CSS Nite LP7 で IA に関する講演をしました

2009年9月12日ベルサール神田にて CSS Nite LP, Disk 7 では、IA とコンテクストという2つのテーマから、今後 Web デザインで何を意識したら良いのかを講演しました。

CSS Nite LP7 の模様撮影: 飯田昌之

2009年9月12日ベルサール神田にて CSS Nite LP, Disk 7「IAスペシャル」が開催されてました。IA を語るならこの人と呼ばれる方々から様々な視点の IA を聞くことが出来ました。6時間という長丁場で、しかも相当量の情報があったと思うので消化するのは少し時間がかかるかと思いますが、既に たくさんの方 が、レポート&感想を書いています。

私はイベントの一番最後に「IAからWebサイトデザインへの突破口」という題名でプレゼンを行いしました。長丁場の終盤だったので来場者の多くは疲れていたと思います。そんな中で漠然とした内容のプレゼンを聞いても頭にピンと来なかった方も多かったのではないかと心配していますし、伝える力が足りなかったのではないかと反省しています。幸い Twitter 上では、プレゼン力に高い評価を頂き大変感謝をしています。今回、出演されている他の方々と同じ場所で話すということ。そして一番最後ということでプレッシャーもありましたが、それゆえプレゼンには細心の注意を払って当日に挑みました。

それが結果に繋がったのは良かったですが、プレゼンのインパクトだけが残って内容が残らなかったのではないか、思惑(テーマ)が来場者にきちんと行き届いたのかが分からない講演になってしまったのが私の反省点です。

実は共有知識になっていないという事実

私のセッションだけでなく他にもいえることですが、今回は IA の基礎的な内容が大半を占めていました。特に私の講演は IA から少し広げた展開であったこともあり、「当たり前のこと」のように思える内容が多くを占めていたかもしれません。つまり、IA の基礎は分かっていて、もっと深いところを知りたいという方とって、物足りない内容と感じたと思います。

聞いている自分自身は分かっていると思います。しかし、それが同僚、上司、会社、そしてクライアントという様々なレイヤーでどのようにその「分かっている」ことが捉えられているのでしょうか。私は IA はもちろんのこと、Webデザインという言葉も含めて多くのことは共有されていないと思っています。「それは Web サイト構築において当たり前」と思っていることは他の方にとっては当たり前でもない場合がありますし、当たり前と考えていたとしても捉え方は異なることもあります。

私が講演のキーワードとして Context (文脈) を選んだのは、IA に関わる重要なキーワードであると同時に、私たちの仕事におけるコンテクストはどうなのかというのを振り返ってもらいたいというメッセージがありました。「これのデザイン考えておいてくれないか?」という何気ない言葉にしても、捉え方の幅があまりにも広いです。今イベントに参加された方にはない考え方ですが、IA がワイヤーフレームを描くことと捉えるのも、作る人や指示する人の IA の捉え方の違いから発生しているミスコミュニケーションといえるでしょう。

Webサイトデザインという、とても小さな領域でも共有されていないことは多いです。しかし、利用者のストーリーを描くことで自分のデザインの裏付けを明確にしたり、パターン UI やオープンスタンダードという名の共有言語を利用することで、制作側の共有しているものが深いものとなり、制作過程もスムーズなものになります。

もしコンテクストが完全に共有されているのであれば、企画書もペルソナもワイヤーフレームも何もいらないわけです。いきなり作ってしまえば良いと思います。しかし、自分のコピーが揃っていない限りそんなことは現実にあり得ません。制作過程の何処かで必ずギャップであったり捉え方の違いが生じます。それが何なのかを把握し、ミスコミュニケーションを防ぐにはどの方法が最適なのかを探り、手間と思っても作る必要があります。企画書もペルソナもワイヤーフレームもミスコミュニケーションを事前に防ぐ(もしくはコンテクストを共有する)ツールです。適材適所に使うものであって、必須項目ではないと思います (様々な人が制作に関わるので結果的に必須になっているものは少なくないですが)。

日本語だからという難しさ

今年に入ってコンテンツに関するプレゼン記事を書いています。コンテンツについて突き詰めれば突き詰めるほど日本語や日本人の考え方について知りたくなり、関連書籍を読んだりしています。日本語はとてもハイコンテクストな言語といわれており、それが「分かっている、当たり前」という前提を作り出し、ミスコミュニケーションに繋がっている可能性もあると思います。

欧米言語をはじめ、多くの言語は言葉に主語を必要としていますが、日本語は主語の欠落が許される言語です。主語の欠落により独特の表現が生まれ、それが日本文学の豊かさにも繋がることもありますが、それと同時に主語を必要とする言語に比べ客観的な視点が表現しにくい言語でもあります。また、ウチとソトという見えない領域が何層か存在し、ウチにある文脈を予め理解していることで初めて伝わる文章構成も存在します。

こうした日本語特有の言語の成り立ち方が、私たち日本人の考え方にも多少なりとも影響しているのではないでしょうか。もちろん、ミスコミュニケーションは他の国でも当然あります。しかし、前提を共有していると思い込んで話を進めてしまう傾向は言語の特性がゆえに多く発生するのではないかと思います。自分たちは同じ Web サイトを制作しているというウチの関係が成り立っているから、省いてしまっていることがあるかもしれません。それが時には「なんで知らないの?」「当たり前じゃん」みたいな言葉にもなるのでしょう。ウチとソトを意識しすぎてしまうが故に、隣と同じしないといけないという不安や、疎外感が強くなってしまうこともあります。

私のセッションは「分かっている」「当たり前」だらけでした。しかし、それが他の方にとってそうではないことを理解しなければならないですし、どのような捉え方をしているのかを確認するという意味でも意見交換することは重要なプロセスだと思います。 IA にしてもそうです。視点はそれぞれですし、IA を成果物に反映させるためのアプローチは様々です。社内やチーム内での文脈を見つけ出し、そのなかで導き出される IA を探すことが今後のミッションとなるでしょう。

当たり前を共有して、サイトを作る。当たり前を自然に利用者に受け入れてもらって快適に利用してもらう・・・それが Web デザインにおけるひとつの課題であり難しい部分ではないでしょうか。

今回はダウンロードだけでなく、SlideShare にも公開されているので、興味がある方はぜひご覧になってください。

ダウンロード: cssnite-lp7.pdf (PDF形式 13.25MB) Creative Commons License

筆者について

Experience Points

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