Mediumでコンテンツ配信して気づいたこと

Mediumの利用を通じて改めて感じたのが、自サイトでコンテンツを作って待つだけではどうしようもないという点。誘導だけではなく、プラットフォーム上にコンテンツを掲載しなければ見てもらえないという状態になりつつあります。

遠くなりはじめた Web サイト

2015年11月から12月にかけて Medium のほうでコンテンツ配信をしていました。

Medium は昨年から日本へ本格進出をしていることから、注目している方も少なくないと思います。Medium の人気の秘密は、使いやすくコンテンツの邪魔をしないライティング環境を提供している部分だけではありません。Twitter の創業者のひとりであり、現 Medium の CEO である Evan Williams を中心としたスタートアップ & テック界隈から徐々に Medium の文化が広がったという背景も魅力。こうした機能やデザインだけでは表現できないところまで日本語化されているわけではないですし、日本では昔からあるブログプラットフォームをはじめ、書く環境が豊富に揃っています。

私の場合、情報発信ができる環境が既にあるので Medium に魅力を感じていなかったわけですが、ある実験・検証をしたくて始めることにしました。

Medium プロフィールページ

ここ 1, 2 年感じていることですが、自サイトのみでコンテンツ配信することの限界を感じています。以前であれば、記事を書いて、ソーシャルメディアで告知すれば人が集まっていましたが、今はそれだけでは通用しなくなりつつあります。今までの運用を通して、以下のような傾向が強まってきているように見えます。

  • アプリから Web サイトへの導線が効かなくなってきている
  • そもそもタップするのも面倒でスルーをする
  • Like や RT という反応はあるけど、実際はアクセスすらしていない場合もある
  • 情報の窓口が多様化・加速化しているので、メジャーな配信経路を抑えれば OK という状態ではなくなっている
  • アプリが情報消費の中心なので Web サイトアクセスをしない読者がいる

自分のサイトで記事を書いて、読者が来るのを待つというやり方だけでは十分ではありません。それを裏付けるように、Facebook Article、Snapchat の Story Explorer のようなサービスが昨年続々と登場しました。Web サイトへ誘導させるのではなく、プラットフォーム上で直接コンテンツを提供するという手法です。Apple のニュースアプリは、それを OS のレイヤーから提供しています。今の読者にとって Web へアクセスして読むという方法は、あまりにも『遠い』わけです。

そこで、アプリを提供していて、日本でも特定のセグメントから注目を集めている Medium でしばらくコンテンツ配信をすることにしました。自分が肌で感じていることは正しいのか? それに対して何ができるのかを実験してみました。

何もない状態からどうコンテンツが広がるのかを見たかったので、今回は告知やソーシャルメディアでの宣伝は一切せずに配信を続けることにしました。以下は個人的な見解ですが、気づいたことを 4 つ紹介します。

利用して発見したこと

Medium で公開した記事はソーシャルメディアでは宣伝はせず、Medium ユーザーによってコンテンツがどのように消費・拡散していくのかを見ることを目的としました。ただ配信しているだけでは意味がないので、以下のようなパターンでコンテンツを配信しました。

  • 本サイトで人気あった記事を数日後に配信
  • リライトした 4 年前の記事
  • 本サイトで公開したと同時に転載
  • 公開後 1 週間後に転載
  • ソーシャルメディアで話題になっていたトピックを扱った過去記事
  • Medium 向けのオリジナル記事

このリストを見ると分かる通り、ほとんどは本サイトからの転載記事です。個人的に同じコンテンツを複数の場所に点在させることを良いとは思っていませんが、Web サイトへ訪れない、接点がまるで作れていなかった読者にとって、Medium にあるほうが便利です。それを裏付けるように、配信中最も人気があったのは、4 年前に書いた「SEOとデザインは今後より密接になる理由 」でした。「SEO」「デザイン」というキーワードも含めて、注目が集まりやすいタイトルだったのも事実ですが、多くの方が読了しているようでした。

最新であることが重要ではなく、その人にとって目新しく、興味深いコンテンツであれば読んでもらえるということが分かる良い事例だと思います。しかし、これだけが Medium でのコンテンツ配信を通して学んだことではありません。

