Web 2.0デザイン汚染に立ち向かう

2005年2月という少々早い時期に2.0が付く書籍を書いた私がこんなことを書くのはどうかと思いますが、本当に何が 2.0 なんでしょうね。最近のティム・オライリー、伊藤穣一の対談パネルディスカッション、そして私個人もいろいろ思うところはあるわけですが、結局のところ意味なんてどうでもよくて、儲けに繋がる言葉であれば何でも良かったという感じがします。最近始まったことではないですが、書店へ行ってIT関連のセクションへ行けば、必ずといっていいほど「儲かる」か「稼ぐ」のような言葉が見受けられますよね。なんかスパムフォルダーならぬスパム本棚みたいです。Web 2.0 もそういった言葉に繋がる関連キーワードみたいな位置付けなのかもしれません。

ビジネスをしていく以上、稼かなくてはならないですし、稼ぐことは重要なことだと思います。また、ここで「Web 2.0 はこういうものである!それ以外は解釈がちょっとおかしい。」と語ることも意味がないことだと思います。Web 2.0 のもつ意味はそれぞれ異なっていても良いでしょうし、誰もが議論に参加出来る環境があるからネットは素晴らしい場所だと思いますしね。儲かる言葉と見なされるようになったのも、それだけ影響力があったからともいえます。ただ、このWeb 2.0という言葉で引っかかるのが、なぜかこの言葉がビジュアルデザインにも影響しているところです。

IT用語辞典のWeb 2.0の意味Wikipediaの記事をみると、技術的な言葉や様々なキーワードがちりばめられていますが、ビジュアルデザインについては何も供述はありません。つまり、Webデザインは見た目ではなくコンセプトです。しかし、今や国内外問わずここに書かれているビジュアルをもったサイトが溢れかえっています。私が仕事させていただいているクライアントにはいませんが、「Web 2.0的なサイトを作れますか?」なんて言葉を耳にしたことがあります。

実際、その漠然と存在する Web 2.0 サイト構築のニーズは就職サイトをみても分かります。デューダエンジャパンジョブダイレクトイーキャリア仁王で、それぞれ「Web 2.0」と検索すると、およそ5件〜10件くらいの結果がかえってきます。また、Find Job では「今が旬!Web2.0な仕事特集」というのがあります。


これはバックエンド側にもいえることでしょうけど、テンプレートや流行っているものをはめ込むだけで作るサイトが果たして Web 2.0 なのかと疑問に感じますし、そもそもそこにデザインというものがあるのだろうかと感じてしまいます。もちろん、流行を追うことで良い結果を生む場合もありますが、サイトが本当に打ち出したいアイデンティティを打ち消すこともあります。情報、機能、感情といった見えにくい『何か』を形にするのがデザインでしょうし、形にする方法はケースバイケースで異なるはずです。

こういった状況を作っている原因はいくつかあると思いますが、私も含めてWebサイトを作っている人間に責任は多少なりともあるのではないでしょうか。「あぁ。いかにもって感じだよね。」というサイトデザインを大量にリリースしたことで「Web 2.0 っぽい見た目」という意味のない言葉が当たり前のように使われるようになったわけですし、コンセプトを理解出来ないまま見た目だけ先攻することが、結果的に Web 2.0 という言葉そのものが儲かる言葉に『成り下がっている』と感じることもあります。

必要であれば、上記のブログで紹介されているビジュアルを採用するのは良いと思いますし、流行っているから採用しないというのは極端な考え方だと思います。どういったビジュアルにするにせよ、コンセプトをよく考えたり、クライアントとコミュニケーションをとって、その結果出た答えであるべきです。Web 2.0 のサイトだからこういうのと関連付けているのであれば、クリエイティブを狭めているのと変わりありません。アブストラクトな形で宙に浮いている何かをつかみ取り、最善だと思われる形として提案出来るからこそデザイナーという専門職についているのではないでしょうか。

私がそのデザイナーとしての仕事を毎日完璧にこなしているかといえば、そうとは言えないでしょう。ベストは尽くしているつもりではありますが、Web 2.0デザイン汚染に加担した人間のひとりといえると思います。ただ、この汚染を止めることは出来ると信じていますし、Webデザインの価値を高める良い機会になりうるのではないかと考えています。

まず、Web 2.0 というのは見た目ではなくコンセプトであるということの理解を深めてもらうためにコミュニケーションが必要になってくるでしょう。その理解の中でサイトを構築することが、テンプレート的なものではなく、クライアントと利用者に満足してもらえるデザインの仕事になるのではないでしょうか。そういったサイトをデザインすることは大変難しいことではありますが、専門職として仕事をしている意味はそこにあるでしょうし、他の分野にはまだまだ劣りますが、Webデザインも徐々に成熟していくのではないかと思います。
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