情報だけでは価値がない時代の学びの姿

少数のソースから集中的に情報取得することは知識にならないですし、学習とも呼べません。ネットワーク社会ではプロセスに参加し、変化を体感することが学びに繋がります。プロセスに参加するといことは模索があり、失敗は当然という環境を意味しています。

「時代の流れが速すぎて学ぶのが辛い」
「いろいろありすぎて覚えるのが大変」
このような言葉を聞いたことがあります。確かに学ぶことが多いですが、知識との向き合い方で学習の仕方が大きく変わります。学習への向き合い方の変化が、気持ちを和らげてくれることもあります。

昔は情報をもっていることが知識であり、情報を得る方法が学習と捉えられていた時期もありました。故にセミナーに参加したり、書籍を買っても自分が知らない情報があるかどうか、たくさんの情報が書かれているかどうかが評価の基準になり、情報を得たから「学べた」という満足に繋がったのかもしれません。昔の学校の授業は情報が中心なっていたのも、何か関係しているかもしれません。

終着点があった従来の学習

従来の知識の取得方法従来の情報の取得方法。わずかなソースから情報を受け取ることが知識になった。

知識を得る方法が書籍、新聞などといった媒体の場合、そこに書かれている情報が知識であり、学びの『終着点』でした。

その理由は媒体の制約が関係しています。

新聞や書籍の情報は紙面という制約があることから、「もっと知りたい」「この言葉がわからない」「関連した動向は何」といったニーズに応えることができません。さらに広げて情報を得るということが難しいからこそ、紙面に書かれている情報が知識のソースであり学びの終着点でした。こうした状況下での学習は、平面的になりがちで情報を得ることが知識に直結すると解釈してしまいがちです。

  • たくさんの情報に触れるのはコスト高なので、ひとつ又はふたつの情報ソースに留まる
  • 多様性も拡張性も見えてこないので、書かれている情報が事実と解釈しがちになる
  • 情報配信のスピードが早くないので、普遍的な情報として捉えてしまう

ネットワークによる改善プロセス

ネットワーク社会の知識の取得方法ネットワーク社会ではリンクで繋がった膨大な情報を取得することができるようになった。

こうした状況が大きく変わるのが、ネットワーク社会による知識の進化にあります。これにより、「情報=知識」という公式は崩れ、書籍や新聞をはじめとした情報ソースから知識を得るという学習の姿も変化しはじめました。オープン Web とハイパーリンクにより、情報は今までにない拡張性を得ました。そして、学習のプロセスも平面的なものからダイナミックで立体的なものへと変化しました。

ネットワーク社会による知識の変化は様々な Web サービスをみると分かります。

arXiv.org
ピアレビュー(査読)なしで学者・研究者が論文を公開することができる。すべてリンク付。
Flickr
写真共有サービス。誰でもタグを追加して写真にメタデータを追加することができる。
Stack Overflow
Q&A コミュニティ。質問に答えに対して投票することが出来、誰でも回答を改善することが可能。
GitHub
自分のソースコードを公開できるだけでなく、誰でもプロセスに参加することができる。

ネットワーク社会では、以前と異なる価値観が生まれました。

  • 情報を得るコストは限りなくゼロになり、様々な視点の情報が見れるようになる
  • 多様性が生まれることから、自分なりに解釈しアウトプットすることが重要視される
  • 常に改善されていることから、情報をフォローし続けることが知識に繋がる

プロセスに参加することが学習

ネットワークで繋がっているが故のデメリットもたくさんあります。例えば Flickr にしても見当違いな妙なタグが付いていることもありますし、GitHub にも誰得みたいなプロジェクトや違いが分かり難い類似プロジェクトがたくさんあります。数が多い上に、情報の質にも幅がある今の世界。こうした中、「情報を得ることが知識」という姿勢で学習をしていると、情報過多で息がつまり、質の悪い情報にウンザリしてしまうことになります。

  • 質が悪い情報があるのは、それだけ発信の敷居が下がったことでもあります。
  • 多くの人が情報発信するからこそ、多様性が生まれます。
  • 情報を発信しやすいからこそ、模索もしやすくなります。
  • 模索が多いからこそ、失敗から学んでさらに良い手段を見つけることができます。

学習との接点学習したいとき、流行したときに学ぶというスタイル。
そのときそのときにある情報を学ぶだけになりがちです。

従来のように、情報の取得することが知識であるという考えだと、知識を得たいと思ったタイミングで情報を見るというかたちになりがちです。こうした「情報のスナップショット」だけを得ている学習だと、古くなったときの応用が効き難くなるだけでなく、混乱を招き柔軟性まで失うこともあります。また、なぜ改善が続いているのか、変化し続けているのかが分からないので、情報に翻弄される可能性もあります。

ネットワーク社会の学びの接点ネットワーク社会における情報との常時接続。
集中的な情報取得ではなく、プロセスを体感しながら変化を学ぶスタイル。

いまの時代、常に情報に触れながら、何かをアウトプットし続けることが最適の学習方法だと思います。しっかりコミットしないにしても、情報を追い続けることで、全体の流れが把握しやすくなりますし、応用したり違う要素も繋げやすくなります。常に変化し続けているわけですから、自分もその流れに乗っているほうが楽ということでしょうか。

そのときそのときの情報ではなく、情報の変化の流れを体感すること。ネットワーク社会で他の人たちのアウトプットに紛れて、自分もなにかアウトプットする。質が悪かろうが、間違っていようが、まずは出すことで思いがけないキヅキや出会いが待っているはずです。

間違いだらけのプロセスの中で、皆で『良い』を見つける過程こそが学びではないかと思います。

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筆者について

Experience Points

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