きっかけはメール

グラフ - Medium のリファラ傾向

Medium には簡易アクセス解析ツールがあり、そこでどこから記事を読んでいるのかを確認することができます。これによると、およそ 56% の読者がメールを経由して記事を読んでいます。Medium の会員になると定期的にオススメの記事を紹介するメールが届きますが、そこが読むきっかけになっている人が多いようです。

発見の窓口は Twitter をはじめとしたソーシャルメディアかと思いきや、メールが半分を占めているのに驚きました。記事が人気になり、はてなブックマークをはじめとした外からの流入があると、この傾向は薄れていきますが、ほとんどの場合メールが 1 位でした。

内では広がるが外へは拡散しない

もうひとつ特徴的なのが、積極的に外へ向けて紹介しない限り、Medium の中からなかなか『抜け出せない』点。メールに次いで iOS からのアクセスが多いのも見ても分かる通り、アプリで記事を読んで満足という行動が多いように見えます。次々と Medium コンテンツが読めるような工夫は Web にもアプリにもされていますが、外には出難い仕組みになっています。

記事に対する読者のリアクションの仕方も拡散力に影響しています。Medium には共有ボタンが一応用意されているものの、ハートを利用する方が多いようです。2 回タップしないと共有できない Facebook や Twitter より、1 回で済んで押しやすい UI にデザインされているハートを選ぶのは当然かもしれません。

Mediumの共有UIWebでもアプリでもハートは気軽に押しやすいUIになっている

タグは必須だが日本語に改善余地あり

Medium 読者を増やしたいのであれば、タグは必須になります。わずか 3 つしか指定できませんが、タグを経由して流入する方も少ないですし、記事の下に表示される関連記事リストに載るチャンスが増えます。何も付けていないのは機会損失。日本語読者と繋がりたいなら、Japanese タグは入れておきたいです。

しかし、タグ付けは基本英語なのがネックです。例えばデザインタグには何もないですが、Designタグであれば、言語関係なく表示されます(とは言ってもほぼ英語ですが)。日本語タグをはじめとしたローカライズの課題は今後改善されると思いますが、今のところ英語とどう付き合うかが拡散の課題になりそうです。

オリジナルを掲載するかは疑問の余地あり

Medium の利用規約 には以下のようなことが書かれています。

… by posting or transferring content to Medium, you give us permission to use your content solely to do the things we need to do to provide Medium Services, including, without limitation, storing, displaying, reproducing, and distributing your content.

Medium は記事の著作権は筆者に帰属すると明示してあるものの、Medium で作られたコンテンツを組み替えたり、再配信をする可能性があることが上記に示されています。Medium の利用規約は類似サービスに比べると筆者を尊重したものになっていて好感がもてますが、規約というものは変わることがあります。

今回の実験で転載記事を多く使用したのも、今後自分のコンテンツの扱いが変わるかもしれないサービスにオリジナルのコンテンツを掲載することに積極的になれなかったところがあります。オリジナルコンテンツを掲載したところで読者の動きが大きく変わらなかったのも転載記事で良いと思った理由でもあります。自分のコンテンツは自分できちんとコントロールしたいというのであれば、自分でホスティングするなど別の方法を選んだほうがよさそうです。

まとめ

Mediumの利用を通じて改めて感じたのが、自サイトでコンテンツを作って待つだけではどうしようもないという点。しかも誘導だけではなく、プラットフォーム上にコンテンツを掲載しなければ見てもらえない(それでようやく見てもらえる)という状態になりつつあります。

  • Medium でしか届かない読者は存在する
  • 読者が外へ向けて拡散することは期待しない
  • Medium 内での繋がりが読者獲得につながる
  • オリジナルのコンテンツを置くかは考慮が必要

特に第1点目に挙げている「そこでしか届かない読者がいる」というのは重く受け止めておきたいところです。これは Medium に限ったことだけでなく、他のサービスにもあることです。読んでもらいたい読者はどこにいるのかを見極めて、そのサービスの形状・作法に則ったコンテンツ制作と配信がますます必要になりそうです。

筆者について

Experience Points

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