザビリティだけでなく概念としてのデザインアプローチすべてにいえる課題でしょうね。分かり難いからこそ、多くの人と意見や感想を述べて共有したい部分でもあります。すべてが密接に繋がり合ってサイトが出来上がっているわけですから、様々な視点でユーザビリティをはじめとしたウェブ用語を検証していきたいなと思う今日この頃。

About

東京在住の「デザインする人」長谷川恭久の個人サイトです。

2008年2月より、新しい CMS を利用して再スタートしました。以前の記事はこちらのエントリーリストを。そして、たくさんの方に読まれた人気記事が読みたい方ははてなブックマークの注目エントリーを参考にしてください。

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  • 百十番: >その価値をいかにマネタイズするのかが今後の課題ですが 、 この話は、もう10年以上語られていますが今だに巧妙は見えず、 ジャーナリズムの衰退には逆に拍車が掛かっていると思います。 >硬派な分野では...
  • ヤスヒサ: @techforlearning 教育とソーシャルメディアの相性は良さそうですね。日本ではブー ムがすっかり去ってしまった Second Life ですが、海外では遠く離れた学校間のコミュニケーションの場とし て...
  • techforlearning: こんにちは。いつもYasuhisaさんの示唆に満ちたエントリ 、勉強になっています。私は学校サイトの運営をしていることから 、WebsaYoutube, Twitter, Facebook,...
  • just a reader: 元ネタからこのような意図でこのように改変します。というこの記 事そのものがよいレクチャーとなる記事です。できあがった結果よ りも、このように直すこともできますよという思考プロセス...
  • ヤスヒサ: @CalmTech プレゼンといってもスライドと喋りでワンセットなので、いろいろ な見せ方があると思いますし、今回紹介したのもそのうちのひとつ に過ぎないと思います。CalmTechさんが提案してい...