会話から考える情報設計のコツ

会話はデザインの基盤

2016年は、Facebook PlatformSlack Bot のようなチャットを利用した会話式 UI が話題になりました。人工知能(AI)の話題とも重なって『バズった』UI デザインでしたが注意が必要です。利用者の期待をコントロールしなかったり、情報のインプットとアウトプットの工夫がないと「やっぱり使えない」「会話型でないほうが便利」という結果になります。何でも会話式 UI ではなく、現実的かつ有効な活用例が今後出てくることを期待しています。

『会話』とは、チャットのような見た目のインターフェイスだけを指しているわけではありません。Amazon Echo や、Google Home のように GUI をもたないデバイスでも会話はありますし、できることが少ないとはいえ Siri にしてもそうです。今のデザインにおける会話は、こうした次世代の話題が多いですが、Web サイトやアプリでも根底的なところはコンピューターと人間との会話で成り立っています。利用者が「〇〇がしたい」という要望に、「こちらにあります」とコンテンツや機能を通して応えているわけです。

会話式 UI を作るかどうかはさておき、利用者との会話を想像するとデザインがしやすくなります。発信者が側が見せたいもの、伝えたいことばかり提示しているだけでは会話は成立しません。もし、レストランに入った途端に店員が延々と営業トークを始めてきたら迷惑と感じると思います。ひとりでゆっくりくつろぎたいけど、声をかけたらすぐに助けてくれる人。漠然としたイメージを伝えれば適切なアドバイスしてくれることを望むはずです。

良い店員の姿を UI デザイン、コンテンツデザインとして表現するとどうなるでしょうか。

シナリオを通して情報設計

会話を通して適切なコンテンツや UI を考える際、シナリオライターになったつもりで考え始めると良いでしょう。例えばレストランへ訪れる人はどのような動機や背景があるでしょうか。なぜそこへ行こうと思ったのでしょうか。もし仮想空間としてレストランの Web サイトが存在するとしたら、登場人物は何を見て、どのような振る舞いをするでしょうか。Web サイトを通して、何をしてもらいたいでしょうか。

登場人物の背景を考えた上で、以下の質問に答えていくことで何が必要なのか少しずつ見えてきます。

  • 登場人物がサイトに訪れた時に最初に見るものは?
  • もう一歩先に進んでもらうには何が必要?
  • 何があると満足してもらえる?それを提示するタイミングは?
  • 登場人物が困っていること、悩んでいることは何?
  • レストランに適切な振る舞い方は?フレンドリー?それとも介入を避ける?

デザイナーの中には、こうした質問をあらかじめ考えた上で情報設計をする人もいますが、意図が伝わりにくい場合があります。アピールすることを優先的に考えてしまう人もいるので、登場人物が Web サイトやアプリと会話をするとどうなるか?という仮説の中で意見交換すると良いでしょう。会話のように情報の優先順位を決めていくと、シングルカラムで考えやすくなるので、マルチデバイス対応も多少楽になります。

コンテンツに対して人は何を考えるのか、どうリアクションするのか想像しながら整理します。

まとめ

利用者が本当に必要なものは何かを考えるとき、「Webサイトやアプリと会話をするとどうなるか?」という質問を投げかけてみましょう。その時、一旦パソコンやスマートフォンという枠組みから離れて、利用者が考えていること、その質問に対する答え方と文章にすることをお勧めします。先述したレストランの例で、登場人物が「甲殻類アレルギーがある」「ベジタリアンでも職を楽しみたい」といった要望に、どう答えることができるでしょうか。見せ方、機能、コンテンツなど、可能性は幾つかあります。

ペルソナを作ったあと、シナリオにのせて動かしてみるとどうなるでしょうか。会話を想像してみることで、必要なコンテンツや機能が考えやすくなるだけでなく、自分たちの仮説に対して定性的な評価ができるようになります。自分たちの作ったものが適切なのかどうか知るために、まず利用者との会話を設計してみてはいかがでしょうか。

Yasuhisa Hasegawa

Yasuhisa Hasegawa

Web やアプリのデザインを専門しているデザイナー。現在は組織でより良いデザインができるようプロセスや仕組の改善に力を入れています。ブログやポッドキャストなどのコンテンツ配信や講師業もしています。