Webサイトの成熟へ導くシンプルな視点

システムができる範囲で自分には何ができるのかを考えるという視点が必要です。システムの文法・言葉遣いに寄り添った Web サイト設計・構築は、自己アピールの次の段階へ成長するための足がかりになるでしょう。

Jimdo Best Pages のイベント会場

11月7日に Jimdo で作成された年間ベストページを決定する「Jimdo Best Pages 2015」が開催されました。このイベントで、株式会社ウェブライダーの松尾 茂起さん、株式会社インプレスの瀧川 正実さんと一緒にベストページの審査をしました。

個人的に文脈をきちんと理解していない Web サイトを評価することに躊躇がありました。漠然とした印象の評価にならないように、自分なりに情報収集をしたり、アワードとは別の視点から評価指標を設けるなど工夫をしました。手間のかかる作業になりましたが、Jimdo の枠を超えた課題を幾つか見つけることができました。CMS、画面設計、コンテンツ運用の課題が、表層的なデザインにも影響するものだと改めて思いました。

初めての次へどう進むか

Jimdo のユーザー層で特徴的なのが、本サービスで初めて Web サイトを作ったという方が多い点。Jimdo は多くの方に「始めよう」と思えるキッカケを提供できているわけですが、作り手の「伝えたい」という気持ちが先立っている Web サイトが目立ちました。

Web サイトにある 3 つの成長段階の最初の段階で、いかに自分たちが素晴らしいかをアピールするコンテンツが優先的に表示されているものも少なくありませんでした。初めて作る Web サイトであれば良いと思いますが、ここからどのように次の段階である「お客様に提供できる価値はこれです」と打ち出せるようになれるでしょうか。 最初の一歩の敷居は下がりましたが、次のステップへ上がるための敷居は未だに高いわけです。

文字、画像、動画など、素材が組み合わされば、なんとなくコンテンツは出来上がります。コンテンツはどれも同じように見えてしまうことがありますし、派手な演出に心がなびいてしまうこともあります。Web サイトが完成してしているということは、コンテンツが揃っていると勘違いしてしまうこともあるわけです。

作り手・配信者側の視点では「良い」と思っているコンテンツでも、お客様には何も価値を提供していないという場合があります。こうした状況を避けるためにも、企業に属さない外側からの視点(アドバイス)は貴重な存在です。

それなりに見た目の良い Web サイトは誰でも作れるようになりましたが、そこからまた一歩踏み込みたいときに、専門家が近くにいたり、関連情報へアクセスできるようになると、Web サイトがより成熟した存在になるでしょう。

過剰なカスタマイズがサイトを殺す

Jimdo や Wix のような Web サイト作成サービスを触ると、単に機能だけでなく『文法・言葉遣い』もそれぞれ異なることに気付きます。CMS 全般にも言えることですが、機能名だけでなく、コンテンツやテンプレートの設計概念まで、システムそれぞれのアプローチをとっています。

例えば Squqrespace では複数のブログを立ち上げることができますが、彼らのなかで『Webサイトの下にブログがあるもの』と捉えているため、複数の Web サイトを立ち上げるには別アカウントが必要になります。Movable Type では、モジュールテンプレートやシステムテンプレートなど、複数の種類のテンプレートが用意されており、それぞれ役割が異なります。

これらを「ややこしい」「機能が足りない」と捉えることができますが、これが CMS の文法であり言葉遣いだと思います。それぞれ「コンテンツとテンプレートの管理はこうあるべき」という設計概念をもっています。機能の数も重要ですが、設計概念に同意できるか、シックリするかどうかで作り方に大きな差がでます。

システムを自分流に作り変えるとポテンシャルが引き出せなくなる

システムのもつ文法や言葉使いに同意できないまま使おうとすると、過度なカスタマイズが発生します。これは言い換えると、システムの言葉遣いを無理矢理じぶんの言葉遣いに変える行為です。システムが思い通りのことをしてくれないから、自分の思うように動かせるようにするわけです。これは一見、カスタマイズのあるべき姿のようですが、システムのもつ柔軟性・拡張性を損なう場合もあります。

今回の Jimdo で作られたサイトの審査で印象的だったのが、スマートフォン対応しているサイトがほんのわずかしかなかった点。Jimdo はレスポンシブ Web デザインに対応しているテンプレートも幾つか提供していますが、見せたい表現を優先するあまり、テンプレートが本来もつ機能が使えない状態になっていました。また、レスポンシブ Web デザインの他にもスマートフォン用のテンプレートに切り替える機能が用意されていますが、過度なカスタマイズがテンプレートそのものを壊している場合もありました。

こうした『自分流に作り変える』『システムのものではなく自分の言葉遣いに合わせる』行為は他システムのカスタマイズにもあります。もちろん、カスタマイズすることは間違っていませんが、以下の条件があると考えています。

  • システムの文法を変えるのではなく増幅させるカスタマイズであること
  • システムに合わせてカスタマイズした部分を更新できること
  • 短期的ではなく中長期的な視点でカスタマイズを実装できること

これらを満たすことができないと、カスタマイズの後に発生するシステムの更新に追いつけなかったり、世の中の変化に柔軟に対応できなくなるという問題が発生します。今回の審査では、過度なカスタマイズにより、パソコン以外のデバイスへの未対応や、キャンペーンなどコンテンツに応じて大きく見た目を変えることができないという問題が発生しているように見えました。

システムができる範囲で自分には何ができるのか

道具にはそれぞれ特徴がありますし、長所を活かすことで役割を全うします。過剰なカスタマイズは、まるでスクリュードライバーを、トンカチとして使うためにあれこれ施策しているようにすら見えます。CMS や Web サイト制作サービスも、システムが掲げる文法・言葉遣いを素直に受け入れてることで、息の長い運用ができるようになるはずです。

まとめ

誰でも自分の思うように Web サイトを作りたいものですが、システムの力を借りる以上、何でもできるというわけにはいきません。自分のやり方ができるように無理に飼いならそうとすると、維持・更新が難しくなることがあります。自分がしたいことができるようにシステムを改造するのではなく、システムができる範囲で自分には何ができるのかを考えるという視点の切り替えが必要です。

多くのシステムは、常に機能追加していますし、新しいデバイス対応もしてくれます。こうした恩恵を受けることで、コンテンツ運用に集中できるようになります。システムの文法・言葉遣いに寄り添った Web サイト設計・構築は、自己アピールの次の段階へ成長するための足がかりになるでしょう。

筆者について

Experience Points

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