Webページからメッセージへ

ページという大きな枠ではなく、様々なデバイスや状況に合わせて届けることができるメッセージという枠組みをデザインすることで、Web ならではのコミュニケーション思考が生まれると考えています。

2012年10日6日は、Web / IT に関わる様々なイベントが日本各地で開催されました。IT勉強会カレンダーを見ただけでも、この日は全国で 35 以上のイベントがありました。その中でも、神戸ITフェスティバルはビックイベントでした。「IT」をキーワードに、社会・政治・文化・技術・芸術など様々な角度から今の世界・今の日本・今の神戸をみることができました。いつもは制作側の視点の話を聞いたり、情報交換をすることが多く、IT フェスティバルは制作以外からの Web の関わりを知ることができる貴重な場でした。

今回は脱紙!Webならではのコミュニケーション思考術という題名で講演。神戸 IT フェスティバルの雰囲気に合わせるように、Web という媒体に再注目した内容にしました。以前から Web という媒体を制作サイドから検証していますが、今回は紙を引き合いにして、どこが似ていて何が違うのか、どの辺りがユニークで引き立てるべき特徴なのかを解説しました。

話の前半は Web という媒体を「多方向ネットワーク」「マルチメディア」などに 6 分割し、従来の媒体の様々な要素が組合わさった集合体であることを説明しました。「そりゃそうだ。当たり前だ」という内容だったかもしれませんが、特徴をまとめて改めて感じるのが、紙やチラシといった Web がよく真似ているコミュニケーションデザインとは全く異なるということです。Web の特徴を考慮すると、紙デザインのような厳密さ、紙のような一方通行のコミュニケーションは成立できないわけですが、追い求めて再現しようと努力することがあります。

私たちは新しい媒体が登場すると、前よく使われていた媒体のノウハウを利用することがあります。公演中では音楽の演奏をただ中継していた TV 番組を紹介しました。まだ独自の表現を見つけていない初期の TV 番組は、ラジオの映像版のようなものを放送していました。それが後に、TV でしか出来ない、TV ならではの表現を発展させていきます。

Web でも同様のことがいえます。初期は、紙や CD-ROM を利用したコミュニケーションデザインを Web に転換させていました。しかし、そろそろ Web ならではの作り方、捉え方を発展させていく時期が来たのではないでしょうか。ソーシャルメディアによって、Web と人との関わり方が変わりはじめているのも、「Web ならでは」の捉え方のひとつの形だと考えています。Web の特徴を発展・強調させたモノ・コトが今後より増えてくるはずです。

「Web is the Message (Web はメッセージである)」という言葉を講義で紹介しましたが、Web ページの先にあるのはメッセージではないかと考えています(ちなみに、この言葉はマーシャル・マクルーハンの「The medium is the message」をもじったもの)。ページをメタファーにしている今のコンテンツのパッケージング手法が、すぐになくなることはありません。しかし、ページという大きな枠ではなく、様々なデバイスや状況に合わせて届けることができるメッセージという枠組みをデザインすることで、Web ならではのコミュニケーション思考が生まれると考えています。配信手段、コンテンツの内容、受信方法・・・あらゆる点でメッセージを意識できるはずです。

今回の講演のために改めて、Web を媒体として捉えてみて分かったことは、Web の得意な部分を引き出すには、もっと Web をみないといけないと感じたことです。他の媒体の良さを取り入れることは重要です。他の媒体でも、そうやって他の媒体を参考にして発展をしました。しかし、独自性を発揮することで初めて媒体でしかできない価値観を生み出すことができると思います。他からのインスピレーションを、真似することではなく、特徴や制約をどうクリエイティブに転換したのかを見る必要があるのではないでしょうか。

ここ数年で、接点や使い方など、様々な点で Web が大きく変わりはじめています。このタイミングだからこそ、Web を見直し、活かせる付き合い方を考えていきたいです。

筆者について

長谷川恭久

写真:長谷川恭久Webやアプリに関わる様々な話題を取り上げた講演やワークショップをおこなっています。日本各地で講演や社内勉強会を 100 回以上の経験しています。
社内勉強会、イベントでの登壇の依頼は、メールか Twitter メッセージからお願いします。

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