今週リリースされた Chrome のように JavaScript や HTML5 レンダリングを実現することが出来る IE 向けプラグイン、Chrome Frame。プラグインをインストールしているブラウザのみ認識するたった一行の meta を記入するだけなので、制作者にもやさしい仕組みになっています。Techcrunch あたりでは、「笑える」「スマート爆弾」だとおもしろおかしく Chrome Frame を表現していますし、「IE を乗っ取った」と書いている方も見かけますが、個人的にこれは素晴らしいデザインソリューションとして見ています。 まず、構造からして「乗っ取り」ではなく、利用者を意識した配慮がなされています。Chrome Frame は Browser Helper Object (つまり IE 公式の仕組み) として提供されており、IE の Cookie、履歴、パスワードもそのまま継承されます。つまり、Chrome Frame をインストールした後、Webサービスへ再ログインや情報の再記入をする必要がなく、今まで通りに使えます。また、User Agent も「chromeframe」という文字列が追加されている以外は IE として認識されるので IE 向けのサイトも今までどおり利用することが出来ます。技術的な詳しい解説を読みたい方は More technical details about Google Chrome Frame という記事が参考になります。 以前 IE6から先へ行くための提案が必要という記事で書いたように、IE6 を利用している方は他に選択が与えられていない場合が多いと思います。IE6 が使いたいというよりかは IE6 以外使えない環境にいるといっていいでしょう。企業で一斉に IE6 からアップグレードするには時間とコストがかかります。しかし、Chrome Frame のようなプラグインのインストールならどうでしょうか。もちろん、企業によっては一切ソフトウェアを社員にインストールさせない所もありますが、IE という OS との親和性が高いブラウザをアップグレードするよりかはプラグインのインストールのほうがはるかにコストは低く早い実装も出来るのではないでしょうか。また、使い心地はページの表示スピードが若干上がる以外は IE と全く変わりないので利用者側も自然に使うことが出来ると思います。 Wave を IE で動作させたいなど、Google としての思惑はいろいろあるのでしょう。しかし Chrome Frame は、いちはやく多くの方に Web のもつ可能性を「今」提供するという意味ではひとつのソリューションといえると思います。アップグレードが出来ない人に何が出来るか、どのような技術で提供出来るのか、利用者に違和感を与えない手段は何かといった配慮がなされているわけですから「爆弾」というよりかは「はしご」に近いと思います。
ブラウザ
Chrome Frame はひとつのソリューション
2009年9月25日 11:37 amOpera Japan のパネルディスカッションに参加しました
2009年8月10日 2:55 am数日前の話になりますが、Opera Japan にて社員向けのパネルディスカッションが開催され、スピーカーとして招待されました。林 信行さん、ミツエーリンクスの木達さんに並んで一緒に話すことが出来て恐縮でしたが、こんな機会はまずないので楽しんで参りました。Opera が示すことが出来る日本のプレゼンスに関するディスカッションもありましたが、Opera というひとつのブラウザに捕われない大きな話もありました。 HTML5 がこれからWebアプリケーションにどのような影響を及ぼすのか、そして使える環境が整えられ始めている現在においてデザイナーや開発者はどのような姿勢をとっているかといった話は多くの時間を費やしました。ジャーナリストから見た視点、大規模の Web サイト制作会社の視点、そしてひとりの Web デザイナーの視点がそれぞれあり、興味深い展開でした。どの視点をとっても「なぜ」HTML5 や CSS3 を使うのかではなく「いつ」「どのように」のほうが課題という印象がしました。Progressive Enhancement の意識調査と共通していえることですが、作る側が重要性を理解していても、クライアントや利用者に対しての提案の仕方が模索されきれていないのが現状です。このあたりがクリアになることで導入サイトの増え方も変わってくるでしょうね。 また、技術視点での提案ではなく利用者視点の提案も必要です。DHTML や Ajax が流行った時期もそうでしたが、無闇に技術が使われたサイトはたくさん登場しました。これはきっと HTML5 だけでなく @font-face でも同じようなことが起こると思います。多くのサイトが『間違い』をすることで結果的に他のサイトが洗練されてくわけですが、デザイナーとして技術視点ではない良い提案が出来ると良いなと思っています。 Opera というブランドに捕われないで自由な Web 話をするのは楽しいですが、ディスカッション中に「Opera はノルウェー的な部分があるのか?」という質問を投げてみました。Safari や Chrome はアメリカを象徴しているわけではありませんが、開発している会社を象徴しているソフトウェアになっていると思います。同様に Opera も企業の性格やノルウェー的な部分があるのかなとふと思いました。ノルウェーの方だけでなく、スウェーデンの方や他のヨーロッパ諸国の方もいたので見解を聞くには良い機会かなと。 