評価と効果で見えなくなりがちなデザインの価値

日常から切り離されたワークショップを行うことで、デザイナーとして本来しなければならない正解を求めない「発散」、相手を評価しない「共有」を実践していきたいです。

先週末、大人向けワークショップ deCAFE に参加してきました。昨年にも一度参加したことがあって、今回で 2 回目。今回はワークショップではなく過去を振り返りながらお喋りをする会でしたが、運営メンバーにイベントの意図や裏話を聞くことができて大変楽しかったです。

運営チームの方々は Web や IT 業界働くデザイナーがメインですが、ワークショップの内容はそこからかけ離れたテーマを扱っています。テーマの抽象度が高いことから、具体的に「◯◯を学んだ」とは言い表せないものの、他のイベントでは得ることができない何かを掴むことができます。

最近は数十分話すセミナーよりワークショップが多くなってきていますが、自分のワークショップにも何か取り入れるものがあるかもしれないという好奇心が参加のキッカケでした。前回と今回の参加を通して、漠然としていた deCAFE で得れた「何か」を鮮明にすることができました。それは、今 Web やアプリという枠組みで働くデザイナーに少なくなってきている要素ではないかと思いました。

評価がデザインを殺すとき

近年、クリエイティブと呼ばれる場でも「評価」「効果」という言葉がついてまわります。様々な制作物が売り上げ、滞在時間、コンバージョンなどといった数字によって評価されます。課題解決のためにデザインがあるのであれば、本当に効果があったのか測るべきでしょうし、次に繋げるための評価も不可欠です。

世に出たデザインに対して評価することは良いと思いますが、プロセスにまで「評価される」「効果はどうか」といった考え方が入ってくるとデザインするための思考が停止してしまう恐れがあります。

デザインプロセスには「発散」「模索」という、とにかくアウトプットするという段階があります。学生だったとき、ロゴデザインをする前に 50 〜 100 のラフスケッチを描く練習を何度かしましたが、頭の中にアイデアを閉じ込めないで書き出すことが重要だということを教わりました。最初から正解を求めようとせず、まず様々な可能性を見たり試したりすることは、洗練されたものを生み出すために必要なことです。

しかし、そんな模索の段階で「評価」や「効果」を意識し過ぎるとどうなるでしょう。早く正解を出さなければいけないという意識が、問題解決の可能性を狭めてしまう恐れがあります。また、他人からの評価を気にしすぎてアウトプットすることすらできなくなることもあります。模索の段階なのにもかかわらず「これはダメだ」といった評価が飛び交う環境だと、ますますデザイナーのアウトプットは消極的なものになるでしょう。

ワークショップをしていると、今のデザイナーが抱えている最初から正解を求めようとする思考を転換させるのに苦労する方を見かけることがあります。自由にアイデアを出してみましょうと指示しても、評価されること、効果の出るものを最初から考えようとしてしまい、なかなか手が動かせない人がいます。「評価」や「効果」を意識して仕事しているなかで、それらを意識しなくても良いと言われてもギアチェンジが難しいわけです。

特に仕事に近いトピックを扱うワークショップだと、日常の思考から切り離してワークショップをするのが難しいことがあります。deCAFE は日常から完全に切り離されたワークを行うことで、デザイナーとして本来しなければならない正解を求めない「発散」、相手を評価しない「共有」を実践しているようでした。

時間や予算が少なく、最初から正解を求められるような環境にいる方は少なくないと思います。しかし、そうした中でいかに模索をするタイミングを設けることで完成品にポジティブな影響を与えてくれます。ひとりで模索をする時間をしっかりとれない場合はプロトタイプを作ってプロセスをオープン化するのも手段です。

まとめ

仕事現場だけでなく、ワークショップやセミナーですら「効果」「評価」が中心です。すぐ役に立たなければ意味がない、知らない情報を得たからセミナーへ行く費用対効果があったという視点はあって良いですが、そこがすべてではないと思います。特にワークショップは、様々な制約から解き放たれた非日常での試行錯誤をする場です。そこに「効果」「評価」だけを求めても、参加者の仕事現場を再現しない限り難しいことがたくさんあります。

非日常に身を置いた時、アイデアを遠慮なく発散することができること。「こういう視点や表現があるのか」という発見と共有をしながら、評価を恐れずにアウトプットができること。deCAFE は、それを極端なシチュエーションに参加者を置いて、うまく誘導しているなと思いました。ワークショップのテーマや形式はまったく違いますが、自分のワークショップにも活かせるヒントがありました。忙しいと忘れがちになる「発散」「模索」。スキルと考え方をバランス良く伝えるためのワークショップの品質向上に心がけようと思います。

deCAFE

筆者について

Experience Points

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