デザインにもあるマニフェスト

1960年代からデザインのもつ影響力と責任を意識して仕事をしようというマニフェストがあります。2000年にも改訂版が出ていますが、今の私たちがサステナビリティもふくめて Web デザインを考えるのであればどのようなマニフェストが生まれるでしょうか。

First Things First

デザインの影響力と責任

政治家のあいだで「マニフェスト」という言葉がよく用いられますが、デザインの世界にもマニフェストはあります。1964年に発表された First Things First は、商業的になりすぎて批評性を失ったデザインに対する危惧と、デザインの本来の意味を見つめ直し人々や社会にポジティブな影響を与えるものをつくり続けようと宣言しています。英国のデザイナー、ケン・ガーランドが中心になって起草されたこのマニフェストは数多くのデザイナーから指示を得たといわれています。

その後、改訂版 Frist Things First が 2000 年に起草されています。問題解決だけでなくアイデアを示すデザインという職能を社会・文化・環境に役立つコミュニケーションツールとして活かそうというが改訂版の主なテーマ。1964年と同様、広告・宣伝におけるデザインよりさらに広げてデザインの議論をしていこうという思いが伝わってきます。

マニフェストの日本語訳を読みたいという方は Elephant & Castle の筆者訳を参考にしてみてください。

マニフェストとは実に大袈裟だと感じる方もいるかと思います。しかし私たちは多大な影響力をもっていることを認識しなければいけません。ナビゲーション、ボタン、色、写真、コピーライティング、1行のコード。すべてが利用者・視聴者に影響を及ぼしています。

「かっこいい」「おもしろい」「きれい」といった表現はデザインにおいてなくてはならない言葉です。しかしながら、それだけでデザインの善し悪しを語り合い、手軽に実現するためのノウハウだけを共有しているのであれば、それは残念なことです。表層的な表現だけで考えていたとしたら、それは私たちのもつ影響力を軽視しているのではないでしょうか。

サステナブルなWebデザインとは

去年「Webデザインについて何を勉強したいですか?」という記事で自分が Web デザインの領域で考えていきたいトピックを幾つか挙げました。今年はその中にある行動やふるまいに対するWebデザインに少し足を踏み入れることが出来ました。他に挙げたトピックも今後記事として取り上げていきますが、サステナビリティとWebデザインは、今回のマニフェストの話題と重なる部分があると思います。

Webデザインとサステナビリティを関連付けさせることはそれほど難しい話ではありません。Webとはいえ、実世界と密接な関係をもつわけですし、コンピュータやサーバといった実機も存在するわけです。サステナビリティを意識した Web デザインを考えると以下のような指針が考えられます。

無駄を減らす
サイト、ページ、コンテンツ、コードといった様々なレイヤーで無駄があれば、その無駄は利用者や機器をはじめ他に負荷がかかっていることである
あるものを使う
既に使えるものがあれば、新しいモノを作り出す必要はない。既にあるもので実現出来なさそうなことがあったとしても、工夫次第で代替案も生まれる
バランスを保つ
多岐の分野にわたる Web だからこそバランスが必要。ひとつ研ぎすまされたスキルがあることは素晴らしいことだが、他の分野に目を向けていないのであれば Web では何もつくれない
永続的ではないデザイン
持続可能であるということは、環境に合わせて変化し続けるということ。コンテンツも人も常に進化し続けるわけだから、それに合わせることが出来る設計が必要になる
データからクリエイティブを
私たちのつくりだすデザインが生み出す結果はすべてデータとして取得することができる。環境問題がヒラメキのクリエイティブによって解決されることがないように Web デザインもデータからどのように意味を見出すかが鍵
魂を失わずにグラフィックデザイナーになる本デザイナーとしての哲学が語られてるだけでなく、実用的なアドバイスも書かれている良書「魂を失わずにグラフィックデザイナーになる本

あなたのマニフェストは?

Webデザインもグラフィックデザインと同様、商業的になりやすいです。もちろん、商業的であることは良いことです。しかし「仕事だから」ということで、するべきことではないことを仕方なくしているのであれば改めて考えなくてはいけません。毎日の生活をどうサポートしていくのかといった部分だけでなく、時間や制約といった要素が私たちの決心を揺るがしたり、別の行動をしていまうことはあります。私もそういったことはあるわけですが、マニフェストにあるようなメッセージはたまに思い出して気を引き締めたいところです。

今回紹介したマニフェストではなく、自分なりにマニフェストを作ってみるのも良いかもしれません。

筆者について

Experience Points

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