コラボレーションによるデザイン

写真去年の暮れからデザイン全般に関する話題を幾つか書いてきましたが、先週Business Week に掲載された「Masters of Collaboration」という記事は今まで書いて来たことにリンクしているような気がして共感する内容でした。この記事で印象的だった言葉は「スターデザイナーはいらない」「大きなチームはイノベーションの妨げになる」の2つ。21世紀的なWebデザインプロセスはこの2つの言葉に象徴されていると思います。

これからのデザインプロセス


Webデザインは大変複雑なプロセスが含まれています。ここでいう複雑というのは技術的こともそうですが、人とWebサイトの関わり方、Webサイトが表示されているハードウェアとの関わり方、Webサイトを介して行われる人と人とのコミュニケーションといったインタラクションにおける複雑さのことを指します。プロダクトや建築と同様、使い手によって様々な形に姿を変えますし、生活に密着したものといえるでしょう。

もしそのWebサイトがプロモーションとしての要素が強いのであれば、アートディレクターやデザイナーと呼ばれる人たちが作り出す世界観を再現することに力を注いだほうが良いのでしょうけど、すべての Webサイトでそういった手法で行うのは厳しいと思います。特に多くの方に利用してもらったり、生活の向上に役立つものを作っているのであれば、なおさらです。ひとりかふたりのデザイナーが「これが良い」と思うものをそのまま形にしただけでは、恐らくそのデザインには使い手との間に何かしらのギャップがあるような気がします。

生活に密着しているからこそ、Webデザインは単に見た目が美しいものを作るという部分だけにデザインを見出してはいけないのではないでしょうか。むしろ「美しいもの=デザイン」という関連付けも時代遅れの考え方のような気がします。当然のことながら見た目は重要ですし、Webサイトの見た目を美しくすることを軽視しているわけではありません。ただ、単に見た目が美しいだけでは、生活の向上にはならないわけです。そこには見た目以外のシステマチックなアイデアや技術、そして注意深い観察が盛り込まれているはずで、その上に美しい見た目が組合わさってはじめてデザインになると思います。

つまり、スターデザイナーと呼ばれている方のビジョンを形にするだけでは、利用する方の生活に良い影響を与えるデザインを作り上げるのは大変難しいわけです。肩書きがデザイナーと呼ばれてるひとたちだけでなく、チーム全員がデザインをしているという意識がこれからのデザインプロセスに不可欠なのかもしれません。

今だからこそ小さなチーム


つまりデザインするという行為が、ごく少数の方達のビジョンによって形になるのではなく、視点が異なる複数人によるプロセスによって形になるというものになってきているといえます。心はゼネラリストでいたいという記事で紹介したT字型人間が、これからのデザインプロセスにおいて重要な役割を果たすでしょうし、方向修正をしながら形作っていく柔軟性とスピードのある体勢も必要になってくるでしょう。

Business Week の記事でも指摘されていますが、大多数に流通させなくてはならないマスプロダクトを生産するには大きなチームは必要です。しかし、Webのように動きが速く利用者とのコミュニケーションを直で行える環境では、大きなチームで仕事をするより、小さなチームのほうが効率的かつ利用者の声を反映しやすいです。「Webデザインに終わりは無い」と言いますが、人の生活に密着したデザインは他の分野でも終わりが無いような気がします。

大きなチームだとプロセスがシステマチックになり過ぎることもあり、利用者とのコミュニケーションの仕方もシステマチックになりがちです。利用者にせよクライアントにせよ形式的なコミュニケーションではなく、有機的かつ密に行うには小さなチームのほうが動きやすいでしょうし、微調整も測りやすいと思います。

長い道のりかもしれませんが、コミュニケーションやプロセスを踏むことで、ひとりのスターデザイナーだけでは思いつかないような、人の生活を良くする素晴らしいデザインが生まれるような気がします。どのようなものをデザインするかによりますが、サイトへ訪れる方のために作っているのであれば、これからますます重要になってくる部分だと思います。
コメントを書く