デザイナーとしての失敗との付き合い方

失敗は私たちの仕事の一部である以上、隠したり逃げたりする以外の方法を見つける必要があります。失敗の姿を明確にすること。失敗について共有する手段を見つけることは、付き合い方を変えるための第一歩になります。

What is failure

失敗を恐れないわけがない

「失敗はたくさんしたほうが良い」「失敗を恐れるな」という言葉を耳にしたことがあります。確かに失敗を通して学ぶことは少なくありませんし、書籍やセミナーで学んだことより残る知識になることもあります。しかし、だからといって失敗したくないのが本音です。また、失敗は私たちの社会では許されざることと捉えられている場合もあります。「失敗を恐れるな」の前に「失敗は許されない」という考えが先立ってしまって、なんとか失敗せずに済む方法、失敗から免れる手段を選ぼうとしてしまいます。

ただ、失敗しないための努力をしたところで、失敗してしまうことはあります。また、周りからそう思われていなくても、自分にとって失敗を感じることもあるでしょう。事業がうまくいかなかったとき、提出したデザイン案がやり直しになったとき、プレゼンテーションの反応が良くなかったとき、同僚と話したときに生じたぎこちない雰囲気など、大小様々な失敗があります。

失敗のやっかいなことは、いつまでも私たちの頭の中に残っていることです。残るからこそ学びに繋がることはありますが、恐怖や不安として半年、1 年残ることもあります。常に頭の中でその失敗が浮かびあがることもあれば、突如頭に浮かび上がり、その日はずっと考え込んでしまうこともあります。自分が失敗したときの姿を思い浮かべるといった負のスパイラルに陥り、ますます失敗を恐れてしまうこともあるでしょう。

私自身こうした失敗によって身動きがとれなくなる状態を何度か経験しています。焦るあまり失敗を懸命に忘れようとしたり隠したりする行為に移ることもあります。短期的にはそれで良くても、ある日突然、記憶が戻ってくることがありますし、貯まりに貯めた失敗の記憶によって押し潰されることもあります。「失敗を恐れるな」と言われても、どうすれば恐れなくて済むのかも分からない人はいるはずです。

失敗との付き合い方を探る

失敗は誰でもしてしまうことです。しかし、だからといっていきなり失敗を恐れず行動できるものではありません。突然改善することもなければ、右肩上がりに順調に良くはならないので、長期的かつ持続的な働きかけが必要です。

生活を振り返る

気持ちが安定していないという結果は分かっていても、どのようにして安定しなくなったのか分からないことが多々あります。例えば Day OneMoodnote といったアプリを使って、日々のムードがどう変わっているのか記録するのはどうでしょう。ソーシャルメディアや Web で公開しない『自分だけの場所』を設けることによって、本当のことが書き残しやすくなります。

失敗を定義してみる

失敗したときの状況を思い出すことができても、失敗への恐怖が漠然としていることがあります。恐怖が漠然としてしまうと負のスパイラルがスタートしてしまいますし、ますます失敗が『どうしようもない存在』になってしまいます。一度、立ち止まって自分にとっての失敗を定義してみると、具体的に何と向き合えば良いのか考えやすくなります。失敗に立ち向かうといった漠然としたものではなく、具体的に何をするべきなのか分かったほうが次のアクションが見えてきます。

自分ひとりではない

詐欺師症候群にも言えますが、失敗を恐れている、失敗によって気持ちが安定しないのは誰にでもある深刻な問題です。こうした記事を書いているのも、ひとりではないと感じていただきたいからですし、こうした内容を共有できる相手を見つけるのが理想的です。

失敗を売上や従業員数といった数値で測れる場合もありますが、ほとんどの場合は主観的なものだと思っています。周りからすれば大したことのない失敗のように見えるものでも、当人からすれば立ち直るのに時間が必要が失敗ということもあります。失敗の体験について共有できるようにするには、相手の失敗を自分の価値観で測って評価をしないことが必要です。

失敗を許せる環境はあるだろうか

問題解決プロセスとしてのデザイン思考には、ブレインストーミングというアイデアの幅に制限を設けず自由に考える段階があります。また、アイデアをいちはやく共有して方向性を模索するプロトタイプへのニーズも高まっています。いずれも、失敗を恐れずに前へ進むことを推奨した手段です。もし失敗を許さない環境(もしくはワークフロー)だとしたら、これらの手法は本来とは異なる使われ方になります。いつの間にか無難なアイデアしか出回らないミーティングになったり、完成品に近いプロトタイプを作ってしまうこともあります。

失敗へのケアはひとりひとりの課題ですが、それが次第に仕事環境にも影響してきます。デザインは「これが絶対正解である」と言い切るのが極めて難しいです。つまり、失敗と向き合いながら、そのときできる最適案を絞り出すしかないわけです。失敗は私たちの仕事の一部である以上、隠したり逃げたりする以外の方法を見つける必要があります。失敗の姿を明確にすること。失敗について共有する手段を見つけることは、付き合い方を変えるための第一歩になるはずです。

筆者について

Experience Points

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