ひとつ出て来た返答の中で興味深かったのが、Opera はヨーロッパ的な部分があるかもしれないという意見でした。すべてのヨーロッパ人にいえるわけではありませんが、多くの人は原則、信条、倫理的な部分を何よりも重んじるとのことでした。確かに Opera はオープンフォーマットのサポートを強調している印象がありますし、オープン Web の思想と直結している機能が多いですね。強い姿勢が時に様々な機能を他のブラウザよりいち早く導入する要因になっていると思いますし、逆にシェアが増えない理由になっているのかもしれません。 もちろん、文化や思想ですべてを語ることが出来ませんが、Web という範囲に限定して語ることは難しいことが多いと思います。ブラウザもそうですし、Web デザインでも言えることです。 英語でのディスカッションだったので少し大変でしたが、あっという間に時間が過ぎてしまいましたね。社外から人を招待してディスカッションが出来る Opera Japan はスゴいなと思いましたし、こうした機会を与えてくださったことに感謝しています。現在を踏まえた未来を語るのは楽しいですね。
IE6から先へ行くための提案が必要
2009年7月20日 2:02 amYouTubeやDiggといった海外でアクセスの多いサイトが次々と IE6 のサポートを中止する動きを見せています。YouTube は他のブラウザに変更するメッセージの表示以外に具体的にどのようなサポートを止めるのかが分かりませんが、Digg では、コメントや Digg ボタンといったサイトのコア機能のサポートを止めることを考えているそうです。このニュースに影響されたのか、Twitter では、「IE6 Must Die」が、トレンドトピックにランクインしましたし、Twibbonを使った運動も展開されています。 ここ数年ほど、私は最新のブラウザで作りたい形を組み立てて行き、IE6 での表示をどう調整するかという進め方にしていますが、提案したいアプローチが場合によって IE6 では厳しい場合があります。JavaScript を使えば擬似的に CSS2.1 CSS3 のセレクタが使えるとはいえ、レイアウトによって別の不具合が発生する場合もあり、万能ではありません。IE6 を他の最新ブラウザと見た目を同じにするという所謂俗説に挑戦するために多くの調整時間やクライアントのお金を費やすのが果たして正しいのかどうかというところでしょうね。 IE6 Users Must Die であってはならない 私も IE6 だけのために多くの時間を費やしたくないですし、早くなくなってもらいたいと思っている一人ですが、最近の「IE6 Must Die」のキャンペーン (?) は向けている相手が違うような気がします。「IE6 Must Die」というメッセージは、IE6 という古いブラウザだけでなく、IE6 ユーザーまで一緒にしてしまいそうなイメージがあるからです。 Digg のブログにある「Much Ado About IE6」という記事には IE6 ユーザーがなぜ IE6 を使い続けているのかというアンケートの結果を掲載していますが、8割近くの方が IE6 以外のチョイスを与えられていない方達です。職場のパソコンは様々な制限がかけられている場合が多く、自宅のパソコンのように Windows Update を選択したら一発で IE8 に変わるというほど簡単にはいかないわけです。また、ブラウザの存在があやふやである場合もあり、突然「ブラウザが古いですよ」と言われてもピンと来ないこともあります。IE6 はなくなって欲しいですが、IE6 ユーザーに使うのを止めようと呼びかけるのはナンセンスですし、イジメに近いものがありますね。 機能以外の提案が必要 社内のネットワーク管理部署がなかなか腰を上げないからかもしれません。移行のための予算を付けることが出来ないからかもしれません。また、企業が利用しているソフトウェアが IE6 専用で作られている可能性もあります。これからも IE6 でもコンテンツの観覧というベーシックな部分は制作者が確保していかなくてはならない保証ですが、IE6 を利用している方にではなく、変えることが出来る層へ向けての提案が幾つか必要とされるでしょう。 まず最初に考えられる提案といえばセキュリティです。簡単な JavaScript を書き込むだけで IE6 を強制終了させることが出来るわけですから、非常に不安定です。セキュリティだけでなくサポート状況も考慮対象になるでしょう。ビジネス向けでれば合計10年間のサポートがありますが、IE6 がリリースされて8年が過ぎ去っていますし、サポート対象外になる日は刻々と近づいています。 新しいブラウザには様々な機能や技術が実装されていますが、それを見てドキドキするのは制作者のみです。それらを使って具体的にどのようなメリットが発生するのかといった例が必要とされています。移行に時間とお金がかかったとしても、移行後大きく生産性を上げる可能性があります。IE6 縛りのアプリケーションを使っていたとしても、類似のウェブアプリケーションに変更するだけで随分使い勝手が向上する場合もあります。 提案の仕方を工夫してみる 制作視点であれば サポートの意味を明確にする IE6 だけでなく、より多くの方が情報へアクセス出来る保証をする 最新のブラウザに対しては最高の体験を提供する クライアントとコミュニケーションをとる際には セキュリティの懸念 今のウェブの使われ方に関するアドバイス 仕事のワークフローに合ったウェブソリューションの提案 別ブラウザの使い方 すぐにはなくならないでしょうし、Netscape がそうであったように息の長いブラウザとして残り続けるでしょう。しかし、いつまでも待ち続ける必要はないと思います。個人サイトからでも良いので、積極的な模索をしていくのも良いでしょうし、そこから仕事に繋がる提案が見つかるときがあります。IE6 なんて死んじゃえと盛り上がるのは楽しいですが、使っている方達に建設的な橋渡しをするのも私たちの役割だと思います。大手サイトが IE6 のサポートを止めるというニュースはひとつのキッカケにはなります。そして、Microsfot が積極的に IE のアップグレードを繰り替えているのも良い動きです。こうした『材料』を使いながら IE6 からアップグレードしてもらうように助言していきたいです。
