的確なデザインアドバイスをするための確認事項

出来上がったもの以外を見ないと、デザインの話をするのが難しい場合があります。たとえ見た目だけの話をしていたとしても、どのように作られたのかを理解しないままでは、実践できるアドバイスを提供するのは難しいです。

段階的に考えるデザインのアドバイス

時々「デザインのアドバイスもらえますか?」という依頼を受けることがあるわけですが、応えるのに困ることがあります。尋ねている側は「もっと良い見た目、さらに使いやすくするにはどうしたら良いか?」というニュアンスを含めて質問しているわけですが、初めて見る成果物に対して評価するのは極めて困難です。

成果物は突然生まれるものではありません。価値共有を行ったり、あえて省いた機能や、意図的に作られた表現もあります。こうした過程を経て Web サイトやアプリという成果物があるわけですから、それらを理解する前に評価するとなると、どうしても「好き」「嫌い」といったリアクションに近いものになりがちです。「これはどうですか?」と尋ねても、的外れなフィードバックが来る場合があるのはそのためです。

ムードボードを作るとき、自社ブランドを言語化・視覚化する際、「好き」「嫌い」という感情的なリアクションが出てくるのは良いでしょう。ただ、Web サイトやアプリのビジュアルの良し悪しにしても、言語化・視覚化された共有物を基にして話されるわけで、ひとりひとりの感性を主張するタイミングではないわけです。

外部からデザインを見るとなると、こうした共有物や作られるまでの過程が把握できないことがあります。しかし、だからといってデザインのアドバイスがまったくできないわけではありません。私の中で、アドバイスの段階を 5 つに分けて、デザインが作られる過程の理解が深まると、段階を上げて話すようにしています。

段階1: ビジュアルデザインの基礎を確認する

ビジュアルでもできるデザイン批評でも指摘しましたが、デジタルでも紙でも適応できる鉄板の基礎は存在します。配列が揃っていない、決まったパターンが見つからない場合、それらを調整するだけでも見た目が良くなります。

段階2: ガイドラインに沿っているか確認する

アプリであれば Material DesigniOS Human Interface Guideline がありますし、Web サイトでもニールセンのユーザビリティ10原則日本語訳)のような基本的な約束事が存在します。また、組織によって独自のガイドラインを制定している場合があります。事前にガイドラインが手に入るのであれば、それを基にしてデザインを見るようにします。

段階3: パターンや例外を確認する

ガイドラインがあれば、パターンがあるデザインが作りやすくなりますが、すべてパターン通りに行くとは限りません。用途上、あえて例外を作っていることもありますし、運用のニーズに応えるために見た目を調整していることもあります。ダミー文字やサンプル画像が使われたデザインを見る際は、必ず「違う素材が来たらどうなりますか?」という質問はしたほうが良いでしょう。

段階4: ターゲットユーザーやシナリオを確認する

どのような人が、どういうふうにアプリや Web サイトを使うのか知ることで、サイトの目的と伝えるためのアプローチが明確になります。ペルソナやカスタマージャーニーマップといった時間をかけた成果物でなくても、インタビューをしたときのメモや、手書きのリストがあれば、それを見せていただくようにしています。何もないのであれば、それらについてヒアリングした上でデザインのアドバイスを提供します。

ヒアリングの際、もしくは共有物を見るときに注目することは、「目的」が利用者の視点になっているかどうか。「お問い合わせしてもらう」「ものを買ってもらう」は作り手に寄り添った目的です。利用者は「こうなりたい」「こんなことができる」という欲求に近い目的があるので、そこを言語化・視覚化するとで必要なコンテンツと、それを補助するデザインについてアドバイスがしやすくなります。

段階5: 制作ワークフローと運用体制を確認する

デザインのアドバイスをしても理想論に聞こえてしまう理由のひとつとして、その現場では実現が難しいことを話していることがあります。デザインは外注で、ユーザーの動向に合わせて決め細かな調整ができる体制がない現場だと、汎用性の高いオープンソースのデザインフレームワークに頼るしかありません。また、コンテンツ配信を定期的に行う現場で、エフェクトやタイポグラフィが凝ったグラフィカルな要素があっても、作るコストが高過ぎて割りが合わなくなります。逆もしかりで、運用にデザイナーを割り当てることができる現場であれば、それだけ見た目にバリエーションがつけやすくなります。

デザインが出来上がるまでの過程を知ること。そして、そのあとどのように Web サイトやアプリが運用されるのかを知ることで、その現場でできる範囲が考えやすくなります。成果物以外のところに、デザインの品質を高めるヒントが見つかる場合があります。

まとめ

今回は部外者という立場からデザインを見るときに何に注目すれば良いかを紹介しました。紹介した 5 段階を採用するかどうかはさておき、出来上がったもの(Webサイトやアプリ)以外を見ないと、デザインの話をするのが難しい場合があります。たとえ見た目だけの話をしていたとしても、どのように作られたのかを理解しないままでは、実践できるアドバイスにならないわけです。

これは社内レビューでも同様のことで、デザインの意図を説明しなければならないのも、感情的なリアクション以外のフィードバックを得るためにあります。見た目だけでなく、使いやすさにしても、全員が一致するものがあるとは限りません。今回紹介した段階は、ひとつひとつ積み上げながら、次へ繋げるためのヒントになるはずです。

筆者について

Experience Points

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