調査を当たり前にするための第一歩

調査という行為は日常では当たり前

車や家など高い買い物をするとき、値段や見た目だけで買うことはないと思います。専門家や信頼できる知人に相談することがありますし、書籍やインターネットで情報収集することもあります。買う前に調査するのも「失敗したくない」「自分にとって最良なものが欲しい」という欲求があるからでしょう。値段が高いのであればなおさらです。

購入前の調査は車や家のような高い買い物だけではありません。食事、書籍、服など数千円のものでも調査をすることがあります。インターネットのおかげで情報と近くなったことから、あらゆることが調査しやすくなったかもしれません。

高い買い物であれば調査は必ずするといっても過言ではありませんが、web サイトやアプリ開発になるとそうでもなかったりします。高い買い物をしているにも関わらず調査をしないところが今もありますし、定量調査はするものの、ユーザーの声を聞くという定性調査までできていないところがあります。

日常であれば数千円の買い物でも調査することがあるにも関わらず、数百万以上かかる web サイトでは調査をしないというのも不思議な話です。

身近な存在にすることから始める

定性調査をしないひとつの要因として、調査対象と接触する機会が少ないというのがあります。定量調査であれば、Google Analytics のようなツールをつかって情報へ気軽にアクセスできる手段がありますが、定性調査はなかなかそうはいきません。ターゲットユーザーを探さなければならないのはもちろん、インタビューや観察を通して集めたデータを手軽に見る手段を作らなければいけません。定量調査に比べて、定性調査を身近に感じてもらえる方法が少ないのが遠い存在に見えてしまうのかもしれません。

ターゲットユーザーに直接会って話をしたり、実際にプロダクトを使ってもらって感想を聞くのが理想ですが、身近に感じてもらうための手段は他にもあります。まず手始めとして Hotjar のようなツールを使うのがオススメです。無料でもユーザーの操作を動画で残す機能を使うことができます。定性調査とは言い難いですが、数字だけでは分からないユーザーの姿をわずかな時間で見せることができるのは大きなメリットです。

Hotjarで録画したユーザー行動マウスやスクロールの動きを見るだけでも発見があります。

ターゲットユーザーと会う機会もひと昔より敷居が下がっています。Twitter や Facebook のようなソーシャルメディアで募集することもできますし、ビザスクのようなサービスを使えば、よりイメージに近いユーザーと接触することができます。

まとめ

日常では『当たり前』と呼べる調査という行為。それが仕事で難しいのはワークフローの一部になっていないからでしょう。ペルソナやカスタマージャーニーマップを作っても、ハードディスクの中に眠ったままだったり、1年以上更新されていないことも少なくありません。せっかく定性調査をしても身近に感じてもらえなければ、調査をワークフローの一部として導入するのが難しくなります。

読みにくいログデータを見やすくアクセスしやすくしたことで定量調査が当たり前になったように、定性調査も身近な存在にするための働きかけが必要です。高い投資額だけでなく、効果が求められている web ・アプリですから調査を通して失敗する確率を減らしていきたいところです。

Understanding Your Users の書籍カバーFYI:ユーザー調査の手法を一通り学びたいのであれば、「Understanding Your Users: A Practical Guide to User Research Methods」がオススメです。初心者から上級者まで実践的な方法が書かれた教科書のような存在。1ページ目からじっくり読むというより、必要に応じて参照するという使い方にしています。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。