デザインプロセスにあるイケア効果

人は自分で作ったものに対して特別は感情を抱いてしまうのは、デザイナーをはじめとしたモノを作る人たちだけではありません。周りにも『自分ゴト』と思って参加してもらうことで、感情的なネガティブフィードバックを軽減することができます。

イケア効果という認知バイアス

自分で作ったものだからこそ、特別な感情を抱いてしまいます。だからこそ成果物が否定されると、自分自身が否定されたかのように聞こえてしまうことがあります。自分は自分。成果物は成果物と切り分けて聞き入れるべきですし、話し手も成果物の課題に対してきちんとフィードバックをしたほうが良いでしょう。しかし、実際はそう簡単にはいきませんし、たとえ話し手が上手なフィードバックをしていたとしても、上手に受け入れられない場合があります。

人は自分で作ったものに対して特別は感情を抱いてしまうのは、デザイナーだけではありません。自分で作ったものに本来以上の価値を与えてしまう認知バイアスで、誰でも持っているものです。こうした状態を「IKEA effect(イケア効果)」と呼ぶことがあります。

IKEA の家具は組み立て前の状態で販売されており、組み立てるのは購入者です。コスト削減のための施策ですが、購入者が自分の家具を自分で組み立てるという工程があることで、特別な感情を抱くことがあるそうです。The IKEA Effect: When Labor Leads to Love で紹介されている調査によると、プロによって組み立てられた家具より、自分で作った家具に高い価値を置く傾向があるそうです。家具そのもののが評価の対象ではなく、それがどのような工程で作られたのか身をもって体験したことが評価に繋がることがあるわけです。

一緒に作っている感を演出

以前からデザインのブラックボックス化は避けるべきと話していますが、単なる直感や好みで作られているわけではないことを周りに知ってもらう行為だと思っています。しかし、これは単に途中段階を見せるだけではなく、見せた途中成果物を通して会話をすることを意味します。

思考プロセスを説明する資料の一部

具体的な情報設計をする前に、「こうあるべきだよね」という方向性をワークショップや調査を通して、プロジェクトと関わる人たちと一緒に考えていきます。上図のような視覚化はデザイナーがするものの、具体的な情報設計をする前の思考プロセスを共にするようにしています。グラフィックツールを使って作るのはデザイナーですが、そこまでの工程を一緒に作り上げていることから、良い意味で驚きがない途中成果物が作られることが多いです。

依頼して作ってもらった成果物は、「自分ではない誰かが作ったもの」です。客観的に言えるというメリットはあるものの、フィードバックすることに慣れていない人だと、感情的なものも含めて容赦なく話してしまう場合があります。もし IKEA の家具のように自分も作る工程に参加したと思えるような体験があるとどうなるでしょう。たとえデザイナーが作ったものでも、周りは「私も作る過程に参加した成果物」と考えるはずです。プロセスに参加しながら進んでいるので納得感も上がるだけではなく、自分が作ったものだからこそ慎重なフィードバックなっていきます。

まとめ

デザインプロセスをオープンにしていくことにより、周りにも『自分ゴト』と思って参加してもらいやすくなります。途中経過を一緒に作り上げることがイケア効果が働いて、ダメ出しや指示だけにならない建設的な会話がしやすくなります。

しかし、イケア効果がネガティブにはたらく場合もあるので注意が必要です。デザイナーだけでなく、周りも成果物に対して感情移入してしまうことで、過大評価をしてしまう恐れがあります。そうした可能性があることを踏まえた上で、利用者の目的やビジネルゴールを見据えた議論とファシリテーションを行えば、イケア効果の悪化を防ぐことができます。デザインプロセスのオープン化に躊躇している方は、周りを巻き込む手段として効果的なので検討してみてはいかがでしょうか。

筆者について

Experience Points

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