ユーザーが考えるブラウザの未来
2009年7月10日 3:18 pmMozilla は去年からコンセプトサイトで未来のウェブの使い方の提案をしています。セミナーでも紹介したことがある、Adaptive Path の Aurora が有名ですね。コンセプトサイトだけでなく、Flickr の mozconcept というタグから、利用者が提案した様々なコンセプトデザインを観覧することが出来ます。 利用者が考えた優秀なコンセプトデザインが見たい方は、Design Challenge: Summer 09 がオススメです。120以上のアイデアが提案されており、モックアップ、スケッチ、ビデオなど説明の方法も様々です。Firefox をベースにしたものが多く、履歴やブックマークの新しい管理方法。タブとは異なる複数同時ブラウジングの可能性を示しているものが人気トピックですね。ここまでやるか!と思えるような作り込みがされているコンセプトも少なくありません。 全体的に、新たな管理作業が加わる印象が多い機能が目につきますね。それがタブであったり、ブックマークのメタ情報であったりと様々ですが、手動であれば使われない機能になるかもしれません。利用者が何もインプットしなくても管理されている必要があるでしょうし、利用者の使い方を学習しれると嬉しいですね。今ブラウジングしているサイトのコンテキストに応じてブックマークバーの内容が変わるとか。 こうしてたくさんの、アイデアが並んでいると「あ、こんなのおもしろくない?」という思いに繋がりますね。たまにモックアップ作っていますが、また今度挑戦しようと思います。
ブラウザは知るべき存在だと思う
2009年6月23日 12:15 pmこの記事は「ブラウザって何ですか?」の続きにあたります。 @zerobase「誰がインタビューを実施し、結果を公表したか(その意図は何か)」への批判的な考察も書かれたほうがよいかも > "回答者の多くの方が「ブラウザ=検索」という認識を持っているみたいですね" ぜひ石橋さんの意見を伺いたいところですが、私もほうも肯定的に「ブラウザは見えない存在になっているのね。良かったね!」と考えているわけではありません。 利用者がウェブから取得したデータをどのようにブラウザで表示されるかどうかといった仕組みは知る必要はありません。ただし、ブラウザが分からないとなると、セキュリティへの理解も低いのではないかという懸念もあります。特別な知識やセキュリティソフトがなくても、ブラウザという窓口を利用しているのだと理解しているだけで予防出来ることは少なくありません。例えば、アドレスバーの URL を見るとことを意識するだけでも違うでしょう。SSLのサインが表示されているか確認することも重要です。 また、アクセシビリティやユーザビリティの側面からも、ブラウザという存在を知るか知らないかで違いが出てきます。今は随分少なくなってきましたが、サイト内に文字サイズを変更出来る UI が一時期流行したことがありました。文字の大きさを変える機能がブラウザに実装されているにも関わらず、こうした UI が流行したのは、サイトの制作の方針やブラウザのサポート状況による結果だとは思いますが、それでも既にあるものをわざわざサイトのほうでも作るのは非効率でしょう。他にもブラウザがもつちょっとした機能を理解することでサイトのナビゲートが簡単に行えることもあります。利用者の「使い難い」はブラウザの機能を利用することで補助出来ることは少なくありません。 最近のブラウザはセキュリティ面に関しては分かりやすい UI を採用することによって、様々な情報を視覚的に示すようになってきています。例えばフィッシングサイトであれば、警告サインが表示されますし、安全なサイトかどうかもアドレスバーの色が変わるといった見せ方もあります。今後、様々な工夫がブラウザのインターフェイスになされるとは思いますが、すべての機能や可能性を表に出せるわけではありません。 車を運転している人は、メーカーは知っているかもしれませんが、何年のどのモデルなのか覚えている人は少ないですし、カスタマイズしている方はごくわずかです。しかし、どの車に乗っていても、快適に運転が出来ます。なぜなら車を運転するための基本的な知識があるからです。ただ、アクセルを踏めばスピードが上がり、ギアを変えれば後ろに進むといった操縦法ではなく、とっさな状況判断や視野の確認が良い運転に必要とされます。 ブラウザも、車と同様「戻る」「進む」といった基本操作以上のことを知ることで、安全かつ快適にインターネットを楽しむことが出来る思います。IEでもFirefoxでも好きなものを使えば良いと思いますが、ブラウザというソフトウェアを使っているという意識は多少なりとも必要だと思います。
